「ねー忍君。あたし忍君の職場に行って見たい」
危険な職場
爆弾発言が出されたのは何も今に始まったことではなかった。
「前からダメだっつってんだろ。つーか何でわざわざあんなトコ行かなきゃなんねぇんだよ」
「だって今は金融屋じゃないんでしょ?あの女子高生探偵さんの事務所なんでしょ?じゃあ全然危なくないじゃん」
にへ、と笑って見上げてくるに吾代は苛っとした。
「前より全然危ねーよ!!!テメェはあいつらの正体知らねぇからそんなこと言えンだ、馬鹿」
「正体?」
「・・・っ、イヤ何でもねェ」
気まずそうに視線をずらすと吾代はから離れて立ち上がった。
「何処行くの?」
「煙草切れた」
「んじゃ、あたしも行く」
とたとたと吾代の後につく。
そんなを横目で確認し、ポケットに突っ込んでいた手をの手に伸ばした。
無言で重ねられた手にはにこりと微笑んで軽く握り返す。
煙草の自販機なんて直ぐそこだけど、繋がれた手が嬉しかった。
「・・・あれ、っかしーな」
「どしたの」
自販機の前でぱたぱたとポケットを叩く吾代。
「財布がねェ。・・・お前盗ったか?」
「何で真っ先に彼女疑うのよ!!忍君じゃあるまいしそんなことしないよ!!」
「俺のことは余計だっつの!・・・落としたか・・・?」
自販機の前で考え込むことしばし。
如何しても心当たりは一つしかない。
「やっべーな・・・あそこしか心当たりねぇぞ・・・」
ぼそ、と呟いた吾代の言葉にの表情が明るくなった。
それを見た吾代、己の失言に気付きの手を引っつかもうとしたが・・・。
そこはそれ、勿論そんな吾代の行動などはお見通しである。
さっと手を後ろに隠し声高に叫んだ。
「あたしも行く!!」
「ダメだ!!」
間髪入れずに吾代も叫ぶ。
「何でよォ」
「危ねーからだっつってんだろ!!」
あんなところに連れていったら如何なるか分かったものではない。
それにどんなに情けない扱いを受けているかも知られたくなかった。
これ以上あの助手に弱みを見せてなるものか。
「でも煙草どーするの?我慢出来る訳?言っとくけどあたしお金貸さないよ。返って来ないもん」
「ぐっ・・・」
「ご飯くらいなら作ったげるけどねー。有料で」
「お前なァ!足下見やがって・・・っ」
ニヤリと意地悪い笑みで以って言い放つ。
「さ、どーする?」
じりじりと詰め寄られ吾代は苛立たしそうに視線を逸らす。
「クソっ、行きゃァいいんだろーが!!」
どっちにしろあの事務所に財布を置いておくのは非常に怖い。
勝手に使われても文句の言いようもないのだから。
はしたり顔で吾代の腕に絡みついた。
ちょっと強引な事をしてしまったので振り解かれるかな?と思ったが幸いそんなことは無くて。
ただ苛々としているらしい吾代は少し早い歩調で歩き出す。
目指すは桂木弥子探偵事務所。
「何か有名人に会いに行くみたいでドキドキするー」
「そーかよ」
アヤ・エイジアの事件以来すっかり有名になってしまった弥子。
そんなところで自分の彼氏が働いているというのは驚きだった。
実際はどんな扱いを受けているのか知る由も無い。
足取り軽く吾代について来ていた。
そんなには目もくれず、吾代はただただあの二人が事務所にいないことを祈るばかりである。
やや歩いてしばらくしたころ。
吾代が一つの雑居ビルに足を向けた。
「此処?此処で働いてるの?」
「あァ」
言葉少なにエレベーターに乗って、最上階。
前まで『早乙女金融』と書かれていたドアのプレートは、今や『桂木弥子魔界探偵事務所』に代えられている。
「へー、ここかー。魔界って・・・どういう風に魔界なんだろー」
感心したような風にはそのドアをじーっと見た。
「ん?あれ。忍君、ノブのトコ・・・外出中になってるよ」
指をさす先には小さな札が確かに掛かっている。
今までこんなものあっただろうかと吾代は首を傾げた。
「つーか俺鍵なんか持ってねーぞ・・・」
「え、じゃあ出直す?」
「・・・」
どうしたものかと、吾代は黙り込んだ。
