既に200年以上一人であったなら。
命さえ果たせば死んでいくものだと思っていたし、まさか体を貰って蘇るなどと考えもしなかったわけで。
独身生活
「童虎様っ!!お誕生日おめでとうございます〜!!」
だからこうやっていきなり後ろから抱きつかれるとどうしていいか正直分からなかったりするわけで。
「おぉ・・・か。あんまり驚かさんでくれんかのぅ・・・」
「だって、一番にお祝いしたかったんです。シオン様に先を越されないかとひやひやしちゃいました」
そんなことがあるわけないだろうと童虎は苦笑する。
今は天秤宮で童虎と一緒に暮らしているのだし、シオンの住む白羊宮は大分下の方だ。
朝から元気だなと思いながら背中に張り付いているを見下ろして童虎はぎょっとする。
「・・・して、・・・。その格好は何じゃ?」
「あ、これ。似合いますか?」
気付いて貰ったことが嬉しかった様で、はその場でくるりと回って見せ感想を求めた。
いつもが来ているのは沙織から渡されている日本の普通の洋服である。
初めこそ沙織と似たようなドレスなんかを着せられていた。
だけどそのうちが黄金聖闘士の任務を手伝うようになったので、普通の服を着ることになったのである。
時々折を見て日本から洋服が届き、それを着ていたのだが。
今日のは濃い青のミニのチャイナドレスを身に纏っていた。
僅かに光沢のある布地には細かな刺繍がびっしりと施されており、裾は鮮やかな白い縁取りがある。
そして唯でさえ短いスカートの両側にはスリットが入っており、そこから伸びる脚は真っ白なストッキングで包まれていて僅かに見えるガーターベルトで止められている。
黙ってその服装を眺めている童虎に不安を覚えたは童虎を見上げながらおずおずと言った。
「もしかして・・・似合いません・・・?」
「・・・いや・・・そうではないが・・・。、誰に相談したんじゃ。お主一人ではそれは思いつかんじゃろ?」
「う・・・やっぱりバレちゃいますか。初めはミロ様に相談してたんですけど・・・」
ミロを選んだ理由は単純だ。
ただ隣に住んでいるから、それだけである。
シオンに相談することも考えたが、シオンは今忙しい身で邪魔をするのは気が引けた。
だから童虎がいない時を見てミロに相談に行ったのだ。
「その日天蠍宮にはにはカノン様もいらっしゃったんです。カミュ様が出張に行かれていたらしくて・・・それでお二人に相談してたら上からはシュラ様、下からはデスマスク様がいらっしゃって・・・」
どうやらデスマスクとシュラはカノンに用があったらしいがの姿を見てその話題よりもが天蠍宮にいる理由の方を聞きたがったのである。
それもそのはず、はシオンと童虎にべったりであまり一人で出歩かない。
一人で出歩いていても手を出せばシオンが異空間飛んでくるし。
だが今日は自ら進んで天蠍宮へ来たという。
シュラはともかく、デスマスクが興味を持たないはずは無かった。
『一人なんて珍しいな。何しに来たんだよ』
『童虎様の誕生日に何をして差し上げれば喜ばれるかなと思って相談に来たのです』
素直にデスマスクの問いに答える。
にこにこと屈託の無い笑顔を浮かべていた。
成る程、これはシオンと童虎が可愛がるわけだと4人は納得する。
『例えばデスマスク様なら何が嬉しいですか?』
『俺?酒か女』
しれっと言い放ったデスマスクにシュラの鉄拳が炸裂する。
不意打ちを受けたデスマスクはリビングの壁に吹っ飛んだ。
『きゃぁっ!シュ、シュラ様・・・っっ!?』
驚いたが声を上げるが、3人は当然だと言わんばかりの顔をしている。
『もっとマシな答えはないのか!彼女に変な知識をつけるんじゃない!!』
『うっせぇなァ。んじゃお前は何貰ったら嬉しいんだよ』
『む・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまん、貰って困らんというものは酒くらいしか思いつかん』
『それ見ろ!!!ていうかお前の貰って困らないもの発言の方が最低だろ。』
『くっ・・・悔しいが言い返せん・・・!』
二人の様子を遠巻きに見守っていたがやれやれとカノンがの隣に座り込んだ。
『お前は何をやろうとしてたんだ?』
『私ですか・・・うぅ・・・それが決まってたら相談しに来ませんよぅ・・・』
すると今度は反対側にミロが座った。
『それもそうだよなー。でも俺だったら誕生日一緒にいてくれるだけで何にもいらないけどなぁ』
『お前と老師を一緒にするなよ』
肩を竦め首を横に振るカノン。
しかしその後ろからデスマスクが口を挟む。
『いや、案外その線良くねぇか?誕生日だけと言わず一生貴方と一緒にいますっていう奴!!』
『どういうことだ?お前の案はイマイチ不安だが・・・』
『だからよォ、老師ってずーっとずーっと中国のシケた滝の傍に座ってたわけだろ?それこそたった一人でよ』
『・・・その言葉もう一度老師の前で言えるのかお前・・・』
