嫌い




嫌いよ嫌いよ、大嫌いよ。
あたしから克也をとっちゃうカードなんて。





「ありえないわ」
大袈裟に溜め息を吐いて、机に突っ伏すあたしを見て杏子は笑うばっかり。
ちょっとォ〜・・・大切な友達が悩んでるのにそれないんじゃないの。
「なんであいつあんなに子供なの」
「まぁまぁ仕方ないんじゃない?城之内と遊戯の仲良しっぷり、今に始まったことじゃないよ?」
杏子がちろりと後ろの席を見た。
つられてあたしも振り返る。
そこには楽しそうに遊戯とカードで遊んでる彼氏の姿が。
遠目に顔をみてる限り負けてるみたいね。
「ホントありえない。ていうか遊戯も遊戯だけどね・・・杏子放ったらかして人の彼氏と・・・」
「な、何ソレ。私遊戯とは何にも・・・」
慌てて否定する杏子の頬がちょっぴり赤い。
ふふん、隠すつもりなのね。
「隠さなくていいわよォ。遊戯から聞いたから」
「ええっ、嘘!だって私遊戯には言わないでって・・・」
うふ、ビンゴ。
にんまり笑って見せると杏子はしまったという顔になった。
「誘導尋問なんてずるいよ、〜・・・」
しゅんと小さくなる杏子が凄く可愛い。
ああ、これくらい可愛かったらあたしも克也にもっと大事にしてもらえるんだろうか。
「えへへ〜ねぇねぇ何処までいったの?ちょっとだけ教えてよ!!」
「や、やだ!!!恥ずかしいもん・・・!」
ますます赤くなる杏子の反応で何となくわかっちゃうけど、やっぱり本人の口から聞いてこそよね!
「ちょっとだけ!ね?」
「・・・えぇ〜・・・じゃあ、達のほう先に教えてくれたら・・・いいけど」
「え、あたし達のほう?!」
う、流石にそれを言われると辛い。
何故かって?
あたしと克也は高校生にもなってキスまでしかしてないんだもん!!!
それも数えるくらいしか・・・。
さっきの杏子の反応見てたらなんとなくわかるけど、向こうはそれどころじゃ無いに決まってる。
結局あたしは杏子と遊戯のことを聞くのは断念することにした。




「ちょっとォ〜・・・」
今日は休み時間に杏子とあんな話をたこともあったから。
二人で相談してお互いに彼氏を確保して帰ろうってことになった。
終礼とともにソッコーで克也を捕まえて一緒に帰ろって誘って。
杏子と遊戯も交えて途中まで一緒に帰ってさ・・・思い切って家に呼んで・・・。
それで・・・なんでこんな状態なの??
「克也・・・あたし、そんなカードのこと教えられても全然わかんないんだけど」
「だから俺が教えてやるっていってるだろー!俺どうしても遊戯に勝ちたいんだよ。の賢い頭で戦略考えてくれよ、な?な?」
鞄から出したカードをばらばらと床に零しながら克也は嬉々としてあたしに向かう。
いやえっと、ちょっとホント勘弁して。
ていうか学校から出ても、彼女のおうちに招かれても『遊戯遊戯』ですか。
いい加減ムカついた通り越してちょっと心配なんだけど。
「・・・克也」
「なんだよ?」
「あたしと遊戯どっちが大事な訳?」
思わず聞いちゃった・・・こんな馬鹿なこと。
男の子に嫉妬してどうすんのって思うけど、だって克也の口から出るのはいつも遊戯かカードのことだけ。
「何言ってんだよ、どっちも大事に決まってるだろー。お前アホだなー!」
アホはどっちよ!!!!
って叫びかけたけど克也がなんか優しい顔で笑うから言葉が出なかった。
「はははっ、嘘だっつの!より大事なヤツなんていねぇって!!」
笑いながらぽんぽんと頭を優しく叩かれる。
・・・なによ。
一応分かってんじゃない。
克也からそういう言葉聞いたのは久し振りすぎてなんか恥ずかしくなっちゃった。
あたしの頭を叩いてる手を取って俯いたら、克也の手がゆっくりあたしの頬を撫でてくる。
「かつ・・・」
そのままあたしの顔を上げさせて、克也が近づいてくる。
「・・・ん」
押し付けられる柔らかい感触にあたしはきゅっと目を閉じて。
克也の背に腕を回した。
そしたら克也もあたしのこと抱きしめ返してくれて。
しかもそれが結構力強かったりするから・・・嬉しい。
「・・・えへ、克也大好き」
離れたときにっこり笑ってそう言ったら、少し赤い顔でふいっと目を逸らされた。
だけど・・・。
「・・・お、俺ものこと大好きだ・・・!」
嬉しいこといってくれるから今度はあたしから抱きついてキスしちゃった。
確信的に反動をつけて抱きついたから、狙ったとおり克也はあたしを支えきれなかったみたい。
二人して克也の後ろのベッドにダイブ。
「・・・おわっ!!ちょ、・・・っ」
慌てて克也が体を起こす。
でもあたしは首に腕を回したまま離れない、ううん離さない。
「ね、克也・・・大好き」
視線だけで見上げたら克也の顔が赤い。
自分の頬もすごく熱いから、きっと今あたしも克也に負けず劣らず真っ赤になってるんだろうな。
一瞬困ったような表情を浮かべたけどすぐに真面目な顔になってあたしの腰に腕をまわしてきた。
ぎゅっときつく抱きしめられたかと思うと、素早く唇を塞がれて。
しかもいつもみたいなのじゃない。
「ン・・・ふ、ぅ・・・」
ねっとりと柔らかい舌があたしの中に入り込んでくる。
それと同時に克也があたしに体重をかけてきて・・・そのままベッドに押し付けられた。
「はっ・・・克也、好き・・・っ、大好き・・・!」
銀の糸をひいて離れたときあたしはちょっと涙声になってしまった。
そんなあたしを見下ろしてやっぱり少し困った顔をした克也。
「・・・俺はのこと愛してるぜ」








「・・・嫌いっていってるでしょ」
結局。
あのまま二人はすっかり朝までいいムードで・・・なんてことは全然無くて、克也はまたしてもあたしにカードの説明を始めた。
あたしの意思なんか無視してとりあえずルールとか説明してる。
「ねぇ、ちょっと」
「いいからいいから!も覚えてさ、俺とタッグ組んで遊戯やっつけてやろうぜ!」
嬉々として克也はあたしにカードを押し付けた。
訳分かんないモンスターの絵が描かれたカードなんか見ても面白くもなんともないんだけど。
「タッグって。1対2は卑怯じゃない」
「なんでだよ。杏子がいるじゃねーか!」
「・・・はぁ?」
ったく変なトコには気が回るのね。
基本的なルールの説明だけしてあたしにぽいっとまとまったカードの束を投げてよこす。
「ま、とりあえずソレ使えよ。俺のメインのデッキじゃねーけど結構使えるからよ!!」
「はぁ!?だからあたしはやらないって」
「ほらほら5枚ドローしろって。手加減すっから!」
「えーもう・・・一回だけだよ・・・」
ずるずる流されちゃうダメなあたし。
このカードからあたしが愛しい克也を勝ち取る日は果たしていつくるのかしら・・・。







==========
エロを入れなおそうかと思って断念。