何も信じられず自分が唯一孤高の存在というのなら。
それは正しく真夜中の荒野を闇雲に走っているのと同じこと。
棘だらけの枝に体を引き裂かれる様は、孤独が身を抉るに等しいのである。







世界初の罪人の名を証に






裏路地をうろついていた俺は探していたものを見つけた。
人間の雌ガキ。
多分親に捨てられた奴だ。
俺を見て逃げもしないし隠れもしない。
ただただ過ぎていくのを待つだけに見える。
しかし俺はそのガキに用があった。
腕を掴んでそいつを無理矢理立たせる。
「・・・おいガキ、貴様・・・名は」
この問いももう何度目だろう。
大体ここで気に入らないことが多いんだ。
そういう時は泣き叫ばれる前に喉笛に食いつくのが一番有効だった。
ヒュウ、と喉から空気が抜けてうるさく喚かれる前に絶命させることが出来る上、後で食うときも体は傷ついていないから食いやすい。
雌ガキは一瞬首を傾げて、俺を見た。
「・・・無い。ただの野良犬だから」
・・・。
成る程、なかなか面白い答えだ。
俺はにやりと笑って言葉を続けた。
「腹は減ってるか」
「減ってる」
今度は間髪いれずに返答がある。
まあこれは聞かずとも分かることではあるのだが。
「金が欲しいか」
「・・・それより食べ物が欲しい」
素直なガキだ。
だがそれ以上に俺を怖がらないところが気に入った。
俺はガキの泣き声が嫌いだ。
汚く喚きやがって、不愉快にも程がある。
「俺の言う事を何でも聞くなら食い物をやろう。どうだ?」
するとガキはこくりと大きく頷いた。
そして俺はガキが俺のモノになった印に名前を付けた。
俺の所有物だと言う証に。

