【解説】
JR西日本のアーバンネットワークの基幹となる看板列車で、北陸本線の敦賀、湖西線・東海道・山陽線を経て上郡、赤穂線の播州赤穂までの区間で運転。
京都ー大阪ー神戸ー姫路間では、並行して走っている私鉄よりも速く、かつ快適な乗り心地を提供しています。
登場は、国鉄時代の1970年の10月で、EXPO70(’70’万国博覧会)の輸送対策として首都圏の横須賀線(大船電車区:南フナ)から転入してきた113系で
1時間に1本のみの運用でスタートしました。下記にその変遷を記します。
(1)初代113系近郊型電車(1970年10月〜1972年3月)
EXPO70(’70’日本万国博覧会)の輸送力増強で首都圏の横須賀線からの転入車両7両編成で京都〜西明石間を10時から16時の時間帯に運転。
停車駅は、京都ー大阪ー三宮ー明石ー西明石で1時間毎の運転で、特急停車駅の新大阪と神戸は通過していました。
当時、快速用の113系は湘南色でしたので横須賀線塗装(スカ色)で見分けがつきました。その後、草津まで区間が延長されています。
なお運転区間の草津〜西明石間は、複々線の電車線(内側線)を走行していました。1986年10月までこの運用は変化がありませんでした。
停車駅は、草津ー石山ー大津ー京都ー大阪ー三宮ー明石ー西明石でした。
(2)2代目153・165系急行型電車(1972年3月〜1980年7月)
1972年3月の山陽新幹線岡山開業で、新大阪〜宇野間急行電車の「鷲羽(わしゅう)」が廃止となり、その余剰車両(153・165系)を利用して、
9時〜17時の時間帯で15分間隔での運用となりました。車体の塗装も白色に水色のラインが入った明るい色になっています。(愛称は、「ブルーライナー」)
特に、北陸方面の特急列車が湖西線経由になるまでの間、大阪〜京都間でのこの特急列車(主に「雷鳥」)とのデットヒートがかなり頻繁でした。
当時の国鉄本社は、快速に負ける特急に難色を示し、大阪鉄道管理局にダイヤパターンを変更するように要請しましたが、
15分間隔の毎時0−15−30−45分の発車パターンでダイヤを意識しなくても乗車できるメリットがあり、大阪鉄道管理局が却下したエピソードもあります。
(複々線で、特急列車が外側、新快速が内側の線路を並走し、ともに同時刻に大阪を発車) この当時から、大阪〜京都間は、29分で結んでいました。
1978年10月には、神戸が停車駅に追加されました。153・165系は、1980年7月まで運転されました。
この当時の運転区間は、草津〜西明石と京都〜姫路間でした。姫路行きの新快速は西明石を通過していました。
1974年7月の湖西線開業で堅田〜京都間が追加されました。(堅田発の西明石行きが1時間に1本)
しかし、国鉄の相次ぐ運賃値上げと車内居住空間の併行私鉄車両との格差(新快速はボックスシートで、併行の阪急・京阪は転換式のクロスシート)
が顕著で利用客が減少、それを食い止めるべく新型車両として登場したのが117系でした。
(3)3代目117系近郊型電車(1980年1月〜1999年5月)
この117系は、当時の国鉄・大阪鉄道管理局が、並行の私鉄との運賃格差により利用者が大幅に落ち込んでいる現状を改善しようとした新快速用車両として、
「つり革なし」、「ゆったりとした座席」、「落ち着いた車内配色」、「特急列車並みの走行性能」など破格のコンセプトを持って登場させました。
1979年から1986年までに名古屋鉄道管理局(現在のJR東海)の117系を含め216両が生産されました。
また、1980年には、首都圏の伊豆方面の特急列車「あまぎ」の157系の置換え用として185系 が登場しています。
普通車の座席は転換式クロスシートでシート間隔も117系と同一です。117系の特急バージョンです。(クロスシートはその後リクライニングシートに変更)
「踊り子」で使用されていましたが2021年3月のダイヤ改正で、「踊り子」から引退しています。
117系の居住性は、阪急の6300系や京阪の3000系と遜色なく「シティーライナー」という愛称でした。1985年3月に、新大阪が停車駅に追加されました。
