◆巻頭言 『持続可能な開発(Sustainable Development)』を提唱したブルントラント博士
グロ・ハルレム・ブルントラント博士(Dr.Gro Harlem Brundtlant)は、オスロー大学で医学を学び、1974年(35歳)で環境相に就任。
1977年、北海のEkofisk油田の原油噴出事故のとき、陣頭指揮で環境被害を最小限に留めるとともに、内外記者へ積極的に情報を開示した。
博士の行動は、ノルウエー国民のみならず世界中の人々に、環境問題は環境保護主義者だけの問題ではなく、国の経済発展の中核となる政策領域の問題で、環境投資は国家の将来のために不可欠との認識をもたらす。
その後、1981年(41歳)でノルウエー歴代最も若い首相に就任。1983年12月には、国連【環境と開発に関する世界委員会】委員長に就任。
「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発(Sustainable Development)」をメイインテーマに、人口、食料、種と生態系、エネルギー、工業、国際経済などの様々な分野での構造的問題を分析し「持続可能な開発」に向けて世界が早急に講ずるべき方策として、報告書にまとめる。
この報告書の内容が原動力となって1992年にリオデジャネイロで「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」が開催され、「持続可能な開発」を実現するための具体的な行動計画「アジェンダ21」が採択された。
博士の保健と環境、開発に関するリーダーシップは国際的にも高く評価され、1998年に世界保健機構(WHO)の事務局長に選任される。
WHOの業績には、貧しい発展途上国の人々にも医薬品の入手が可能な支援システムの確立、タバコ喫煙を世界的に抑制するための枠組み条約の採択、SARS、マラリア、HIVのような地球規模の疾病に対処する大胆なモデルの構築などが挙げられる。


ブルントラント博士
ブルントラント博士が委員長としてまとめた「環境と開発に関する世界委員会」の報告書【我ら共有の未来】で提起された概念「持続可能な開発」は、地球環境問題を議論するときに随所で取り上げられている。
【我ら共有の未来(Our Common Future)】
序章 「地球は一つ」から「世界は一つ」へ より豊かで公正で安全な未来を築くためには、世界が思い切った政治行動取り、人類の持続可能な進歩と生存を確保するための環境資源管理を開始することが必要である。
第一部 共通の関心ごと(Common Concerns)
第一章 脅かされる未来 現在、世界は汚染の進行、資源の減少が環境の荒廃、貧困問題の悪化を招いている危機的状況である。
第二章 持続可能な開発に向けて より豊かで公正で安全な社会を築くためにには、全ての国々が持続可能な開発を国内政策と国内調和の最優先目標として、また評価基準として採用することにかかっている。
第三章 国際経済の役割 持続可能な開発の達成のためには、より公平で環境上の優先課題によりよく同調した通商、資本、技術の流れを生み出すような広範囲にわたる改革が必要である。途上国の開発機会の拡大を図るためには市場へのアクセス、技術供与、国際金融面における抜本的な改善が必要。
第二部 共有の挑戦(Common Challenges)
第四章 人口と人的資源 人口政策の立案に当たっては、教育、保健衛生等の経済・社会開発計画と整合性を保たなければならない。家族計画の普及は社会開発の一形式であり、女性の自立の権利を認めるものである。
第五章 食料安全保障 増大する人口を養うのに必要な農業資源と開発技術は、過去、大きく進歩してきた。しかし、食料の必要な地域での生産の奨励と農村の貧しい人々の生活を維持するための政策は十分ではなく、安定した食料と生活を確保するための新たな戦略が必要。
第六章 種と生態系 持続性を確保するためには、空気、水、森林、土壌などの環境資源を保全するとともに生物及び遺伝子の多様性を維持することが必要。現在の国家的課題は限られた手段の中で保護を効果的に行うべく国家保全戦略を策定し、その実務に努力する」ことであろう。
第七章 エネルギー 地球的な視野に立ったエネルギー戦略を検討する上では、エネルギー生産・消費の効率化と保全対策により、一次エネルギー資源の浪費を最小限に抑えること、エネルギー源に内在する危険性を認識し、人の健康の保護の徹底を図り生物圏の保全と局所的な汚染の防止を図ることが必要。
第八章 工業:少を持って多を生産する 天然資源の一人当たりの消費量を減らすために、生産効率の改善を加速し、環境を汚染しない製品や技術への転換を図る必要がある。全ての国は環境規制を厳正に施行し、効率的な技術を奨励し、新たな製品、技術、廃棄物の環境影響を予測することにより環境汚染を未然に防止することが重要。更に途上国の技術革新能力は大幅に強化される必要がある。
第九章 都市問題 世界の経済システムは、通信・貿易の重層的ネットワークにより都市化が進行している。しかし、急速な都市化に対応するためには、生活基盤、公共サービス、住宅を提供・運営していく能力を高めていく必要があり、特に、都市環境の悪化が著しい途上国においては極めて重要であり、国際的にも国連人間居住センター(UNCHS、ハビタット)を中心に本件への取り組みを強化する必要がある。
第三部 共同の努力(Common Endeavours)
第十章 共有財産の管理 海洋、宇宙空間、南極といった人類の共有財産は、それぞれ異なる「共有制」を有し、また開発段階も異なるが、持続可能な開発を可能にするためには、各国の共通の利益のために合意された監視、開発、管理についての制度と国際協力が極めて重要となる。
第十一章 平和、安全保障、開発、環境 貧困、不正、武力闘争、及び環境開発は相互に複雑な影響を及ぼしあう。持続可能な開発を達成し、環境への脅威を防ぐためには、各国が視野を広げ、国際平和と安全の基本的重要性を認識し、共同管理、多国間の折衝、多国間機構の活用が必要。
第十二章 共同の行動に向けて:組織と法制度の変革に関する提案 資源の劣化と貧困の相互作用の問題は、放置すれば国境を越えて地球的規模の環境問題となる。こうした事態に対処するためには、国際開発の全分野にわたり環境の監視、評価、研究開発、資源管理に高い優先度を与えると同時に、国際機関の機能を強化し、通商、投資などの分野の国際ルールを確立し、遵守するとともに国益が対立し調整を要する問題についても建設的な対話を行っていくことが重要。
【我ら共有の未来】は、作成した委員会の委員長名を付して【ブルントラント報告書】とも呼ばれ、序章に続いて3部12章で構成されている。上記は、外務省が発表した同報告書の概要である。
ブルントラント博士は、昨年、11月11日に国際連合大学行われた「2004年度(第13回)ブループラネット賞受賞者記念講演会」において、『持続可能な開発に向け世界的に民主主義に則った活動と責任を推進しよう』と題する講演を行った。
 ◆月の輪ひろば(お便りコーナー)
藤田さん(広島県)2005.3.25
【クマを通じてみえること】
と題された文章を、広島大学付属小学校の機関誌「学校教育」に寄稿されました。ご好意に甘え、紹介させて戴きます。