出直すのは面倒だし、丁度好都合に二人がいないこの状況。
今ならば二人にを会わせることなく財布も取って帰れるじゃないか。
そこで吾代は一つの結論に達する。
「・・・ドアブッ壊すか」
「・・・えぇっ・・・?!」
まさかそこまでやるとは思っていない。
「よし、そこ退け。一瞬で終わっからよ」
「い、いやいや待ってよ。そんな簡単に壊すとかさ・・・せめて鍵壊すとか」
言ってヘアピンを吾代に差し出す。
「・・・・・・オメーやっぱ俺の女だよ」
それを受け取り、吾代はドアノブの前にしゃがみこんだ。
「・・・開くかな?」
「さぁなァ・・・何回かやったことあっけどなー」
「・・・あるんだ」
いつかそれで彼が捕まりやしないだろうかと不安になりつつも吾代の横に座り込む。
ヘアピンの先を吾代は軽く歯で咥えギ・・・と拡げた。
「もう一本ねェか?」
「あるよ。はい」
しかし、手渡されたそれを同じように拡げようとして吾代はふと気付いた。
「・・・ん、ちょっと待て。鍵なんかかかってねぇぞ」
ノブを下ろせばカチャリとドアが開く。
「ンだよ。不用心だな」
余程急ぎの用でもあったのだろうか。
あの周到そうな男にしてはおかしな話である。
「・・・ねー忍君。・・・泥棒入ってるとか・・・そんなことないよね」
「はァ?」
「だってさ・・・探偵って人に知られちゃまずい情報とか扱ってるんでしょ?鍵かけないっておかしくない?」
「・・・」
確かに一理あると思った。
自身はあの助手の事を知らないわけだが、こんなうかつなことを見逃すような男ではないことは確かなのである。
それに嗅ぎまわれて一番困るのはあの女子高生でも自分でもなく、恐らくあの男。
もう事の終わった後かもしれないが用心するに越したことは無いかもしれない。
万一まだ中にいたとしても5,6人くらいならを守りながらでも絶対に勝てる自信はある。
「・・・おい」
吾代はの手をぎゅ、と握った。
「万一のこと考えて俺から離れんじゃねェぞ」
「・・・う、うん」
真剣な表情の吾代に、不謹慎ながらはどきりとする。
「俺の傍にいりゃ安全だからよ」
「うん」
頷きはしっかりと吾代の手を握り返した。
そっと、音がしないように吾代が慎重にドアを開ける。
「・・・ん?何だこれ」
ドアの前には何故か大きなついたてが立ててあった。
先日までこんなものは無かった気がする。
だけど吾代にとっても好都合だった。
これならドアを開けたことは分からない。
中の様子を伺うことは出来ないけれど、中に入って中を伺うことが出来そうだ。
の手を引き足音を忍ばせて事務所の中へ入ると二人の耳に誰かの声が聞こえた。
誰か、いる。
その事実に緊張が走る。
耳を澄ますと、どうやら複数いるらしい声。
一つは女、一つは男。
「・・・忍君・・・」
「黙ってろ」
「・・・ン」
不安そうに自分を見上げてくるの手を引きながらついたての傍にぴたりと体をつけて。
そっと中を伺った。
真似をしても吾代の背に乗るようにして恐る恐る中を覗く。
「「・・・!」」
そこで二人が目の当たりにしたのは。
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「はぁっ・・・も、嫌・・・だってば・・・」
「貴様が退屈だと言うから相手をしてやったのだ。もっと喜ばんか」
「だって・・・こん、なァあ・・・っネウロ・・・はぁ、あ・・・」
ソファの上からほっそりとした色の白い足が飛び出している。
そしてそれを担ぐようにした青い服の男の背中。
「はぁっ、はぁっ・・・ネウロ、あァん・・・っ」
時折背がしなって白い腹が見え隠れしている。
男の方も覆いかぶさって腕を動かしたり腰を揺すったり。
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「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・あいつら・・・・・・」
最悪の現場に踏み込んでしまったようである。
