ゆっくりと唇が離れた。
それはチョコレートよりも甘くて、ケーキよりも柔らかくて。
「何をするんですか」
「何って、キス?」
なによりも、驚いた風のキミの顔が可愛かった。
呆けた視線。
だけどそれは一つじゃなくて。
「・・・!?」
「・・・それ、何の真似だい?」
「ふふ。だって、初めて会ったときに彼に興味あるって言ったでしょ?」
にこりと笑い、あたしは呆けるLにするりと抱きついて見せた。
企みスウィーツ
その日、ミサのいるマンションにが訪ねて来たのはほんの偶然のことであった。
何のことは無い。
ミサはその日と共に仕事をしてたのであるが、その際スタジオに私物のアクセサリーを忘れているのをが見つけて持ってきたというだけ。
しかし捜査本部も兼ねたところであるので流石に一般人は・・・と言うことで、ミサが月とLを連れ立って彼女を玄関ホールで迎えた。
その時に初めてはLと月と対面したわけであるが。
「あーコレだね、ミサの言ってた格好イイ彼氏ってー!!」
訪ねてきた理由そっちのけには月を見てそう声をあげた。
おかげでミサのスイッチが入ってしまってえんえんと月との話を始めてしまい・・・。
「・・・女の子は二人でも姦しいんですね、月君」
「そうだな」
とにかくきゃんきゃんと喋り続けている二人を尻目にLと月は溜め息を吐いた。
すると、ふとは月の隣のLに目をつけて。
「ね、ミサ。あっちの彼氏の隣の人は?なんか雰囲気変わってるけど」
黒い髪をばさりと乱し猫背気味に突っ立っているLを興味深い視線で見ながらそう言った。
「あ、あの人は竜崎さんって言ってぇ・・・えっと月の、お友達・・・かな」
「?・・・なんでそんなに歯切れ悪いの?」
彼氏のことならば饒舌であるのにその友達のことには興味無しと言う訳なのだろうか。
「なんか変わってそうだけど面白そうな人だね」
「うん・・・まぁ・・・変わってるかな、確かに」
ミサは苦笑交じり。
一方のはLに視線を移してその風貌をまじまじと観察し始めた。
「・・・なんか見られてますね」
「そうだな。手でも振ってやれよ」
「・・・」
月の意見には従わず、Lは背を丸めて突っ立ったままである。
「ちょ、ちょっと・・・。あ、そうそう、ねぇ今日はなんで来てくれたの?」
の好奇な視線を逸らせようと慌ててミサは話題を変えた。
「あ、そうだった。ミサ、今日スタジオにアクセ忘れたでしょ。ダメだよー、貢物かもしれないけどゾンザイにしちゃ」
「もうっ、月がいるのに他の男の子に貰ったものなんかつけないもん。月が誤解しちゃうでしょ」
心配そうにミサは月を振り返る。
から見て誤解した風も見受けられなかったが、ミサは心配そうに月を見ていた。
「じゃ、アクセも渡したしあたし帰るね。話し込んじゃってごめんね」
「全然いいよー。今度どっかで遊ぼうね」
「遊ぼー遊ぼー。来月あたり空けとくから。じゃ・・・っと、そうだ」
一度踵を返しかけてもう一度ミサの方を振り返る。
そしてミサを通り越したはLと月の目の前まで来た。
その視線はLの顔を捉えている。
「あたし、貴方に興味持っちゃった。だから、次は貴方に会いに来ますね」
にこりと可愛らしい笑みを浮かべ、今度こそ踵を返しもう一度ミサに別れを告げて立ち去った。
残されたミサは呆然とその後姿を見送る。
「・・・興味・・・ですか?」
月を見てLがこれまた興味なさそうに呟いた。
「僕に聞くなよ」
「あの子可愛いのにちょっと変わってるんだよねー・・・。来るって言ったら多分来るよ」
どうする?とミサは二人を見上げるが、返事は返ってこなかった。
3日後。
「・・・本当に来るとは思いませんでした・・・」
「僕もだ」
ミサから聞いたのだろう、手に余るほどのお菓子を持っては再び件のマンションに来た。
しかも捜査本部とは関係の無いフロアの部屋に通されると言う進歩まで果たして。
それというのもが持ってきたお菓子達のおかげである。
「、ホントに行動力あるね」
困ったような笑いを浮かべて次々に箱から出されていくお菓子を皿に並べていくを見た。
「だってあたしに興味なさそうな人だもん。まずは興味を持ってもらわないとね。・・・よし、乗った」