しゃあしゃあと無礼な言葉を吐くデスマスクにうんざりしたような顔を向けるシュラ。
しかしデスマスクの言いたいところはそこではない。
『最後まで聞けって。とにかく表面じゃ見えなくても孤独っつうのはキツイもんだろ?それがどんなにスゲー奴でもよ。だから・・・』
『あ、俺わかった。だからが老師の傍にずっといるようにしてやればいいってことだろ?』
『ミロにしちゃ冴えてんな。その通りだぜ』
皮肉交じりに褒められたが、ミロはその皮肉に気付くことなく鼻を高くしている。
シュラとカノンも蟹にしてはなかなかいい事を言うじゃないかと頷いている。
ただ、だけは僅かに首を傾げていた。
『・・・でも・・・そんなこと勝手に決めたら童虎様に迷惑がかかってしまいますよ・・・』
『阿呆か。ンなわけねーだろ。あんなにジジィどもに猫っ可愛がりされてんのわかってねぇのか?』
ま、俺に任せろよ。
デスマスクはそういうと一度天蠍宮を出て行った。
残されたはミロとカノンとシュラに囲まれ不安そうである。
『・・・まあ、あいつの言い方はともかく・・・お前は老師にもシオン様にも可愛がられている。ずっと一緒にいると言って喜ばれることはあっても迷惑がられることは無い』
『・・・シュラ様・・・』
『老師は物より気持ちという感じだろう?そういうのでいいんじゃないのか?』
『カノン様』
『万が一ダメだったら俺が老師の代わりになってやるから!』
『・・・ミロ様、それはちょっと無理が・・・』
だけど普段あまり親しくしているわけでもないのにこうやって親身になってくれるのは本当に嬉しかった。
感動でじんわりとが温かくなっていると、デスマスクが天蠍宮に帰ってきた音がした。
その手には箱のようなものが抱えられている。
『それ、どうなさったんですか?』
『おう!これお前にやるぜ。これ着て老師に迫りゃ大成功間違いなしだ!だけど絶対当日まで着るなよ。サイズの見立ては間違いねぇから』
『?何でですか?』
『馬鹿だな、お前これ着てるとこ誰かに見つかっちまったら老師を驚かせねぇだろ?だから当日までお前も見るな』
絶対だぞ!と釘を刺すデスマスクに多少の不審感を抱かないでもなかったがは頷いた。
・・・というのがまあ大体のあらましである。
そして今日デスマスクに貰ったこのチャイナドレスを身に付け(ストッキングとガーターベルトには閉口したが、正直そんなに変な服じゃなくてほっとした)童虎の前に現れたと言うわけである。
「・・・デスマスクか。まあそんなことじゃろうとは思ったがのぅ・・・」
こんな際どい服を沙織が持ってくるはずはないと思っていたので。
「や、やっぱり皆に考えてもらうのは反則でしたか・・・?」
恐る恐る童虎を見上げつつ不安そうな表情を見せる。
「・・・・・・よい。なかなかに良い案を考えてくれたようじゃからの。お主をずっと儂の元へ置いておくというのは良い案じゃ」
穏やかに笑いながら頭を撫でられての頬に赤みが差す。
一生傍に置いてくれるということは、なんだか遠まわしにプロポーズでもされているようで。
嬉しいような照れくさいような。
「じゃが・・・」
「は、はい?」
「はイマイチ詰めが甘いのう」
そう言って童虎は少しだけ屈んだかと思うと、ひょいっとを抱き上げた。
「甘い・・・ですか・・・?」
「あの小僧共の裏の狙いを気付いてはおらんな?全く、だから利用されるのじゃ」
「ええっ・・・利用・・・ですか・・・?」
抱き上げられた真意も分からずただただきょとんとするばかり。
童虎はを抱き上げたまま寝室に移動する。
ベッドの上にを寝かせにやりと笑ってこう言った。
「あの小僧共は金のかからん一番楽な、その上一番儂が喜ぶものを寄越したのじゃよ」
「・・・え、っと・・・それってもしかして・・・」
今ここで、この体勢。
必要以上に腕やら足やらを出したこのチャイナドレス。
「もしかして・・・私・・・」
「正解じゃ。・・・ところでシオンも儂に今日は休みをくれてのぅ」
「え」
「今日は存分にお前を頂くとしようかの?」
にこりと笑った童虎の手が素早くの腕をベッドに縫いとめる。
ぎしりとベッドが軋んでは表情を硬くした。
「ど、童虎様・・・まだ朝ですから・・・」
「ほっほっ、儂は気にせんよ。どれ、じっくり可愛がってやるからの」
「あーん!!デスマスク様の馬鹿ぁぁぁっ!!!」
「これ、ベッドで他の男のことなど考えるでない」
そう言って童虎はの唇を優しく己の唇で塞いだ。
彼の誕生日は、まだ始まったばかりである。
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間に合った。間に合ってないけど間に合った(どないよ)
エロい事をする前にはまずエロい服装。そしてチラリズムは欠かせません。
動くだけでいちいちパンチラするような服装萌え(←変態)
ところで童虎誕なのに全然童虎が出てきませんとかいう突っ込みは勘弁してください・・・。