年が明け、春が近づいてきましたが、大佐渡の山々は、まだ真冬の姿で聳え立っています。

とうとう、別れの日が来ました。

ただならぬ気配を感じたのでしょう。トキは、この日にかぎって姿を見せません。
必死で探しまわり、やっと見つけると
『こここ、こここ・・・・・・』
と言いながら、そっと近づきます。

金太郎じいさんは、自分を信じて、なついてくれたトキのことを思うと、胸がはりさけるような気持ちでいっぱいでした。

『トキよ、許しておくれ、許しておくれよなあ・・・』

なにも知らずエサを食べるトキ。
なんども、なんども、ためらって、やっと決心すると・・・・・・。
トキのくちばしをさっとつかみ、足を押さえて、胸に抱きかかえます。
トキは驚いて、『クアー』と、ひと鳴きしました。

金太郎じいさんの目からは、大粒のなみだが、ボロボロこぼれ落ちていました。