俺はガキをそう呼ぶことにした。





俺の見立ては間違っちゃいなかった。
目の前でどっと倒れる相手のモンスター。
俺が相手をするまでもない。
の育てたブラッキーの奴は結構使えるな。
「さ、これで全員ね。掛け金5000、出しなさいよ」
ぱっと手を広げて要求するに、向こうのトレーナーは渋い顔で金を渡していた。
それを掴むとくるりと俺の方を嬉しそうに振り向いて俺に金を差し出した。
「パパ、はい。今日はこれで15000円だね」
「・・・これだけあれば食って泊まれるだろ。引き上げるぞ」
「はぁい」
ブラッキーの奴をボールにしまってちょこちょこと俺の後ろについてきた。
を拾って既に7年。
俺の思惑通りには育った。
まずモンスターの事を覚えさせ、そして俺の望むトレーナーにする。
そこはもうの才能にかけるよりほか無かったが。
まあ俺も強運というかなんというか、とにかくは中々腕の良いトレーナーになったと思う。
俺は命令も服従も嫌いだ。
だが野生のままではそのまま一生を終わることになっちまう。
出来れば強い奴と戦って、そして出来れば頂点に立って。
そうやって一生を終えて。
俺の望むところはそこだった。
だから俺に命令をしない、服従をさせないトレーナーが欲しかったわけだ。
そこで人間の雌ガキに目を付けた。
男はいらねェ。
どうせならアッチの世話も可能な方が良いに決まってるからな。
品定めには大分時間がかかったがじっくり時間をかけて良かったと思ってる。
7年経った今、は恐らく15〜17歳だと思う。
正確な年齢は分からないがまあそれくらいだろう。
あの時の薄汚れたガキじゃねぇ。
あちこち大きくなった可愛い女が俺の目の前にいる。
父親代わりだと言ったら俺の事を「パパ」と呼ぶようになったがそれは大目に見てやった。
可愛いからな。
「飯食うか」
「うん。グラタンが食べたいな」
「分かった」
の奴が稼いだ金で俺はを人間のレストランに連れて行く。
それは相当異様な光景なのだろう。
臆面も無く人前で俺の事を「パパ」と呼び、俺を横に座らせて飯を食うは。
だが俺はそれを注意もしないし止めさせることもしない。
人間の飯なんかクソ不味くて食う気はしねぇが、の隣に座っていることはなんとなく誇らしかった。
他の奴等は皆揃いも揃ってボールの中。
しかしは違う。
俺を綱に横に置き、俺の命令は何でも聞いて、俺の傍を離れようとしないは。
そうだ間違いなく俺のモノなんだ。
「美味いか」
「うん。パパは食べないの?」
「人間の食い物なんか食えるか。ホテルで食うから良い」
ともすれば俺の口許に白いどろりとしたソースのかかったそれを押し付けようとする。
頑として食わねぇがはどうも不満らしい。
俺の腹を気遣うのは構わないがスプーンをこっちに向けられるのはご免だ。
押し返して全部自分で食べるように言ったら、それ以降は素直に俺の言葉に従った。
食い終わったら俺がぱんと金を出してレストランを出る。
これも他の奴等に言わせればおかしいらしい。
時々不審な顔して金が偽者じゃねぇかどうか必死に確認してやがる奴もいるくらいだ。
不快には違いないがまあそういうモンなんだろうといつしか慣れた。
「ご飯時間かかっちゃってごめんなさい。もう暗くなっちゃった、ね」
「いい。どっか泊まるトコ探すぞ」
「うん」
の手を引いて歩く。
ガキだったころの名残だ。
最近では当然のようにが俺の腕を取って歩いたりする。
別に構わない。
は可愛いし見栄えのする女だと思うし、人間の男が寄ってくるのも望むところじゃないからな。
初めて会った時のような裏路地をうろうろして安っぽい連れ込み宿を見つける。
どうせベッドも一つしか使わない。
こういうところの方が干渉されない分余程親切と言える。
俺の手を握るの手に力が篭った。
「・・・何だ、気に入らないか」
「ううん・・・早く、その・・・パパと」
頬を染めてこの後の事を期待するの表情は何時見ても良い。
良い女に育った。
俺は手を解いての肩を抱き寄せてやった。
「こういう時は名前で呼べ」
「・・・うん・・・
に出会った時俺もまた名前は無かった。
しばらくしてが俺の事を「パパ」と呼ぶようになり、もう名前などは必要ないかとも思った。
だけど或る日。
唐突に、本当に唐突に。
は俺を求めてきた。
理由は知らねぇ。
ただあいつも女だったってことだ。
勿論俺としてはその世話もさせるつもりだったかた好都合。
断る理由も無く、その場で頂くことにしたわけだ。
その時にどうも父親呼ばわりは行為にそぐわない気がしてに俺の名を付けさせた。
それは俺がに名づけ俺の物としたように、また俺もの物であるという表れだ。
はそこまで思っていないだろうが、俺はそのつもりだ。
少し考えては俺に、

と、名づけた。
悪くない。
人類最初の罪人の名前と同じだった。



、一緒に入ろ?」
「・・・分かった。先に入って待ってろ」
部屋に着いた早々、はシャワーを浴びると言った。
俺は気にしないがは体を洗う前に俺に触られるのを嫌がる。
まあ俺の為に体を磨きたいと言うのは大歓迎だ。
かく言う俺はあまり風呂は好きじゃなかった。
髪を乾かすのが面倒だからだ。
しかし最近ではが進んで俺の髪を乾かしてくれるから悪くないと思ってる。
ざーっと水音が聞こえてきた。
それを確認して俺はベッドの上で荷物を広げる。
ごそごそと明日向かおうと思う街までの地図を取り出した。
地図で見る限りあまり遠くはなさそうである。
「・・・これなら・・・少しくらいゆっくりしても構わねぇか」
遠かったら風呂場で頂くだけにしてやろうかと思っていたが、これならベッドでも愉しんで平気だろう。
俺は地図を鞄の中にしまい、ジャケットを脱ぎ捨てた。
が鼻歌交じりにシャワーを被っているのが聞こえるのに苦笑を漏らしつつバスルームのドアをノックもなしに開け放った。

