空が泣いて泣いて泣いて。
ポロリ、ポロポロリ。




野良犬






折角良かった天気は昼頃から暗くなり始めていた。
嗚呼、この分じゃきっと家に帰るまで持たない。
勝手に家を飛び出した罰だろうか。
雨は嫌いだ。
自慢の尻尾が水分を吸って重たくなるし。
家が無かったあの時代を思い出させるんだ。





ざーっと窓の外で空の泣く音。
「あーぁ・・・結局帰ってこなかったな」
一人きりの部屋で呟いた。
誰かが聞いているわけでもない、薄暗い部屋で。
些細なことで、喧嘩した。
いつもなら背中向けて終わるのに、今日は出て行ってしまった。
こんな雨の日に拾ったウィンディ。
雨に濡れるのをとても嫌がっていたのに。
迎えに行ってやろうかなと考えて、止めた。
鍵は渡していない。
もし探しきれなくて入れ違いになったら可哀想だ。
さっきまであんなに怒っていたのに、雨が降ってきただけでそんな風に考えが変わる自分に苦笑する。
「・・・お風呂だけ沸かしておいてあげよっかな」
きっとズブ濡れで帰ってくるだろう。
いや、でももしかしたら帰ってこないかもしれない。
拾ったとはいえウィンディを飼っているつもりはなかった。
ねぐらを与えてやっただけだと言っても過言ではない。
晴れの日はふらりと出掛け、時折傷ついて帰ってきたりする。
そして大人しく言われた通りに風呂にだけ入って、同じベッドで適当に寝る。
時々気が向けばセックスして。
一緒に食事をしたことだって数えるほどだ。
一応フードの用意はしてあるが、滅多にそれが開けられることは無かった。
だからこのまま帰ってこなくても別段驚きはしないだろう。
ただただ少しの寂しさが残るかもしれないがそれもまたすぐに忘れる。
そんな細い糸のようなもので辛うじて繋がっている関係だ。
愛情なんて高尚な物で繋がっているつもりはお互いに全く無かった。
だけど何処かで帰ってくるのを待っているかのように、風呂を沸かす。
多少の矛盾を気付かない振りで誤魔化しながら薄暗い部屋でぼんやりと淀んだ空を見る。



空が泣いて泣いて泣いて。
ポロリ、ポロポロリ。



結局帰るまで間に合わす、雨に濡れた。
帰ることに戸惑いもあったけど、こんなの初めてじゃない。
他人同士、そう結局他人同士なので喧嘩くらいする。
居候の身で勝手なことをしたなぁと反省もした。
気に入らなければ出て行けばいいのだ。
もともと飼われているつもりは全く無い。
ただ居心地がいいからあの家にいるのだ。
食事を貰うわけでもなくただただ寝に帰るだけのあの部屋が。
だけど戦いたいだけだった自分がようやく居場所を見つけたと思っていることは気付かないことにしている。
――『アナタはオレのイバショです』
どうしたって自分にはそれを押し付ける権利は無い。
だって飼われていないのだから。
それ以外に繋がる術も知らないのだから。
既にびっしょりと濡れているために走ることも諦めてねぐらに向かいとぼとぼ歩く。
重い尻尾がだらりと重く垂れていた。
そしてやや歩けば、今のねぐらであるマンションにたどり着く。
まだ怒っていたらどうしようかなと思いながら、ドアを開ける。