現在、藤田さんは、財団法人自然環境研究センター嘱託職員で、環境カウンセラー(市民部門)もされていらっしゃいます。
藤田さんの詳しいお人なりは、ホームページをご覧ください。
                               
  
ツキノワグマ
痕跡写真集
藤田さんのHP
お訪ねください。
武田さん(大阪府)2005.3.10
こんにちは。お久し振りです。まだまだ寒い日が続きますが如何お過ごしでしょうか?以前、暖かくなったらまたドングリを山へ運ばれるとお伺いしましたので先日僅かながら集めて見たのですが、送らせて頂いてもよろしいでしょうか?やっと3月になったものの、まだまだ肌寒く、秋の頃に比べてドングリの落ちている量も少なかったので、本当に少なくて恐縮なのですが(笑)
さとうさん(名張市)2005.1.25
4日 出勤すると早くも かわいいどんぐりが 子袋にいっぱいリネン室に届いていました!・・・
正月休み中、上野の公園に下岡さんがドライブに連れていってもらったようです。そのとき 育成園では見つけられないようなきれいで かわいい どんぐりを たくさん 見つけておもわず 拾い集めて下さったようです。
牛太郎君、ココ(牛太郎の嫁)2005.1.15、2005.2.3
最後のどんぐりになりました。 おかげさまでとっても楽しい年末年始をおくれました。今年の秋もどんぐり拾いに行くのが楽しみです。コナラ、アラカシは堪能したので今年はぜひとも、くぬぎを我がどんぐりマップに加 えたいですね。
林さん、鈴木さん(千葉県) 2004.12.30
『春、たくさんのクマさんたちが目覚めることを祈りながらドングリを集めました。多くの捕殺されたクマたちに食べさせたかった。今年は、去年のような悲しい年にならないよう願っています。春のお山に、お届けをお願いいたします』
杉坂さん(千葉県)より 2004.12.16
こんにちは。 いつもHPを見ています。 さて、ドングリの方ですが、まだ間に合いますか? 二歳の娘と夫が拾ってきたドングリがあります。送りたいのですが、 大丈夫でしょうか? こちらは、千葉県です。よろしくお願いします。
全国の皆さまから、たくさんのお便りを頂戴しています。紙面の都合上、少しづつ掲載させて戴きます。ご了承ください。
 ◆季節の足あと
2005年2月1日〜2日
ISO14001環境マネージメントシステム、主任内部監査員の講習を受講、資格取得。
京都議定書(温室効果ガス削減数値目標と実施の枠組を定めた国連気候変動枠組条約に基づく協定)が2月16日に発効されました。
循環型社会では、リサイクル(再生利用)、リユース(再使用)、リデュース(発生抑制)の三Rが不可欠です。企業活動や、私たちの日常の暮らしが生み出す環境負荷について、日頃から意識し続けたいものです。
ISO9001品質規格、内部監査員の資格は取得していましたので、今回は上位ランクの資格にチャレンジしました。
2005年3月12日
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開催された、第13回花の万博記念賞、受賞者記念講演を拝聴。
元千葉県立中央博物館副館長:大場達之さんの【地域の植物を調べるー市民の身近な環境情報としての植物誌ー】という講演テーマでした。