「・・・・・・遅いよ。入ってこないつもりかと思った」
そう言って裸のままは俺に抱きついてくる。
ああ畜生。
なんでこいつはこんなに可愛いんだろうか。
名前を与えてやったときは飼い犬のような存在でしかなかったこいつが。
柔らかな体を押し付けてきたを抱きしめる。
細い体も、弱い腕も、強い視線も、何もかもが可愛くて堪らない俺は。
きっと。
「・・・畜生、イカれた」
「え?」
「何でもねえ。今晩は嫌って程可愛がってやる」
抱き寄せたの体をそっと撫でた。
・・・っあ・・・」
少し脇腹を撫でただけだが素直だ。
身じろぐの腰を抱きしめてそっと頬に唇を押し付ける。
首筋にもだ。
の肌は特有の甘い香りがする。
仄かなそれはシャワーを浴びようが消えたりはしない。
少し体を屈め肩口を甘噛みしてちらりと見上げたの顔は、上気した頬と潤んだ瞳。
欲しくて堪らねえって顔だな。
指先での乳首を軽く摘んだ。
期待に膨らんだそれをきゅきゅ、と捏ねる。
「あっ・・・はぅ・・・」
思わず漏らすの声にバスルームの空気が濃くなる気がした。
軽く乳房を手で包み込む。
僅かに動かせば簡単に形を変えて柔らかい感触が俺に伝わる。
、どうして欲しいか言ってみろ」
「・・・ん、あたしのここ触って・・・」
俺の手を取って足の付け根のところへ持っていく。
触れた瞬間、ヌチュと濡れた感触がした。
既に熱を帯びしっとりと濡らしている。
俺がここに入って来るまでどれだけ期待をしていたかが分かるほどだ。
「んっ、んんっ・・・」
は俺の手を掴んだまま僅かに腰を動かして自分のイイ処を俺の指に押し付けている。
「はっ、ァ・・・・・・・・・っ」
気持ち良さそうな声で俺の指を使っている
俺を誘おうとしているのか、本気で気持ちよくなろうとしているのか。
まあどちらでも構わないか。
俺はぬかるんだのソコに埋まっている指を少し動かした。
「ひゃぅ・・・っ」
いきなり俺の指がイイ処を刺激したからだろう、の体がびくりと跳ね上がる。
「どうした?イきたいんだろ?手伝ってやるぜ」
ぐりぐりと指で女芯をきつく捏ね回しながら言ってやった。
は顔を僅かに顰めて苦しそうに荒い息を繰り返している。
「あっや・・・・っダメ・・・あっ、あはぁ・・・っ」
震えて崩れそうになる体を抱きとめながら俺はそれでも手を休めない。
くい、と指を動かして2本の指での芯を摘みあげてやった。
「やぁぁぁぁっ・・・!」
びくんびくんとの体が痙攣する。
同時にどろりとの体液が溢れた。
ぐちゃぐちゃになった指先を離してそれを舐め取る。
はぁはぁと荒い息を吐きながらは俺にしっかりと縋り付いていた。
絶頂の余韻で震える足で健気に立ってるのが可愛くて仕方ねえ。
だがこれ以上はが上せてしまいそうだ。
「・・・、場所変えるぜ。ベッドで仕切りなおしだ」
「・・・はぁはぁ・・・っ、・・・」
うっとりと見上げてくるにキスしながら俺は遠い夜明けまでの時間を思った。
その頃には俺の中に巣食ってた真っ暗な夜も明けていることだろう。














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と、言うわけで。
ミナ様ともうお一人いらっしゃったヘルガーです。
ヘルガーリクエスト二つ溜まってしまっていたので、もう一つ書くことになるかと思いますがとり急いで両方の需要を満たすためにお名前使わせていただきました。
もしかして先に書いたヘルガーの続きを御所望だったのだろうかと、書いた後で気付きました。
今回なんつーか・・・相手を変わった性格にしてしまいましたね。
不快な気分になられた方がいないか心配です。あんまり移入できないし・・・。
一匹狼キャラを書きたかったのですが・・・どっちかというと自分勝手な感じが否めません。