保護センターに入れられたトキは、金太郎じいさんにちなんで、キンと名づけられました。

キンちゃんは、他のトキと一緒に暮らしましたが、なかなか卵を産みませんでした。
そのうちに、他のトキが、病気にかかって、次々と死んでいきます。

『おれは、世界一の裏切り者だ、大馬鹿者だ』

キンちゃんのことを思うと、金太郎じいさんの心は晴れません。
『おじいさん、キンちゃんには、いつかヒナができるよ』
おばあさんは、優しく言ってなぐさめます。

『そうだ、宇賀神社へ、お参りに行こう』
『キンちゃんが長生きしますように。元気なヒナが授かりますように』
二人は、いっしょうけんめい祈りしました。

神社の長い石段は、年寄りにとっては、つらいものでした。でも、二人は、キンちゃんのためを思って、なんども、お参りに行きました。

雪の深い日は、宮司(ぐうじ)さんが、雪かきをして迎えてくれました。