
「これは大変だ。早く助けないと」
パン屋のおじさんは、嵐の中、やっとのことで川にたどり着きました。
「わー、深いとこへ行ってしまうぞ。どうしょう」
ポケットをさぐると、今朝焼いたパンが出て来ました。パン屋さんが車の中で食べるはずの、朝食のパンでした。
「そうだ。魚に助けてもらおう」
おじさんは、すぐパンを細かくちぎって川に投げました。
「さかなさーん。たすけてー。その箱にはミツバチさんの大事な家族が入っているんだ。ここまで運んで来てー。お願い!」
おじさんは、力いっぱい、何度も何度も叫びました。
魚たちは、時々このおじさんからパンを貰っている顔なじみなのです。
『みんな、大変だが今がパン屋のおじさんへの恩返しの時だ。やれるだけやろう』
魚のいちばん年寄りが言いました。
『おじいちゃんがそう言うのだったら、みんながんばろう』
魚たちは全員で助けることにしました。魚たちは、うろこや背びれを傷つけながら、やっとの思いで、岸まで箱を運びました。
魚の身体の傷口が、痛々しく見えました。
「ありがとう、ありがとう」
おじさんは、泣き泣き魚たちにお礼を言うのでした。
『わたしたちは、あんたにいつものお礼をしたまでさ。この傷は、しばらくしたらなおるから、心配しないでいいよ』
年寄りの魚を先頭に、魚たちはよわ弱しく、泳いで行きました。
