「あたしデスマスクは好き・・・でもごめんなさい、この宮好きになれないわ」
口説きに口説いて落ちたと思った瞬間、この一言。
散日
「だからなんでわざわざシュラの宮で会わなきゃいけねぇんだよ」
ぶつぶつと文句を言いながら十二宮の長い階段を上る者がいた。
第4の宮の主、デスマスクである。
大体彼に会おうと言うものは自ら出向くのが暗黙の了解であった。
そもそも呼び出しても来ないのだから。
しかしそんな彼が誰かに会うために3日と間を置かず階段を上っている。
最初はそれに興味をひかれた者達に宮を通り抜けるたびに「どうした」「何かあったのか」「珍しいな、お前が」などと聞かれた。
それも最近ではめっきり減ったが。
とにかく、そうまでしても会いたい者がいる。
それも大分上のほうに・・・。
「・・・畜生、遠いっつの!」
まあそれでも黄金聖闘士の足でもってすればそんなに遠い訳でもないのだが。
「おいシュラ、いるか!?」
ずかずかと無断で宮に入り込み、不機嫌そうな声で主を探す。
勿論居住区にすら招かれる前に入っていくあたり如何しようもない。
「ったく何処だよ、めんどくせェ・・・」
リビングやらキッチンやらきょろきょろと見渡しては名前を呼ぶがさっぱり反応が無い。
もしやと思いデスマスクは更に奥の寝室にまで足を伸ばした。
「・・・おい、シュラ」
キィ、と小さな音を立ててドアを開く。
見ればそこには誰かが眠っているらしい膨らみが。
「・・・」
ぐっと上に掛かっているシーツの端を掴んだデスマスク。
そして。
「オラァァァ!!!起きやがれ!!!!!」
「!」
「ふあ!?」
大声で怒鳴りながら捲り上げると、眠っていたシュラと少女が跳ね起きた。
「・・・なんだ、デスマスクか」
「あーもうびっくりさせないでよォ」
二人はやれやれというように顔を見合わせた。
「なんだじゃねぇ!っつかお前等一緒に寝てンのかよ!!!!」
「だって兄妹だし・・・ねぇ?兄様」
「いや、俺は新しいベッドを買うと言ったんだぞ。だがが」
「勿体無いわよ。こんなに広いベッドがあって新しいの買うなんて」
確かにシュラが一人で寝ても大分余るくらいのベッドではあるが。
デスマスクは面白くない。
当たり前と言えばそうである。
だってこの「」と言う少女。
シュラの実妹にしてデスマスクの現恋人なのだから。
「だからって俺以外の男と寝るんじゃねぇ!ていうか俺ン家で住めばいいだろうが」
「この前も言ったけど、あたし巨蟹宮を好きになれないの。修道院に入ったとき厄介な霊能力に中途半端に目覚めちゃったおかげでね。あんな浮遊霊のうようよいるところ落ち着かないわ」
飽くまでドライに返す。
彼女との押し問答がどれだけ不毛かをデスマスクも知っている。
苛ついた表情は隠さないが、しかしそれ以上の追求も止めた。
「ったくよォ・・・お前等まさか風呂まで一緒に入ってんじゃねぇだろーな」
「あら、なんで分かったの?」
さらりと吐いたの爆弾発言にデスマスクの目が見開かれる。
「っな・・・っ」
「おい、。誤解を招く言い方は寄せ」
珍しく慌てた風にシュラがの言葉を打ち消した。
シュラとしては実妹とおかしな関係になっていると思われては困るからの行動である。
一応そういうことは分かっているつもりのデスマスク。
なんだ冗談かよ・・・と安心したのも束の間。
「ただは俺の背を流してくれただけでやましいことは一切無い」
と、トドメの一言。
そんなやましいことが一切無かろうと自分は、恋人であるはずの自分はそんなことしてもらったことがないので。
一気に気分がどん底まで落ち込むデスマスク。
「・・・おい、」
「なぁに?デスマスクもして欲しいの?」
「・・・してくれんのかよ」
拗ね始めたデスマスクの気分を察知してかは猫撫で声でデスマスクに擦り寄る。
「うん、いいよ。してあげる」
にこりと笑い頷いて見せる。
その仕草だけでデスマスクの機嫌が一気に良くなっていくのだ。
「・・・」
二人の会話を聞いているシュラはこれまた困った表情で。
とりあえず止めておくべきなのだろうか、と。
「お前等・・・俺が如何していいか分からなくなるからそういう会話は巨蟹宮でやってくれないか」
「あ、ごめんなさい兄様。じゃあ直ぐ支度して出て行くわ」
シュラにはかなり素直な。
ぱぱっと着替えを掴むとデスマスクに「ちょっと待っててね」と言い寝室を出て行った。
「・・・で、なんでその格好なんだよ」
の服装を見てデスマスクが言った。
その服は初めて聖域にが来たときに着ていたもの。
