愛疑症候−アイノウタガイシンドローム−






騙されるな。
騙されるな、俺。
どんな言葉で飾ろうとも―――――。




「所 詮    君 は    人 間 だ ろ    ?」







、寒くないか?」
「大丈夫だよ。シュヴァインの方が寒そうだし」
良く晴れた空に落ちる影。
人間の女の子をその腕に抱いた魔物が空を駆けていた。
他の人間が見れば人攫いだと思ったかもしれない。
しかし二人の顔は決してそんな関係を匂わせるものではなく、仲良く笑いあいながら喋るごく親しい間柄のようで。
「何でシュヴァインは薄着なの?」
自分を抱くむき出しの腕や胸を見て首を傾げる。
「俺らみたいな有翼系は身軽な方がいいんだよ」
「じゃあ私も脱いだ方がいいのかな?」
「阿呆。んなことしなくてもお前なんか軽すぎるくらいだぜ」
の言葉を鼻で笑い、その体を改めて抱きなおす。
そうしたらほっそりと白い腕がシュヴァインの首に絡んだ。
「本当に?でも落とさないでね」
きゅっと抱きつき、にっこりと笑ってみせる。
可愛らしいその顔は何度見ても見飽きることなんてないと思った。
だけど気恥ずかしくて、シュヴァインが視線を逸らしたので。
は一瞬困った顔をした。
「なんで、目逸らすの」
「逸らしてねぇし。そろそろ家だぜ。降りるぞ」
ひゅうっと風を切るシュヴァインの翼が角度を変えるのが見えた。
その瞬間体が浮いたような奇妙な下降感。
全くスピードが落ちないままの降下にの腕に力が篭った。
いつもいつもこの瞬間緊張する。
心地よい浮遊感と空との離別が物悲しくて。
そして着地の直後にシュヴァインが一瞬躊躇ったようにを地面に下ろすのだ。
しっかりと回された腕をやんわりと解きながら、離れていく体温を惜しむように。
「はい、ただいま」
「・・・おかえり」
「違うヨー。シュヴァインも帰って来たんだからただいま、だよ」
ぷーっと頬を膨らまして、めっとか言う様が凄く可愛い。
どこまでもイカレてしまってることにシュヴァインの口から自嘲気味な笑いが漏れた。
それを別の意味に取ったらしいが「もー!何笑ってるのー!!」とか言っている。
微笑ましく思いながら抱き寄せ、キスをした。
ぽわっとが頬を赤く染めたりなんかして。




嗚呼。

相当イカレてるな、なんて。










「いいなぁ」
そんな勝手な言葉に苛ついた。
助けてやるんじゃなかったと激しく後悔すらした。
ただ母と同じ種族、黙って食われるのを見るのは気分が悪くて。
夜のうちにこっそりとドラゴンの巣から助け出してやったのだ。
「私も、翼欲しいなぁ」
幸せボケした笑みでもって言い放つ少女を限り無く阿呆だと思った。
いや幼いだけだろうか。
とにかく朝目覚めた少女はシュヴァインの翼に目を見張り、感激した。
そこまで感激されると普通は少しくらい気分が良くなろうと言うものではあるが、如何せん彼は人間嫌い。
全く嫌味にしか聞こえなくて。
「・・・お前なんか助けてやるんじゃなかったぜ」
「お前じゃないよ。だよ」
「聞いてねぇし」
ちょっと寝顔は可愛いとは思ったが口を開けば世間知らずの小娘。
昨晩も食料とされるために捕まえてこられたのに良く眠れたなと、その神経にシュヴァインはぎょっとしたものだ。
まぁ、恐怖に怯えて暴れられるよりかは・・・マシだったか。
ぽやんと座り込むを一瞥に、軽く溜め息を吐く。
そして。
「おい、とりあえず連れて帰ってやる。どっから来たんだお前」
だよ」
「・・・どっから来たんだ」
子供の押し問答に付き合うつもりはなかった。
じろりと睨みつけシュヴァインはを抱き上げて立ち上がる。
昨日の夜も思ったが軽くて恐ろしい。
少女と言う生き物は力加減を間違えれば誤って潰してしまいそうだ。
「えっと・・・」
きょろきょろと見回し、はたりとシュヴァインを見つめる。
「・・・ココ、何処?」
「・・・」
そんなことを聞かれても。
全く厄介なことに自ら足を突っ込んだものだと苦笑が漏れる。
はしっかりと迷子になっていた。
「迷子か。仕方ねぇ。とりあえず近くの町まで連れて行ってやる。そこからは自分で何とかしな」
シュヴァインは、そして地面を蹴った。
「わぁ、すごーい!」
声を上げるに恐怖の色は感じられない。
そしてまた溜め息を吐き、良いなぁと言った。
ここまで来るともう嫌味でもなんでも、苛立たしいを超えて呆れてしまう。
落ちないように気をつけろよと注意だけ促して後は勝手に騒がせておくことにした。

