僕、こと
1週間前にアルデバランに拾われて。
この7日間でとってもいい友達が出来ました!





友達






今日も今日とて慌ただしい聖域。
だけど何故か。
たった一人の少女が仲間入りしただけでそれが倍加した気がするのは・・・。
恐らくサガの気のせいなんかじゃなくて。
朝っぱらから巨蟹宮にどたどたと足音が響く。
無遠慮にも寝室のドアを開けてそこへダイブするのは・・・。
「おはよー!!!デスマスク、今日も遊びにきたよォ!!」
どすんと勢い良く馬乗りになられては流石にデスマスクも堪らない。
起こされてしまったことに苛立ちを隠そうとせず、乗ってきた人物を睨みつけた。
「・・・テメェ、・・・俺様の安眠妨害たァ良い度胸してンなァ」
「まぁまぁ、怒らな〜い。ね?」
へらっと笑って首を傾げてみせる。
可愛らしい仕草だが生憎とデスマスクには通用しなかったらしい。
「うぜぇ、出てけ。13時以降まで入ってくんな」
「やだ。今日アルデバランいないの〜。一緒に寝るからここに置いてよー」
女の子と一緒に寝るの大好きなんでしょ?と言いながらはデスマスクの横に潜り込もうとする。
確かにそれは嘘ではない。
しかしデスマスクの好みはよりもう少し歳上の美人だ。
残念ながらは可愛いという形容は出来ても美人という形容は当てはまらない感じがする。
綺麗に梳かされた長い髪は嫌いではないし、顔も悪くは無いのだけれどイマイチ一緒に寝てもらっても嬉しくないというか。
「狭くなるだろ、入ってくんな」
「いいじゃんいいじゃん。わーデスマスクあったかーい」
積極的に抱きついてくるがあんまり嬉しくない。
どうも年端のいかない子供にイタズラしているような気分だ。
流石に16歳ということもあって抱きつかれた感触はあちこち柔らかくて悪くは無い筈なのに。
それがますます子供に猥褻な事をしているような気分になって・・・。
「・・・ちっ・・・」
舌打ちしながらデスマスクは体を起こした。
「あれ?寝ないの?」
「アァ?どっかの誰かが邪魔したから目ェ冴えちまった」
そう言って床に落ちている服を拾って袖を通すデスマスク。
それをにんまりと笑いながら見ている
これが最近の巨蟹宮の朝の光景だった。


