こういう時、俺が人間じゃないって事を痛感させられる。
多難の恋
人間とポケモンには色々な差がある。
それは寿命の問題だったり、体力の問題だったり、頭脳の問題だったり、食料の問題だったり・・・挙げ始めると切りが無い。
そしてポケモンは決してトレーナーにはなれないということも、その一つである。
人間とあまり変わらない様に見えて結構本能に忠実なのがポケモンだ。
愛が欲しければ素直に(一部天邪鬼もいるが)甘え、腹が減れば何でも食べ、眠たければ寝る。
所詮はモンスターと言う訳である。
なので彼等がトレーナー等になることは決してない。
加えて言うならば人間の職業に就くということが無いのである。
彼等は人間のサポート(例えば警察のウィンディは警察犬)はしてもそれによって給与を貰うだとかそんなことは一切無いわけだ。
ポケモン達を養うのが人間で、彼等は養われるべき位置にいるのである。
野生か、飼われるか。
そのどちらかにしか位置しない訳だ。
しかし、そんな状況を歯痒く思うポケモンも居る。
それは人間の女を愛してしまった雄のポケモンである。
沢山いるカップルではないけれど実際にいないわけではない。
そう、今ここでマスターのを見守っているバクフーンのヒエンもその中の一匹であった。
「うーん・・・やっぱりタツロウには敵わないわね」
「まあまあ。だって良い線いってると思うぜ」
次の町で出会ったのはこれまた養成学校の知り合い・・・というよりはかなり仲の良かったタツロウという男であった。
常によりも一歩先を行く男でいながらも嫌味な処は無く、特にと親しかった事をヒエンは記憶している。
(・・・まあ、この前のヤローよりはマシだけどな・・・)
ばったり会って話し込んでいる二人を尻目にヒエンはずっとタツロウを観察していた。
外見は恐らく上の下か上の中といったところだと思う(人間だから良く分からないが)
養成学校でも女に人気があったことも知っている。
(・・・でもこの前のヤローよりいけ好かねェ)
もう観察というよりは睨み付けているといった状態でヒエンは穴が開くかと思うほどタツロウを見ているのだった。
「でね、この前学校時代のあのいけ好かない自慢ヤローに会っちゃってさァ・・・」
「ああ、あいつか。実力無い癖にプライドだけは一人前だよな」
「そうなの!」
はお喋りに必死で判っていないようであったが、タツロウは時折ヒエンの方を見た。
ちらりと一瞥をくれては軽く笑う。
それはまるで「ざまぁみろ」と言われているかのようで、ヒエンはその度ごとに表情を険しくしていった。
「あいつあたしのヒエンの事まで馬鹿にして・・・!!ホント腹立つ!」
「ふーん。まああいつの言う事なんか気にするなよ」
「ン・・・そうだね。まああんな奴にヒエンの良さ判ってもらわなくてもいいんだけどさ」
言ってはヒエンを振り返りにっこりと笑った。
優しくそして可愛らしく微笑まれてヒエンの眉間の皺が少し減る。
「ヒエンはあたしの一番だもんね」
「おう」
その言葉に今度はヒエンの顔が「ざまぁみろ」状態になった。
タツロウはそれを見るとも無く見ていたが、ふと口を開く。
「ふーん・・・じゃあ、の”人間の中の一番”を教えろよ」
「へっ?」
「だってもう学校時代のガキじゃないだろ。恋人くらいいるだろ?」
「・・・え」
はぎくりと体を強張らせた。
確かに、いることは・・・いるけれど。
視線が泳ぐのが自分でも分かった。
こういうのは素直に答えるべきなのだろうか。
だけど。
ポケモンと愛し合っているなんて、きっと普通じゃないから。
そんな返答に困ったの口から出てきたのは・・・。
「・・・そ、そういうタツロウはどうなのよ!?」
「俺?」
「そう、そうよ。人のことじゃなくて先ず自分のことから、でしょ!」
そんな切り替えしでなんとか凌いだ・・・と思ったのも束の間。
タツロウは待ってましたというような笑みを浮かべる。
「俺はァー、いねぇ。・・・けど」
「・・・けど?」
「今から出来る予定」
「は?」