1986年11月に、JRへの民営化に備えたダイヤ改正があり、京都〜西明石間は列車線(外側線)の運転に変更され現在の運用形態となっています。
また、この時に山科が停車駅に追加されました。西明石を通過していた新快速(姫路発着)も停車するようになりました。
1986年10月に3編成18両が東急車輌で製造、窓が2列1組のバランサー付き1段下降式に変更となりスッキリした印象です。
(4)4代目221系近郊型電車(1989年3月〜2000年3月:最高運転速度が120km/hに向上)
1987年のJR民営化以後は、117系での運転が継続していましたが、ラッシュ時の乗客の乗り降りに2ドア車であるがため遅延が目立つようになり、
その解消のため3ドア車として登場したのが221系でした。1989年3月から投入されました。3ドアの転換式クロスシート車として近鉄の5200系 が
1988年に登場しており参考になったようです。(製造担当が近畿車輛でしたから・・・)1989年3月から221系が投入されました。
1990年3月に、日中の停車駅に高槻と芦屋が追加されました。1991年3月には朝ラッシュ時を除き120km運転を開始。
1995年9月からは高槻と芦屋が全列車が停車。また、全列車が8両以上の編成での運転となりました。117系も115kmに最高速度を引上げました。
(5)5代目223系近郊型電車(1995年8月〜現在:最高運転速度が130km/hに向上)
1995年8月に223系1000番台の車両を投入、130kmの最高運転速度を実現しました。尼崎が1997年3月に停車駅に追加されました。
2006年10月に北陸本線の長浜〜敦賀間と湖西線の永原〜近江塩津間が、直流化され、日本海まで顔を出しています。
ちなみに敦賀〜大阪間を2時間で結んでいます。
(6)6代目225系近郊型電車(2010年12月〜現在)
2010年12月から225系が投入されました。この頃から編成を12両に統一すべく増備が継続されています。2011年3月に南草津が停車駅に追加されました。
新大阪駅の改修が2019年に完了して、下りと上りの列車線から内側の電車線への進入が全て可能となり、大阪〜新大阪間の内側の電車線での
運転が無くなり、普通電車や快速電車の運行状況に関係なく柔軟な運転ができるようになりました。
2019年3月から223系1000番台編成の一部(4両編成の姫路寄り1両)に有料座席のAシートが設置され、着席サービス(どこまで着席しても500円)
がスタートしました。リクライニングシートでコンセントありの無料WI−FIサービスありの特急列車なみの快適な旅ができます。
2022年3月のダイヤ改正で座席指定となり、840円で指定券が購入できる仕組みに変更されています。
Aシート車の外観は北陸本線の近郊型521系 にそっくりです。
発足当時は、6両編成でしたが、今では12両編成が基本となっております。2020年3月のダイヤ改正では、Aシートの増備はありませんでした。
歴代の113系や117系もそろそろ引退の時期です。(153・165系はすでに形式消滅)
117系の1編成が「WEST EXPRESS銀河」 に改造され、2020年9月11日から夜行特急列車として京都・大阪〜出雲市間で運転され、
12月12日から昼行特急列車として大阪〜下関間で運転されました。
停車駅は、
北陸線・湖西線経由:敦賀〜近江舞子までの各駅と堅田〜比叡山坂本〜大津京〜山科〜京都〜高槻〜新大阪〜大阪〜尼崎〜芦屋〜三宮〜神戸
〜明石〜西明石〜加古川〜姫路と英賀保〜上郡・播州赤穂までの各駅です。
北陸線経由:敦賀〜米原までの各駅と
彦根〜能登川〜近江八幡〜野洲〜守山〜草津〜南草津〜石山〜大津〜山科〜京都〜高槻〜新大阪〜大阪〜尼崎〜芦屋〜三宮〜神戸
〜明石〜西明石〜加古川〜姫路と英賀保〜上郡・播州赤穂までの各駅です。
編成は12両編成が基本ですが、近江今津〜姫路間、米原〜姫路間が12両編成、米原〜(近江塩津)〜敦賀間、近江今津〜敦賀間は4両編成、
姫路〜上郡・播州赤穂間は8両編成での運転です。223系と225系との混結編成もあります。
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