「・・・お前も食うか?」
「いらない。アルデバランにちゃんと作ってもらったから」
ばっちり金牛宮で朝ごはんを食べて来たはデスマスクが朝食の用意をしているのをじーっと観察していた。
別に見られて気が散るような性格でもないデスマスクはとりあえず好きにさせていた。
「お前女だろ。あいつに作ってもらうなよ・・・」
「だからこうして覚えようとしてんじゃん。僕だってホントはアルデバランに作ってあげたいしね」
だけどデスマスクの手際が良すぎて理解する前に料理が仕上がってしまう。
「あーもうもっとゆっくり作れよー。なんか何が何だかわかんないうちに出来ちゃってるし」
「そのうちゆっくり教えてやらァ。オラ、とりあえずコーヒー飲んで大人しくしてろ」
ホットコーヒーに砂糖2つとミルクを多めに寄越してデスマスクはさっさと席に着いた。
渡されたコーヒーを持っても椅子に座る。
ずずっと小さく音を立ててコーヒーを啜りながらぼんやりと何処を見るでもなく眺めて。
「・・・あー如何しよう。幸せだぁ・・・」
なんて呟く。
「ホント、僕って超良いとこに行き倒れたよね。おかげでお腹いっぱいご飯食べれるし、ベッドで寝れるし、毎日お風呂入れるし・・・アルデバランに超感謝」
「あのな、そいつは俺の前で言うことじゃねぇだろ。あいつに言ってやれ」
「うん」
「それから料理くらい覚えろよ」
「うん」
以前は考えもしなかった生活だった。
可愛らしい服に興味があったわけではないが、一応女の子だからとムウが見立ててくれた女物の服。
伸ばしっぱなしだった髪はシュラとアフロディーテに切りそろえてもらって毎朝アルデバランが梳いてくれる。
デスマスクとカノンに毎日相手をしてもらい、サガが時折機嫌を伺いに来てくれて。
嗚呼如何しようと思うほどは充足していた。
そんな時巨蟹宮に近づいてくる小宇宙を感じてデスマスクがドアの方に視線を向ける。
それに気付いたも振り返って見た。
は小宇宙を感じることが出来ないので誰が来るのかは分からないがデスマスクにはもう分かっているのだろう。
まあにも大体の予想はつく。
十中八九・・・。
、いるか?」
ばんとノックも無しに現れたのはかっぱりというかなんというか・・・カノンだった。
「わーやっぱりカノンだ。カノンかなーって思ってたんだ」
「ノックくらいしやがれ」
「ふん、どうせ誰が来るかくらい分かってたんだろ。ノックなんか必要あるか」
鼻で笑っての横に座るカノン。
「おい蟹、俺にもコーヒー」
「テメェに出すモンは何もねェ」
青筋を立てながら言うデスマスクを見て思いついたようにがぱんっと手を叩いた。
「あっ!じゃあ!!じゃぁじゃぁ!!僕がいれてやるよ!」
「「へ?」」
いそいそと椅子から立ち上がりキッチンへ向かおうとする。
それを慌てて捕まえるデスマスク。
キッチンを荒らされて堪るかという焦りの色がありありと見える。
「ちょっと待て、お前コーヒーなんかいれたことあるのかよ」
「え?粉入れてお湯入れて混ぜれば良いんだろ?簡単じゃん」
「バッ、テメ、違ェよ!!俺の家のコーヒーはそんなお手軽じゃねぇ!!」
「ていうか・・・アルデバランの出身ブラジルだろ?そんなインスタントでいいのか」
カノンの突っ込みも聞かず、尚もキッチンへ行こうとするとそれを必死で止めるデスマスク。
二人の攻防はゆうに15分に及んだ。
しかしが勝てるはずも無く・・・。
「ったく、お前は俺の家のキッチンには入るんじゃねえ!」
椅子にもう一度座らされたに向かってそう言い、キッチンに入ってこないかどうかしっかり目を光らせながらカノンのコーヒーを用意していた。
「デスマスクのけちー」
ぷーっと頬を膨らませてみるが効果はない。
それどころかカノンに突付かれる。
「あ、そうだ。カノンはなんでここに来たんだ?」
「ん?ああ、そうだ。忘れるトコだった。兄貴がお前にってさ」
ぽいっとカノンが放って寄越すもの。
「あっもしかして!」
受け取ったはいそいそを包みを広げる。
包みから顔を出したのはクッキーだった。
「なんだ、クッキーかよ」
覗き込んできたデスマスクがつまらなさそうにいう。
「これねぇ、僕がここに来て初めて食べたものなんだよなー。起きたときサガがくれたんだ」
「その時は一枚食べるのがやっとだったよな。んで元気になってきたらこいつ毎日サガにクッキー焼いてってせがむんだけどよ」
「サガ焼いてくれなかったよなー・・・代わりにケーキとか違う奴焼いてくれるんだけど、僕このクッキーが良くてさー」
喋りながらクッキーを頬張り幸せそうに笑う。
それが余りにも微笑ましくて見ているカノンもデスマスクも思わずつられ笑いしてしまいそうになる。
慌てて口を押さえたデスマスクと、慌ててコーヒーを口に運んだカノンと。
それを尻目にクッキーを食べ続けると。
「二人も食べる?美味しいよ?」
「いや、甘ェもんはちょっと」
「俺も」
「そう?じゃあ全部僕がもーらうっと」
えへ、と笑いながら次から次にクッキーを口に運ぶ。
そんな様子を見て取りあげることなど出来ないじゃないか。
どうもこのの前では毒気を抜かれてしまう二人。
ほのぼのとした時間が巨蟹宮に・・・あの巨蟹宮に流れていた。