が間抜けな声を出す後ろで、ヒエンがはっとした表情になる。
まさか。
それを面白そうに笑って見たタツロウは、に向かって言った。
「俺と付き合おうぜ、」
「・・・え」
「学校時代から俺、お前が好きだったんだ」
「えええっ」
やっぱり、と顔に手を当てるヒエン。
そして予想だにしなかった言葉が飛び出して驚くしかない。
の驚愕の声を聞いて流石にタツロウも苦笑を浮かべた。
「気付いてなかったのか?」
「う、うん・・・」
だってその当時からの恋人はヒエンであった。
バクフーンに進化した時にヒエンからの告白を受け、それを受諾していた。
その後親の目を盗んでは家で色んなことを「致して」いたわけで・・・。
なので学校の男に興味なんて、無かった。
タツロウと仲良くしていたのだって別に他意はなかったのである。
「んじゃ今からでも遅くないだろ?俺と付き合おうぜ」
笑顔ではあるが、真剣な眼差しのタツロウにがしっと手を掴まれては狼狽した。
「で・・・でも・・・!」
「何だよ、付き合ってる男でもいるのか?」
「そ、それは・・・」
二の句が告げず、俯くを覗き込むように見るタツロウ。
その後ろで何ともいえない表情を浮かべるヒエン。
「・・・っご、ごめん!あたし帰る!!」
居た堪れなくなりはタツロウの手を振り解くと大慌てで席を立ち、ヒエンの手を掴んだ。
「おい!っ!!」
「ごめん、タツロウっ!!」
小さな声でヒエンに「走って」と囁くと、ヒエンはさっとを抱き上げて走り出した。
高速移動が使えるわけではないけれど、人間の足がポケモンに敵うはずも無い。
タツロウがを捕まえようと伸ばした手は空しく宙を切り、二人の後姿は直ぐに見えなくなった。
「はぁ・・・っ、久々に全力疾走しちまった」
ホテルまで帰り着き、ロビーで荒い息を繰り返すヒエン。
「ごめんね、無理させて」
「・・・別に」
言葉少なにヒエンは言い、は小さく溜め息をついた。
「・・・部屋、戻ろうか」
「おう」
遠慮がちに呟かれた言葉に相槌は帰ってくるが、ヒエンは先刻から視線を合わせようとしない。
何処と無く気まずい雰囲気が流れる。
それでもおずおずとが手を伸ばしたらヒエンの手が強くの手に絡んだ。
「・・・」
強く手を握り合ったまま二人はエレベーターに乗る。
「何階だ?」
「あ・・・5階・・・」
ぷち、とヒエンが「5」を押し、そしてドアを閉めた。
気まずい雰囲気の中閉鎖空間に二人きり。
「・・・」
「・・・」
無言で階数が上がっているのを見つめていると息が詰まりそうだ。
するとヒエンがゆっくりの方を向き。
「・・・」
「ぇ、ン・・・!」
ダンっ、とエレベーターの奥の鏡に押し付けられて、強引に唇を奪われた。
「んっ、・・・ふ、ぅ・・・ンン・・・っ」
唇をこじ開けられ、ぬるりと舌が侵入してくる。
角度を変えながら味を見るように、絡められ吸われ舐められた。
くちゅくちゅと唾液が絡む音が密室に充満する。
「んっ、は・・・っ、ン・・・っ」
少し離れたかと思えばまた重なる。
深く熱くたっぷりと奪われて、漸く離れたときはエレベーターが止まった時だった。
幸い誰もエレベーターを待っている者はいなかった。
「・・・ヒエン」
「何だよ」
「・・・・・・何でもない」
いつもならこういうところでそういうことはしないの!と軽く叱るところだけれど。
何となくそうするのも気が引けた。
だって自分はヒエンの恋人。
そんな自分自身が今日他の男から告白を受けたのを目の当たりにしたのだ。
無理からぬ事かもしれないと。
のそういう考えがヒエンにも伝わったのだろうか。
無言での手首を掴み大股で部屋へと急ぐ。
廊下の突き当たりにある部屋に辿り着き、ドアを開けてもらうとヒエンはそのまま乱暴にを連れ込んで。
乱暴にドアを閉めると、そのドアにを押し付けた。
「はぅ・・・っン!」
エレベーターの続きを言わんばかりに唇に咬み付かれる。
逃げられないほどに体を押し付けられ、意思とは別に体がじんわりと熱くなるのを感じた。
押し当てられた唇から僅かに伸ばされた舌がの唇を舐める。