「それじゃあ誰かにでも元の町へ送ってもらえ。じゃあな」
人が入って来れないような森の奥深くに住んではいるものの、シュヴァインの翼にかかれば町までなんてあっという間だ。
ただ人間に見つからないように若干町から遠いところに下ろす。
子供の足で町まで15分というところか。
だけどもう町までは一本道だし、余程のことが無い限り町へ辿り着けないなんてありえない。
シュヴァインは最後に軽くの髪を撫で翼を立てる。
その瞬間、がシュヴァインの服を軽く掴んだ。
「っ、何だ・・・?」
「名前、教えて?」
出鼻を挫かれた格好になったシュヴァインが少し怒った様に振り返ると。
相変わらずにっこりと笑う
不覚にも、初めて直視したその顔が可愛かったので。
「・・・シュヴァインだ」
ぶっきらぼうに一言いい、の手を振り解いて地面を蹴る。
人間を可愛いと思うなんて、如何かしてしまったのかもしれないと不安になりながら。
黒い鱗で覆われた翼が空気を掻いた。
そして1秒待たず、の手は届かなくなった。

その明くる朝。
何故だか不安なままだった。
兄弟達の中でも一番色濃く受け継いだ母の血。
異種族の父を愛して殺された母の血。
昨日人間の少女を可愛いと思ってしまったこと・・・それはシュヴァインが人間により近いことを掲示していた。
人間だった母の血がざわざわと体を騒がせる。
母の血故に一層嫌いな筈の人間が気になって仕方がないなんて。