泥棒よりも性質が悪い。
気付かれないうちに退散しなければ。
財布はもう諦めることにして、固まっているの手を引きそぅっと事務所を出た。
慎重に慎重に音を立てないようにドアを閉める。
それでも気付かれているかもしれない感は否めないが。
「・・・帰るぞ。財布は明日にする」
「・・・ン」
頬を赤くして素直に頷くであるが、言葉は少ない。
やっぱり連れてくるんじゃなかったと吾代は猛烈に後悔しながらビルを後にした。
気まずかったので家まで送ろうかとしたらがそれを断った。
だから二人して無言気味に帰ってきた吾代のアパート。
金も無いし如何したモンかと吾代が思いながら部屋に上がる。
そんな吾代を見送って、は後ろ手にドアの鍵を閉めた。
「・・・忍君」
「何だよ」
がちゃん、と金属質な音が響いて吾代は不可解そうに眉根を寄せた。
靴を脱ぎ捨てた。
吾代に続いて部屋に上がりこんだかと思うと軽く助走をつけ飛びつくように吾代に抱きついた。
「うォ!?」
予測不可能な動きに、取りあえずを抱きとめはしたものの勿論支えきれずに後ろに引っ繰り返る。
ダァン・・・!と派手な音がして吾代はの下敷きになった。
「いってぇぇ・・・。阿呆か!!!喧嘩なら買うぞ!!!!」
の襟首を引っつかんで叫んだ。
無理もないことだろう。
だがはしれっとした顔でそっと吾代の頬に手を添えると、ちゅ・・・と唇を押し付けた。
「・・・何の真似だっつーんだ」
突然の行動に驚きつつも平静を装ってを睨む。
「忍君、大好き」
「あァ?」
「だからエッチしよ。ね、しよ」
吾代の返事も待たずもう一度唇を寄せる。
優しく触れるだけのキス。
だけどからなんて珍しい。
いつも家に来ればなし崩しのようにセックスしているが、それはいつも吾代がを蒲団に引っ張り込むからだ。
が自発的に言い出すことなど滅多に無い。
「あたししたいの。忍君は、嫌?」
ゆっくりとの腕が吾代の首に回る。
「・・・嫌な訳ねェだろ」
誘われることなんて殆ど無いのに、そんな僅かなお誘いを逃す手など無い。
先ほどの事務所で触発されたのだろう。
もしかしたら連れて行って良かったのかもしれない。
襟首を掴んだ手を優しくの頭に添え直して、吾代はに顔を近付けた。
「・・・ン、ん・・・」
くちゅりと湿った音がして吾代の唇がの唇を吸う。
ひやりと吾代の唇のピアスが当たった。
「ん、ふ・・・はぅ・・・」
唇をちろりと舐められ、柔らかな感触が離れていく。
物足りなさを感じてはそれを追った。
「ん、ン・・・忍、君・・・う、ン・・・」
ぴちゃぴちゃと水音を立てながら舌を絡める。
じんわりと口に広がるの味を感じながら、吾代は上に乗るの背にしっかりと腕を回した。
きつく抱きしめられてどきりとする。
「は・・・ァ、忍君・・・ドキドキする。さっきと同じくらい」
「さっき?」
「ん、俺から離れるなって言ってくれた時。格好良すぎて惚れ直した」
えへへ、と照れたように笑う。
そういう時の酷く可愛らしい様子が吾代を捉えて離さないのであるが、口にしない為は気付いていなかった。
「忍君、あたしのこと好きって言って」
「・・・寝惚けてンのか?」
「寝惚けてないよー。ね、言って」
小さく首を傾げて催促する様子がこれまた可愛い。
結局に勝てやしないことは重々わかっているのだ。
そんな吾代は照れ隠しのように明後日の方向を見ながら。
「・・・好きだ」
ぶっきらぼうに小さく囁かれた言葉には嬉しそうににっこりと笑った。
「あたしも、大好き」
そしてゆっくりと体を起こして、服を脱ぎ始めた。
一枚、また一枚。
服を散らかった床に放り投げていく。
白い肌が晒されていく様子を静かに見ているわけでもない吾代は。
「っァん・・・待って・・・」
「待てるか」
ぐい、と下着を押し上げてやんわりとの胸に触れる。
「あ、ン・・・っ」
ふにふにと感触を愉しんで、つんと尖った乳首を突付く。
そして指先で捏ねるように刺激した。
は吾代の腹の上でその刺激にふるふると何度も体を震わせながら耐えている。