大きな皿に乗り切らないくらいのケーキ達をもってLの前に差し出した。
「どうぞ、お菓子好きだって聞いたから調子乗って買いすぎちゃったけど」
白い机の上。
月の前にもミサの前にもの前にも置かれたケーキは一つだけ。
だけどLの前には大きなお皿にはチョコレートケーキ――それもガトーショコラやオペラ、ザッハトルテやらチーズケーキ、ショートケーキ、モンブラン、ミルフィーユ、タルト、果てはドーナツやらプリンやらゼリーやら。
そして洋菓子だけでなく黄身餡の饅頭や餡子の乗った団子、羊羹、カステラ等々。
明らかに差別じゃん・・・とミサは思ったが口にはしない。
それにLと同じだけ買ってこられてもどうせ食べ切れなかった分はLの腹に入るのだから同じであろう。
「・・・最高です。あなたいい人ですね」
心なしか目を輝かせてを見るL。
「月君、欲しいって言ってもあげませんよ」
「いらないよ」
部屋を満たしている甘い匂いに顔を顰めながらミサの淹れた紅茶を啜る月を尻目にLはそう断るとケーキを指先で摘みあげた。
そしてケーキの欠片を零しながらそれにかぶりつく。
「・・・・・・美味しいです」
表情はそのままに感想を述べる。
本当に美味しいのだろうかと思ってしまうほど無表情だが、はそれで満足で。
そのままミサ、L、月と取り留めの無い話をして居座っているうちにLの皿は空っぽになっていた。
「ごちそうさまでした」
クリームでいっぱいの指先を舐めながらLは相も変わらず無表情に言う。
「ふふっ、じゃあ次は食べきれないくらいのチョコレート持ってくるわ」
にっこりと笑って言った。
Lはの笑みにつられることもなくにこりともしなかったが、しかし喜んでいることが雰囲気で何となく伝わってくる。
そして、親指を唇に押し当てながら何かを考えるようにじーっとを見た。
「・・・?なぁに?」
「いえ・・・何だか貰ってばかりでは悪いですから・・・何かお返しを、と思いまして。それを考えているんです」
じーっとからは視線を外さずそう答える。
するとはにんまりと笑った。
そう、彼女はこの言葉を待っていたのである。
「じゃあ、お言葉に甘えていただいちゃいます」
すくっと立ち上がりはLの顔を覗き込んで言った。
「・・・?まだ、何を差し上げるか決めてなんかいませんよ」
覗き込まれたLは怯むことなくを見つめ返す。
そんな二人の視線がぶつかった。
は笑っていたし、Lは無感情。
一瞬二人の間に微妙な間が流れた。
「・・・さん?」
怪訝そうに眉根を寄せたLにはすっと顔を近付けて。
ケーキの欠片が残るLの唇に、そっと自分のそれを押し付けた。
「・・・!」
驚きにLの目が見開かれる。
それは普段のLにはあまり見られない現象である。
勿論驚いたのはLだけではない。
月もミサも、の予想外の行動に言葉を失っていた。
沈黙と驚愕に支配された空間で、僅かの間は甘く香るLの唇を味わった。
やがて。
ゆっくりと唇が離れた。
それはチョコレートよりも甘くて、ケーキよりも柔らかくて。
「何をするんですか」
「何って、キス?」
なによりも、驚いた風のLの顔が可愛いと思った。
呆けた視線。
だけどそれは一つじゃなくて。
「・・・!?」
「・・・それ、何の真似だい?」
「ふふ。だって、初めて会ったときに彼に興味あるって言ったでしょ?」
にこりと笑い、呆けるLにするりと抱きついて見せる。
「ごちそうさまでした。次回も何かお礼を考えておいてくれると嬉しいな。今度はあたしに出し抜かれないでもらえるともっと嬉しいです」
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原作きっぱり無視の方向で。
・・・えぇーっと・・・中盤でLと月が一緒にキラ捜査してたところってどっかのマンションですよね?
ホテルだっけ?もうその辺調べんの面倒くさいんで間違ってたら鼻で笑ってやってください。
L・・・お菓子好きですよね。それとこここまで異常なほど好きではないのだろうか。
まあいいや、うちのLは異常なほどお菓子が好きということにしときます(何だそれは)