「・・・可笑しく、なったか」

―――騙されるな、俺。

「人間は嫌いだ」

―――騙されるな。

「所詮、人間だ」

―――どんな言葉で飾ろうとも。

「同じものにはなってくれやしないだろ」


この翼がドラゴンの父を持つ証で、この肉体が人間の母を持つ証。
それ故にシュヴァインは人間が嫌いで・・・ドラゴンが嫌いで。
だけど。
いいなあと言って笑った少女。
最後まで呪詛の言葉を吐かなかった彼女。
ふと気付けば、シュヴァインの足下に地面は無かった。
今更追いかけてどうなると言うのか。
苛つきと共に置き去りにしたあの子を。
勝手に助けて最後まで責任を持つことも放棄して、置いて来たのは自分なのに。
そんなことをぐるぐる考え何度も引き返そうとしながら結局引き返すことは無かった。
昨日の場所も越えて、見える町。
大嫌いな人間という生き物のうようよいる処。
ざぁっと空から町中を旋回して回る。
とてもじゃないが中に入っていく気にはなれなかった。
薄っすらと記憶に残る彼女は甘い金髪が肩に触れるくらいの、少し汚れた白い服で。
頭に思い浮かべながら随分飛び回ったが、何処にも見当たらなかった。
1日も経っていれば当然だ、と思うがなかなか諦められずにシュヴァインは飛び続けた。
会ってどうするつもりなんだ、とか。
そんなこと全く分からないことを一番自分で分かっている。
だけどそういうことじゃなくて。
ただシュヴァインは。
「・・・ん・・・?」
しばらくしてから気付いた。
どうも長いことシュヴァインは空に留まりすぎたようだ。
下に広がる町の中は大分騒然としていて、色んな人間が恐れと怒りの色と湛えつつシュヴァインの動きを見ている。
誰かを襲うのか。
攫うつもりか。
それとも盗むのか。
地面と空の間で緊張が走る。
先に折れたのは・・・勿論シュヴァインの方だった。
衆人環視の中で飛び続けるのはストレスが溜まるし・・・しかも少女を――を見つけられないのだから。
流石に一日経っていれば当たり前かとシュヴァインはようやく諦め自分のねぐらに帰ることにした。
「・・・これで、良かったじゃねぇか。どうせ、同じものになってくれやしないんだ」
は人間で、自分は半端者。
万が一仲良くなったところでを不幸にすることは目に見ているのだから。
ばさばさと翼が風を掻く。
シュヴァインは常々自らの翼が生むスピードとそのスピードの中で培われた目の良さを誇らしく思っていた。
だから今そこで目に付いた物体は正しく誇れることだったろう。
「・・・あれは・・・」
思わずブレーキ。
そして一瞬で通り過ぎてしまった方向を振り返る。
そこは昨日を助け出したドラゴンの巣。
「・・・っ」
驚きに見開かれるシュヴァインの眼。
既視感に襲われる。
巣の中でちょこんと座り込み居眠りをしている少女の姿に。
「・・・・・・っ」
慌てて駆け寄って。
「おいっ、お前何してンだ!!」
大声で怒鳴った。
するとそれで目を覚ましたらしい
目を擦りながらシュヴァインを見上げてきた。
「あ、シュヴァイン。おはよう」
「おはようじゃねぇ!何やってンだお前!!!」
だよ」
ああ妙な既視感がまたしても。
懐かしい苛立ちを噛み締めながらシュヴァインはを抱き上げた。
昨日の夜との違いはが目を覚ましていると言うことだろうか。
「私ね、もう一度シュヴァインに会いたくって」
抱かれて空を駆けながらはシュヴァインの耳元で囁いた。
「だからもう一度捕まったら・・・助けに来てくれるかなぁって」
「阿呆かお前。そんな確立の低い賭けやってんじゃねえ」
「だけど、来てくれたデショ。運命だね」
にこりとが笑う。
決定打だ。
シュヴァインはちっと舌打ちするとを抱く腕に力を込めた。
畜生、そんなことを言うのならもう二度と離してなどやるものか。
いつの日か泣いて嫌がるような日が来ても。
殺してでも。
離すものか。