「忍君・・・あ、ァ・・・やぁン・・・」
更に好色な手がミニスカートから伸びるの白い太股を撫で始めた。
すりすりと卑猥な動きで滑るように撫でている。
「スカート捲ってみろよ」
「え・・・ン、あ・・・ァ、・・・こ、こう・・・?」
吾代の言いなりにはスカートの裾を捲り上げた。
女の子らしい淡いピンク色の下着が露わになる。
「そうそう、そのままにしてろよ」
ニヤと意地悪く笑って、吾代が足をなでていた手をの下着に移す。
するり引き下ろしての下腹部を露わにすると指を差し込み、中を探リ始めた。
「っはァん・・・、あ、あァ・・・はぁっはぁっ・・・忍くぅん・・・っ」
震える手でスカートを握り締め、は顔を苦しげに歪める。
「濡れ濡れじゃねぇか。期待してたか?」
「あ、は・・・ちょ、ちょっと、だけ・・・」
「ハッ、ちょっとじゃねぇだろ。こんなに濡らしてよォ」
ぐちゅぐちゅと淫猥な水音を立てながら中をかき回す。
そしての愛液を指に絡みつけてぷくりと膨らんだの芯を撫でた。
「はぁぁ・・・、はぁ、はあぁ、ン・・・っ、忍君・・・っ」
皺になる程スカートをきつく握り、は体を震わせる。
「やッ・・・も、ダメ・・・っ」
の腰が軽く浮く。
絶頂ギリギリのところまで追い詰めたのを見計らい、吾代は指を引いた。
直前で止められたは堪らない。
荒い息に胸を上下させながら恨めしそうに吾代を見据えていた。
「んなカワイー顔して睨んでンじゃねェよ。もっとイイモンがあるだろ?」
言いながらの手を掴み、膨らんだ昂ぶりに触れさせる。
「・・・じゃ、早く・・・シて」
いつになく性急なの声が吾代の背中を押した。
手早くベルトを引き抜いて自身を取り出して、押し付けるようにしての入り口に宛がった。
「ゆっくり腰下ろせ」
「ン・・・あ、ァ・・・」
言われたとおりにすると、ずぬ・・・と鈍い圧迫感がを襲った。
「はっァ・・・あぁ・・・」
苦しいような気持ちイイような。
だけど待ちに待ったこの瞬間。
「・・・力、抜かねェと入らねーぞ・・・」
吾代も何かを堪えるような声での腰を強く掴む。
内壁を擦るように軽く揺らされて溜め息が漏れた。
「はぁっはぁっ・・・アァ・・・ァ・・・」
「・・・っ、もっと、腰使え・・・」
目を細めて苦しそうに吾代がを見る。
焦れったいの動き。
ゆるゆると飲み込んでいく感触に吾代が体を起こした。
「・・・クソっ、もう限界だ・・・っ」
「!・・・あっ、アァ・・・っ忍、君・・・っあ、あぁぁぁっ・・・!」
今まで腹の上に乗っていたを絨毯に押し付け、膝の裏を押さえつけて。
いつもよりも深く繋がるのを望むように。
「あっ・・・!やァ・・・っこん、な・・・激し、っあぁ・・・っ!!」
粘質な音を響かせながら吾代が何度も出入りする。
「・・・、・・・っ」
「やぁっ、忍君・・・っダメ、あたし、イ、イっちゃう・・・っ」
ぎり、との爪先が吾代の肩をきつく掴んだ。
その瞬間吾代が思い切りを突き上げた。
「あぁぁぁっ・・・!!」
吾代の体重に押さえつけられていたの体が痙攣する。
「う・・・っ」
絶頂の締め付けに吾代も肩を震わせた。
「はぁ・・・はぁっ・・・」
「・・・疲れた・・・」
ずるりと吾代がの上に崩れて。
しばらく二人の吐息が混じるのみであった。
「・・・・・・ね、忍君」
ふいに口を開いたのは。
「何だ・・・?」
「・・・お財布・・・一人で取りに行ってね」
「・・・」
そしてこの日以降、の口から吾代の職場に行きたいという発言は極端なほど出なくなった。
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ネウヤコ書きたかったわけじゃないんですケドね・・・(苦笑)
副産物っつーかなんつーか・・・。
今回はヒロインさんがノリノリ!みたいなのを書きたかったのですが見事失敗。
前回恋愛要素薄い気がしたので今回は甘めに。
それにしても読みにくい構成で申し訳ないです;;
長くなっちゃったし・・・反省点沢山だ。