「ある日、ひとりの若者が、イヌクシュクのそばで、野宿をしたんじゃ」

夜がふけると、オオカミどもが集まってきた。
「若者は、焚き火を、燃やしつづけたよ。」

『ウオーッ』
不気味な、うなり声が、じりじり迫ってくる。

「そのときだった。どこからか、クジラの唄がきこえてきたんじゃ」

『クキュー、ブロロロロ・・・。クキュー、ブロロロロ・・・』
「不思議なことに、クジラの唄が流れると、オオカミどもは、森の奥へ、すごすごと、戻っていったそうだ」

星がまたたき、オーロラが、にぎやかにゆれていました。
「安心して眠りについた若者は、夢を見たのだよ」