大場さんの略歴
1936年生まれ
1959年横浜国立大学学芸学部卒業
1970〜72年西ドイツ理論応用社会学研究所に留学
1987〜2001年千葉県立中央博物館にて研究員、副館長を歴任
2005年3月21日
春一番のドングリ運び。

冬の間に送って下さった皆さんのドングリを運ばせて戴きました。
佐藤さん(名張市)、氷見さん(大阪府)、牛太郎君・笑(大阪府)、林さん、鈴木さん(千葉県)、杉坂さん(千葉県)、武田さん(大阪府)、森山さん(名張市)、大滝さん(名張市)
おかげ様で、約90kgも集まっていました。皆さん、どうも、ありがとうございました。


3ヶ月ぶりに登った給餌台は、きれいに食べ尽くされていました。板が造林地の谷へ落とされていました(クマさんか、イノシシさんの仕業でしょうか・笑)
昨年暮れ、この場所に給餌台を移したのですが、動物たちは匂いをたどって、さっそく集まって来たようです。
竜神スカイラインの日陰には、まだ薄っすらと凍った雪があってヒヤリ、青空をバックに、台高や大峯の山々が残雪で光っていました。とても心持ちの良い一日でした。
詳しい活動内容はをご覧下さい。
大山ブナの森(1999.5.22撮影) ◆森のひと口メモ
 【森林医学】って何?
「森へ行くと気持ちいいと感じるのはなぜか」
など、森林の持つ効果を医学的に解明し、健康づくりに役立てようというのが森林医学の考え方。
昨年、産学会の連携による森林医学の研究会が発足し、科学的分析に基づいた森林の効能評価が始まっている。
ストレス関連物質コルチゾールの唾液中の量や、ナチュラルキラー細胞の活性などを、都市環境と森林環境で比較して、森林のリラックス効果の実証が試みられている。
また、研究会では森林の香りや音、光、樹木の空気清浄力、殺菌効果などの分析も進めている。
平成18年度までに、全国5カ所に『森林セラピーロード(森林療養道』が整備される予定。
 ◆編集後記

「自然の叡智」をメインテーマに、@宇宙、生命と情報A人生の技と知恵B循環型社会ーーーの三つをサブテーマとして、3月25日から愛知万博(EXPO2005)が開催されています。
日本で開かれる万博としては、1970年の大阪万博から35年ぶりです。大阪万博は高度成長時代の大イベントで、日本中が沸き立ったものでしたが、今回の愛知万博は、景気低迷に加え、会場建設が環境破壊を招くとの批判から会場計画が大幅に縮小され、自然破壊に配慮した会場づくりと展示に方向転換し、やっと実現に漕ぎ着けました。
過去の万博における成功云々の評価は閉幕後の収支決算が全てでしたが、今回の万博は、持続可能な社会を実現する技術の実験場として、閉幕後に出される成果や検証結果が問われています。私たちも大いに注目して行きたいものです。
『ワイルドスミスの作品には、自然界への深い愛情が表現されている』
こんな文章を何かで読み、伊豆高原にある絵本美術館を訪ねようと考えていますが、まだ叶えていません。近いうちに必ず、そんな願いを込めて、今号の表紙絵は彼の2004年カレンダー巻頭作品から拝借しました。
末の息子が幼稚園の時に名張市に移り住んで十年、四月から高校に通いはじめます。背格好ばかり大きくなって・・・・・・、ひざに抱きながらご飯を食べさせた記憶は薄れるばかりです(笑)

  【煮こごりに箸をいれるや初節句】 ーーーーーーー百画(ももえ) 旧作です

里山に囲まれ、自然豊かな場所で健康に暮らせることのありがたさ、それに感謝する心持ちを忘れずにいたいと思います。