「何・・・カノンとデスマスクとか!?」
「ああ」
「それは・・・危険じゃないのか?」
アイオリアが信じられないという顔でアルデバランを見ていた。
まあアイオリアの言うことも一理あるとは思うのだが。
「まあ・・・安全健全な友達とは言えんが・・・仲良くやってるみたいでな」
毎晩嬉しそうにその日の出来事を話すを見ていると止めることも気が引ける。
それに結局自分は構ってやれないわけだし。
そこはそれ、デスマスクのように堂々と仕事を無視できれば良いのだが生憎アルデバランはそこまで無責任でもない。
「毎日仕事が終わったら通り道ついでに迎えに行くが中々平和に過ごしているしな」
「・・・そうか。なら俺は何も言わんが・・・、気を抜くなよ」
「はは。そんなに心配することも無いだ・・・」
和やかに笑って交わされていた会話が止まる。
それというのも何故だか巨蟹宮の方で急に小宇宙が高まり始めたからだ。
噂をすれば何とやらというのか・・・。
アルデバランとアイオリアは表情を固くしてそちらの方に視線をやる。
「・・・本当に大丈夫なのか?;」
「;・・・済まん、俺も自信がなくなってきた」
一転して心配そうな表情になったアルデバラン。
物凄く様子を見に行きたそうなのが流石のアイオリアにも痛いほど伝わってくる。
「ここはもう良いからちょっと早いが休憩にしよう。アルデバラン、お前は自分の宮へ帰れ」
「!・・・だ、だがまだ・・・」
「いいから。心配なんだろう。まあ少しくらいなら大丈夫だ。彼女のことならサガも多少目を瞑る」
「・・・済まん」
慌ただしく出て行くのを見送ってアイオリアは机の上を片付け始めた。



階段を駆け下りていくアルデバランは先々の宮で発見された。
しかし皆原因も理由も分かっているので敢えて声を掛けない。
思いのほかスムーズに降りられたおかげでそんなに時間も食わなかった。
しかしその間にも小宇宙が高まりつつありアルデバランを非常に不安にさせた。
の気配が感じられないのも気になる。
一体何があったと言うのだろうか。
巨蟹宮へ足を踏み入れたアルデバランは居住区に騒がしい一画を見つける。
なにやらぎゃぁぎゃぁ騒ぐ声と小宇宙の高まっている気配。
・・・!!!」
「あ、アルデバランだー。何ー?もうお昼?」
慌てて踏み込んだアルデバランを出迎えたのは、そんなのあっけらかんとした声。
そしてテレビの前で何故だかデッドヒートしている二人の男。
「・・・な、何をしてるんだ」
「んー?デスマスクがさ、ゲーム出してきてくれたんだけど・・・」
困ったようには二人を見た。
「僕のことほったらかして二人で盛り上がっちゃってさ。つまんないなーって思ってたらアルデバランが来たって訳!ね、ね、もうお昼?じゃあ僕帰る」
とたとたとアルデバランの元に走りよってくる
二人はアルデバランが来たことも気付いていないようだ。
「・・・つまらんことで小宇宙を燃やしているようだな・・・」
はあ、と大きな溜め息が漏れる。
「僕にも後でやらせてくれるかなぁ・・・」
「まあもうちょっとしたら、或いはな。とりあえず先に昼にするか」
すいっとの手を取り巨蟹宮を後にしようとする。
それをきゅっと握り返したはアルデバランを見上げる。
「うん。・・・アルデバラン」
「何だ?」
「・・・抱っこして」
ちょっと視線を外して、少し間をおいた後照れたようにそうせがむ。
もう金牛宮は一つ下なだけだ。
だけど。
ふわりとの体が宙を舞う。
アルデバランは軽々と片腕にを乗せた。
「・・・へへ、ありがと」
照れ笑いを浮かべ、落ちないようにアルデバランに抱きついて。
「昼は何にするかな」
「何でも良いよ。そのうち絶対僕が作れるようになるから待ってて」
「ああ、楽しみにしてる」
そんな会話をしながら巨蟹宮を後にした。
ますます小宇宙がデッドヒートしている二人を残して。

「オラァ!!テメェこれでも食らいやがれ!!!!」

「ふん、蟹の攻撃なんか聞くか!!!」




そうして暫らく争った後、何とか勝利を収めたカノン。
「ははは!、見てたか!?よし次はお前と勝負だ・・・って、?」
間抜けな声を出したカノンに気付きデスマスクも振り返る。
そこにはとアルデバランが出て行ったドアが薄く開いているだけ。
勿論勝利を誇示するための相手などとっくに家に帰っていたのだった。














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即行でバランの続きを書いてる自分ってどうなんでしょう。
ていうかコレはアルデバラン夢じゃないよな!
途中までは蟹+双子弟夢だよな!!すいません。
ところでどうも親子っぽいですね、アルデバランとヒロイン。
これがちゃんと恋人にまで発展してくれるんだか些か心配であります。