「んっは・・・、ヒエン・・・」
切なげに名を呼ぶと視線を合わせヒエンは唇を啄ばむように、何度もキスを繰り返す。
強引だったキスが少しずつ優しくなっていっては安堵したように熱い息を吐いた。
「・・・お前は、俺のモンだよな」
吐息が触れ合う距離で苦しそうに呟かれる言葉。
よくよく見ればをドアに押し付けるヒエンの手が僅かに震えている。
「・・・ヒエン・・・」
「そうだろ?俺のモンだろ?」
「・・・うん、そうだよ。あたしは・・・ヒエンのものだよ」
何度も頷いて優しく声を掛けると、ドアに押し付けるヒエンの手の力が少し緩んだ。
「」
「大好き、ヒエン。ううん、愛してる」
「・・・っ」
少しだけ照れたように微笑むの表情に息を飲む。
嗚呼、そんな顔で微笑まれたら。
「っ!!」
「きゃっ・・・!?」
突然がばっと襲い掛かられ思わず悲鳴に似た声を上げてしまった。
「、・・・っ」
首元に顔を埋め、名前を呼びながら荒々しく服の中に手を突っ込んで。
何時に無く性急で強引なやり方に戦く。
「ちょ、ヤダ・・・っ」
思わず上がる抗議の声。
しかしヒエンは全く聞かず、下着を押し上げての胸を手で覆った。
「ン・・・っ」
捏ねるように強く揉み込まれる。
時折強く掴まれては顔を顰めた。
「や、痛い・・・ヒエンっ、乱暴にしないで・・・!」
しかしそれには何も答えず、少しだけ体を離すとのTシャツを無言で捲りあげた。
ふるりと揺れる乳房が露わになる。
間髪いれずにヒエンはその柔らかい胸にむしゃぶりついた。
「っ・・・あン!」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて啄ばむように何度も乳首を吸われる。
片方は相変わらず好色な手が緩急をつけて揉み解していた。
「ヒエン・・・はぁっ、あ・・・は・・・」
やがてぷくりと膨らんだそこを舌で捏ねるようにねっとりと撫でたり、ちろちろと舌先で弄んだり。
いつものように優しくて入念な愛撫に、戦いていたの体も少しずつ解けてくる。
「あっ、は・・・アァ・・・ん」
甘い声がヒエンの耳を擽った。
求めるように温かな腕がしっかりとヒエンの背中に回されている。
それに背中を押されるように愛撫の手を強めた。
「・・・っ」
「ん、はあ・・・っアァ・・・っ」
胸を弄っていた手をゆっくりと太股に移動させる。
スカートの上から柔らかな感触を愉しむように撫で上げ、下着に手を掛けた。
「あ、やァ・・・っん」
中に手を入れられていきなり直に触れられる。
既に温かく湿ったそこはヒエンに撫でられると嬉しそうに涎を垂らした。
「すげ・・・ぐちょぐちょだぜ。俺に感じた?」
「聞かないでよぅ・・・っ」
「何でだよ、答えろよ」
「ひゃぁっ・・・!」
意地悪い問いかけと共に指先がの内部に深く埋まる。
「なぁ、俺に感じただろ?」
「はぁっはぁっ・・・やぁ、ダメ・・・ソコ、嫌・・・ァ」
ぐちゅぐちゅと中をかき回すように指を動かしながらヒエンはをじっと見る。
熱の篭った強い視線。
「なぁ、。感じるか?」
「ンっ、あぁ、感じる・・・っ、イイ・・・、はぁ・・・はぁ・・・いいよ、ヒエン・・・っ」
激しく責められては崩れそうになる脚で必死に縋る。
だけどヒエンは容赦ない。
「じゃあ俺のこと愛してるか?」
「はぁっはぁっ・・・うん、うん、愛してる、よ・・・!」
更なる問いかけに何度も首を縦に振る。
そんなの様子を見ていたヒエンは、漸く少し安堵したように息を吐き、の内部から指を引き抜く。
そして優しく唇を重ねた。
柔らかく触れ合う唇の感触。
舌を絡めながら求め合うように吐息を混じらせた。
「あぁ・・・っふは・・・、ね、もう・・・あたし・・・っ」
「ああ、俺も・・・限界っ」
言うなりヒエンの腕がの脚を抱えあげる。
「・・・え?」
「悪い、余裕ねェんだ」
立ったままという体勢に困惑するに苦笑を返し、の下着を引き下ろした。
そして片手で器用にベルトを外すと既に十分勃起したモノを取り出す。
「・・・入れるぜ」