そう修道服。
漆黒のワンピースと白い襟をはためかせながらはデスマスクに手を引かれ歩いていた。
「だって巨蟹宮だもの。これ着てたら多少はマシかなって」
「いや、寧ろ浄化してもらえると思われて纏わりつかれんじゃね?」
と言うかデスマスクが覚えている限り、が巨蟹宮に来るようになるまではあんなに亡霊の数は多くなかったと思う。
そう気のせいかもしれないがが来てからあんな風に落ち着かない雰囲気になったような気がしてならないのだ。
そろそろシャカでも呼んで一斉除霊でもしてもらわなくてはいけないかもしれない。
「そうかしら・・・あたしあんまり信仰心はないんだけどな」
「ま、亡霊どもも見た目から入るってことじゃねぇか?」
なんだか納得行かない答えを返されは小さく口を尖らせて見せた。
そうこうしているうちに巨蟹宮。
久しぶりに来たが、やはり・・・。
「・・・よくこれで落ち着いて生活できるね・・・」
「まー慣れてっからな。つーかここまで酷くなかったんだぜ。最近増えちまったんだ、何故だかな」
一歩入れば巨蟹宮をうろついている亡霊に出くわす。
ごったがえしているというわけでもないが流石に5,6人の亡霊を見かけてしまうと溜め息が漏れる。
ここまで来る間、どの宮も亡霊などいなかったじゃないか。
何故ここだけ。
しかしそれを初日に問うたら。
「・・・俺を恨んでるやつらだからなァ・・・」と、なんとも言えない顔で返されてしまったのでは何も言えなかった。
「さてと、ここに来た目的を果たしましょうかね」
そう言うとはデスマスクの腕を取り、知った足取りでバスルームへ向かう。
やはり亡霊が浮いてはいるがこの際無視することにして。
「じゃあ脱いで」
にこっと笑って服を脱ぐように促した。
「よしよし」
デスマスクは上機嫌で二つ返事を繰り返し・・・。
ぐっと服を掴んだ。
・・・の。
「なんであたしの服を掴むのよ」
「先に脱がしてやるってンだよ!濡れたら困るだろ?」
いそいそとデスマスクの手がのワンピースの後ろの釦にかかる。
向かい合っているにも関わらずぷつんぷつんと器用に背中の釦を外す様は流石と言えるか。
「もう・・・こういうことだけは器用なんだから」
困った表情では少し頬を染めてデスマスクの好きにさせた。
釦を全て外し終わると、デスマスクはの肩の部分を掴んで一気に引き下ろす。
はらりとワンピースは床に落ち、下着に包まれたの体が晒された。
途端に視線が突き刺さるのを感じては居心地悪そうに体を丸める。
のこんな姿を見るのは初めてだった。
「や・・・あんまり見ないで。恥ずかしいから・・・っ」
食い入るように見つめられは顔を赤くしてデスマスクの顔を自身の両手で覆う。
勿論そんなささやかな抵抗はあっさりデスマスクに破られてしまったけれど。
「ンな可愛い反応すんなよ」
にたりといやらしい笑みでデスマスクはの腰を抱き寄せる。
「仕方・・・ないじゃない。思春期の殆どを修道院で過ごしたんだし」
「お前幾つだっけ」
「・・・18」
シュラが黄金聖闘士になって、その後両親をなくした。
たった一人の兄に連絡を取ろうにも取れなくて身寄りがなくなり仕方なく修道院に入ったとか。
漸くその兄と再会を果たしたときにはもう5年以上の月日が経ってしまっていた。
無菌状態で育ってきてしまった。
勿論その体は誰にも許されたことは無い。
そんなの腰をきつく抱きしめて唇を押し付けるデスマスク。
ちゅ、と小さな音が響いてはそのキスを受け入れた。
「ん、ふ・・・」
緩く唇を抉じ開けられたかと思うとデスマスクの舌先がにゅるりと侵入してくる。
遠慮がちに絡め取られの腕に力が篭る。
「は・・・ン、っ・・・」
角度を変えつつ舌先や唇を吸われ小さく声が漏れてしまって恥ずかしい。
手馴れた様子のデスマスクに翻弄されながらは必死でそれに追いすがっていた。
やっと銀の糸を引きながらデスマスクが離れる。
「あー、ヤベェ。俺もう止まんねぇ」
全然「ヤバイ」などと思っていなさそうな様子でデスマスクはの体を壁に押し付けた。
「えっえっ・・・ちょ、待って・・・」
「無理」
そういうデスマスクの手はの下着を器用に外す。
ワンピースと同じくはらりとそれは床に落とされ、それを見止めたデスマスクも上のシャツを脱いだ。
そしてもう一度抱きしめて唇を押し付けた後耳元で囁いた。
「愛してやるよ」
「・・・っ」
嗚呼本当に、貴方の唇のすることは―――。
================
短くてごめんなさい。
これも続きます。