戦争のない世界に〜子供に伝えたい 近藤佐枝子
長男の夏休みのワークの中に、『戦争のことを知っている人に話を聞こう』という課題があった。そのワークの中から、最低一つはやりましょうというような物なので、絶対にやらなければならないわけではないのだが、私としてはこんな機会を大事にしたいと思い、積極的に取り組んだ。
この課題はふたつあって、一つは話を聞くこと、もう一つは調べること。話を聞くのはおじいちゃんに聞けるので、私からは何もせず任せようと思っているのだが、調べるということになると、3年生の長男にとって、まっすぐに理解できるのがどんな物なのか、ずいぶん悩んだ。ただ映像として見て知るより、読んで知ってほしいと思った。映像として見て一つのイメージで固めてしまうより、読んで知って、想像の中で感じ取ってほしいと思ったからだ。
とはいっても、私も戦争のことは本で読み、話を聞き、資料館などで見たことしか知らない。だから、自分が子供の頃どんな本を読んでどう思ったか、そんな記憶を頼りに、図書館で3年生にも理解でき、何かを感じ取ってもらえそうな物を、コンピューターで調べた。すると思い当たった本や、理解できそうな本がすべて貸し出し中だった。残念だったけど、思いかえると、この同じ時期に宿題のためかもしれないけれども、本の数だけの長男と同世代の名張市の子供たちが、戦争を題材にした本を読み、戦争を知ろうとしているということは、本当にありがたいことではないかと思った。
結局、家のパソコンのインターネットで、私が読んでほしかった物のひとつを見つけた。
それは『かわいそうな象』という話で、内容は戦争で動物園に爆弾が落とされ、おりが壊れて動物が逃げ出すのを防ぐため、動物を殺さなければならなかったという、実際にあった話で、上野動物園にはその動物たちの慰霊碑があり、実際3年前に上野動物園にいって見ている。その時、その前でこの話をしてあげたのだが、まだ長男は幼稚園児だったからあまり反応がなかった。今回改めてこの話を読んで、長男は象がかわいそうだと思ったそうだし、一体なんで戦争がおこったのか不思議だと言っていた。
3年生になって、長男はペーパークラフトで本当に簡単な地球儀を、自分の手で作ってみた。それを見ながら世界の大きさ、国がたくさんあるということなど、お父さんと話をしている。戦争とは、こんな広い世界を舞台に起こったんだということを、長男は理解しているだろうか?国同士の我欲のぶつかり合いが、たくさんの命をうばったということを知り、平和の尊さを実感してほしい。
これから年を経るごとに戦争を語れる人が減っていく。それは事実である。だから、私自身しっかりと話を聞き、子供に伝えたい。そして御神前にある地球儀の意味、世界平和を祈る大切さを、ことあるごとに伝えたい。
【「和らぎ」116号(平成14年8月)巻頭言】
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