「ん、・・・っあ、あは・・・っ」
ずぶり。
散々指でかき回されたそこは太いヒエンのソレを易々と飲み込んでいく。
「はぁっ、はぁっ・・・やァん、おっき・・・」
加えて立ったままと言う不自然な体勢の所為で、自分の体重が掛かる度に奥に当たるのだ。
「はぁっ、・・・・・・」
「っ、ダメ・・・っ、あぁっ」
軽く腰を揺らされるだけでも酷く感じてしまう。
先程余裕が無い、と言ったとおり、ヒエンは性急に腰を動かし始めた。
の脚を抱える事で固定し、軽く引いてはずんと突き上げてくる。
「はぁっ、はぁっ・・・ああっ、ァん、や、あ・・・っ」
「うっ、く・・・」
強く壁に押し付けられながらも与えられる快楽を追いながらはきつく背中に腕を回して。
「ダメ、もう・・・っイっちゃ、う・・・っ」
「いいぜ、俺も・・・っ、」
「はァっ、あ・・・ヒエン、一緒に・・・っ」
回した腕に力が篭った。
そして見計らったかのようにヒエンも深く打ち付ける。
「っあぁぁぁっ・・・!」
がくがくと体を痙攣させながら、はきつくヒエンのモノを締め付けた。
「うっ・・・」
同時にヒエンもぶるりと体を震わせて最奥に熱い迸りを放つ。
その感覚と余韻にはきつく目を閉じた。
二人の荒い呼吸だけが部屋に響いている。
「はぁっはぁっ・・・」
ずるりと崩れそうになる体をヒエンの腕が力強く抱きとめてくれているのが判った。
「はぁっ・・・ヒエン・・・」
「・・・何だよ」
「・・・大好き」
ぎゅ、と抱きつきながらは小さく囁いた。
「・・・愛してるよ、大好き・・・ヒエン、好き・・・」
「・・・俺もだよ・・・」
答えるように、ヒエンの腕もきつくを抱きしめる。
「俺、俺・・・人間じゃねぇけど・・・、を幸せにする自信あるから・・・!守りきるから・・・!!」
「・・・うん」
「ポケモンだけど・・・世界で一番お前の事好きなのは俺だから・・・っ」
「・・・あたしも、人間だけどヒエンが世界で一番好きだよ・・・」
不安にさせて、ごめんね?
は言いながらゆっくりとヒエンに唇を寄せた。
恋というものは、厄介だ。
翌日、と共にホテルをチェックアウトしてみたら。
「よっ」
「えっ、タツロウ!?」
実はあの後大分気分が盛り上がってしまって夜遅くまで抱き合っていたため寝不足気味だったのだけれど。
タツロウの出現に思わず眠気も吹き飛んだ。
「・・・返事・・・聞きに来たの?」
「ま、そんなとこだ」
「・・・」
タツロウは、人間である。
加えて将来有望で。
顔も良い。
だけど。
「・・・じゃあ、ごめん。あたしタツロウとは付き合えない」
「・・・そう、か」
「ごめん、ね。でも・・・」
ちろりとヒエンに視線をやって、は少し表情を曇らせた。
やっぱり好きなのは、ヒエンなのだ。
昨日みたいな事をするのもタツロウとではなくヒエンとがいい。
「いや、まあ昨日逃げられた時から予想はしてたからな」
「・・・そう」
「ま、でも俺も諦めないからな。いつか絶対俺の事が好きだって言わせて見せるぜ?」
「え」
「それだけ伝えに来たんだ。んじゃ、俺今日発つから!」
じゃあな!と言い、ぽんとオニドリルを出すと空を飛ぶ技で行ってしまった。
残された二人は言葉が続かない。
「・・・」
「・・・つーか・・・諦めろよ・・・」
呆れたようにヒエンは言った。
人間との恋と言うものは多難らしい。
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と、言うわけで。
リクエストのバクフーン夢、です。
内容は018の設定でエロ有とのことでした。
加えて大分前に拍手でバクフーンにヤキモチを妬かれたいと言う素敵すぎるお言葉もいただいたのでソレも盛り込んでみました。
満足いただけるものになっていれば良いのですが・・・。
ところでデフォ名は前のを引きずって奈々様のままです・・・すみません。
次に書くならアレだな!
進化した際のヒエンの告白。そして初エッチ(笑)
でも処女書くの面倒だからエロまでいけるかは判りませんが・・・。