「んっ・・・シュヴァ、イン・・・っ」
ねぐらに帰り着いてもシュヴァインはを離さなかった。
膝に座らせたまま向かい合うように抱き合って。
それだけでなく何度もの頬や唇にキスをする。
勿論だってそれが理解できないわけじゃない。
だけどいつしか深くなりだしたキスさえ拒むことも無かった。
一瞬の躊躇いの後、シュヴァインの手がの白い服を捲り上げる。
やはり何の抵抗も無い。
「ひゃ・・・」
軽く鎖骨の下辺りに唇を押し付けたら小さな声が上がる。
優しく片手で胸を揉み解しながらの腰を抱きしめた。
「ん、あっ・・・ぁ・・・シュヴァイン、んっぁん・・・」
ぷっくりと尖り始めた乳首を指先で弄るとの脚に力が篭るのが分かる。
感じてるんだと思うとシュヴァイン自身も堪らなく下腹部が熱くなるのを感じた。
「シュヴァイ・・・ンン・・・っ」
「何だよ」
「私・・・っ、初めてだか、ら・・・その・・・」
顔を真っ赤にして訴える姿も堪らなく可愛くて。
優しくできるか自信の無くなる程。
小さく頷くだけ頷いて、シュヴァインは唇で軽く乳首に触れた。
「ふは・・・っ」
ぴくんとの体が跳ねてシュヴァインの腰を脚できつく挟み込む。
疼くのを我慢していることは容易に知れた。
だから、そっと舌先では乳首を弄ってやりながら手を下へと動かしていく。
下腹やわき腹を軽く撫で、そっと下着の中へシュヴァインの指先が滑り込んで。
既にじっとりと湿っているソコの上のほうをにゅるっと撫でる。
「ひゃぁぁっ!!!」
途端にびくんと跳ね上がる体。
ぬろりと絡みつく粘液を指に纏わせて、そのまま指を裂け目に沿うように何度も動かした。
偶に芯に触れればいい声で啼く。
「感じやすいな、お前」
「違・・・っ、ン、あぁ・・・あ・・・っ」
「違わねえ」
が気持ち良さそうなのを確認したらシュヴァインはそっと指先を中へと滑り込ませる。
傷つけないように慎重に。
「・・・っ」
それでもが一瞬息を飲んだのが分かった。
「っくぁ・・・」
入り口は確かにねっとりと濡れているものの・・・やはり狭い。
「おい、力を抜け・・・」
「んっ・・・ぅ、つっ・・・」
顔を顰めてシュヴァインの背中に思い切り爪を立てた。
こんなんで自分のなんか入るんだろうかと、いささか不安になりつつもゆっくりと解しながら指を進める。
「っはぁはぁ・・・ぁあ・・・」
それでもしばらく弄っていたらが何だか気持ち良さそうな声を出し始めて。
何度も指を出し入れしながら慎重にそれを窺った。
「あっ・・・やン・・・っあぁぁ・・・っ」
「此処か?」
ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てながら執拗にある一点を攻める指先。
「ダメ・・・っ何か・・・あっあ・・・」
ぞわぞわと下肢を駆け抜ける甘い刺激からは頭を振って逃れようとする。
しかしそんなことで振り払えるわけも無くて。
熱い疼きを感じながら息を荒げ浅く胸を上下させるのだった。
「や、ン・・・っはぁはぁ・・・」
耳元に纏わりつく甘ったるいの声にそろそろ限界を感じたシュヴァインがゆっくりと指を引き抜く。
「・・・あ」
殊の外残念そうな声が上がったのに満足し、シュヴァインはをゆっくりと抱き上げた。
そして自分の腰の上に座らせる。
ぐじゅ。
「あっ・・・はぁ、あ・・・」
熱い塊がぐっとの下肢に押し当てられた。
そして。
「っふはぁ・・・っ」
ずぶっと強い圧迫感を感じてが息を飲む。
「痛いか」
「・・・っぅうん・・・でも、苦し・・・っ」
肩で息をしながら首に腕を回して縋りつく
それでもジリジリと自分の重みで飲み込んでしまう。
「あっ・・・はぅ・・・はぁはぁ・・・」
きついの中は何度もシュヴァインを締め付けその度に腰が震えるのを感じた。
「んんぅ・・・っ」
「はは・・・ほえら、見ろよ。入ったぜ」
そっと体を離してに促せば、反射的に俯いたの頬が赤くなる。
やたらと可愛らしい反応を見せられてシュヴァインの手に力が篭った。
「俺もう限界。ちょっと我慢しろよ」
「・・・えっ」
時間をかけて全部飲み込んだそれがの体に馴染むまで待ってなどいられない。
腰に座らせていたを地面に押し付け、シュヴァインは乱暴に腰を動かし始めた。
「あぁぁっ!」
悲鳴にも似たの声が上がるのも構わず思い切り打ち付ける。
の頬に生理的な涙が伝うのが見えた。
一瞬戸惑いが生まれるが既に後に引けはしない。
・・・っ」
小さく名を呼んだら内部の収縮が強くなった。
「っと・・・もっと、はぁ・・・あ、呼ん、名前・・・あぁン、もっと・・・」
喘ぎに途切れさせながらも訴える言葉をぼんやりと咀嚼する。
・・・、・・・っ」
「あ、ダメ・・・っイっちゃ・・・イっちゃう・・・っ」
ぎりっとの腕がシュヴァインの腕をきつく掴んだ。
「あっあぁぁぁっ!!!」
ずんっと深くシュヴァインがを貫いた瞬間。
大きく体を震わせた
びくんと痙攣するような反応にシュヴァインはが絶頂を迎えたことを知る。
そしてほぼ同じくらいにきつく締め付けるの中でシュヴァインもまた果てた。






それから。
既にもう1年ほど経つ。
やはり今でもシュヴァインは人間が嫌いなため、殆ど二人きりの毎日。

「所 詮    君 は    人 間 だ ろ    ?」

だけど愛しいになら。
騙されていても。
殺されても。
嗚呼、相当イカレてるな。
なんて。










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・・・ご都合主義炸裂でごめんなさい。
すいません、天然少女を書きたかったのですが書いてる方が天然ではないため無理でした・・・!
ほのぼの路線を目指して導入部を書いたんですがこのままヤって終わりってあまりにも・・・なのでこんな風に。
そしたらエロの入る余地が少なくなった(阿呆)
あんまりハッピーエンドっぽくないような感じになっちゃいましたね。
まあそれだけ溺れているということが伝わればいいかなーって思ってますが。
因みに過去のは17くらいでシュヴァインは22くらいです。
ちょっと若目のカップル・・・。