「・・・あ、。・・・おかえり」

「・・・・・・・あぁ」




ただいまと言うのは不適切な気がしてそんな返事を返す。
思ったよりも怒っていないようだと安堵なんかしてみたりして。
「あーちょっと待って。それで入ってこないで。ほら、拭いてあげるから」
「悪ィ・・・」
ごそごそとやや乱暴に頭を拭かれた。
時々タオルに強く擦られる耳が痛い。
だけど何も言わなかった。
「・・・
「・・・何よ」
「悪ィ」
「・・・いいよ。あたしも・・・ごめん」
言いながらの服をゆっくりと脱がせた。
水を随分吸って重くなっている。
そのまま置くわけにもいかないので、ドアを開けて玄関先でぎゅうっと絞ってみた。
面白いくらい雨が服から絞られて落ちていく。
「・・・大分降られたのね」
「ああ」
「下も絞るから脱いで。お風呂も沸かしてあるよ。下着は籠に入れておいてね。絶対に床に置いといちゃダメだよ」
の言葉にこくりと頷くと、おもむろに下を脱いで寄越した。
既にこれくらいのことで照れたり動揺したりするような仲なんかじゃない。
だけど僅かに鼓動が早いのは何故だろう。
ぺたぺたと足跡をつけながら風呂場へ向かうを見送って、のズボンをぎゅっと絞った。
上の服と同じようにぼたぼたと盛大に雨を絞り落として玄関のドアを閉じて。
さっきまでを拭いていたタオルで残された足跡を拭く。
微かに風呂場の方からざあざあと、シャワーの音が響いていた。
誘われるようには風呂場のドアを開けた。
風呂場の端にある洗濯機にぽいぽいとの服を放り込む。
そしてはほぅっと溜め息を吐いた。
「・・・もう、帰ってこないかと・・・思った」
だけどは帰ってきた。
それに異常に安堵してしまう。
『もう帰ってこないかもしれない』
それはきっとこれから先もずっと続いていくであろう事柄。
ではこれからも自分はこんな風に言い知れない気分に苛まれるのだろうか?
湯気で曇っている浴室のすりガラス。
その向こうを見るかのような遠い目での姿を探す。
すりガラス越しに微かにオレンジの髪が見えて。
それでもいつかこの姿が此処から消えるような日が来るのだろうか。
「・・・ヤダな・・・そうなったら」
思わず呟いた言葉。
しかし驚くことなどなかった。
だってそれはいつもいつも見て見ぬ振りを、気付かない振りをしてきた本心で。
心の中を雲で覆って。
淀んで見えないようにして。
そして雨で更に覆い隠して・・・。
誰にも、自身にすら見透かすことが出来ないようにして仕舞い込んできた本心だから。
そうっと浴室のドアに手を伸ばした。
相変わらずざあざあと音をたてるその中にはいる。
まだ、いる。
―――がたん。
思い切り開けたら驚いたように振り返ったと目が合った。
「なっ・・・」
目に見えて動揺している
対して妙に冷静な
「あたしも入る」
「何でだよ?俺が終わるまで待てばいいだろ・・・」
「待てないもん」
そして服のまま浴室に入り、後ろ手にがたっとドアを閉めた。
服が直ぐに湯気を吸い、熱く湿っていく。
そうっとに手を伸ばした。
そして背を向けているは抱きついて。
「・・・もう、もう帰ってこないかと思った」
・・・」
涙声で訴えた。
の体の水分が服に吸われて濡れていく。
浴びていたシャワーの飛沫もをうつ。
ああ、さっきの濡れて帰ってきたの様な。



空が泣いて泣いて泣いて。
そして私も泣いて泣いて泣いて。
ポロリ、ポロポロリ。



とりあえず浴室ではちゃんと話が出来ないから、とに宥められて浴室を出た。
勿論も一緒に。
が濡れた体を拭いている横で、は今しがた濡らしてしまった服を脱ぎ洗濯機に放り込んでいた。
無防備に白い肌を晒すの体を見てもどきりとする。
別にの体を見るのは初めてではないのに。
シャワーの飛沫でしっとりと濡れた髪がの首筋にはりついている。
そして僅かに上気したような頬と、少し涙目なはなんだかを変な気分にさせた。
二人して殆ど裸のままリビングのソファに座り込む。
お互いに目のやり場に困るような格好だったけれど。
「・・・なんで帰ってきたの」
ぽつりとが呟いた。
それに対しては困ったような表情で返す。
「それ・・・帰ってこない方が良かったような言い方だな」
「そういうことじゃなくて」
何故帰ってきたのかその理由が聞きたくて。
「・・・もう帰ってこないかと思った。だってあたしのこと飼ってるわけじゃないし」
「俺も飼われてるつもりはない」
「だから。どうして帰ってきたか教えて?」
上目に強請るようにを見上げた。
の問いには答える術が無い。
飼われたいわけじゃない。
本当は対等という立場でここを居場所にしたい。
だけどそれをに押し付けることも出来ない。
気持ちが言葉に、ならない。
こういう気持ちをいったい如何示せば良いのだろうか。
「ねぇ」
急かされては焦った。
「・・・何て言えばいいのか」
真実分からなくて視線が泳ぐ。
するとは急にの膝の上に乗った。
「じゃあ、シよ」
「え・・・?」
唐突にいったい如何言う事だろう。
しかしは敢えて断らない。
だってそれは今の自身の気分を端的に表しているような気がしたから。
言葉にならないのなら、いっそ本能に忠実に体で示せば・・・と。
どちらからとも無く、そっと唇を押し付けあった。
柔らかい感触に堪らない気分になる。
「んっはっ・・」
が甘い声を漏らしながら体を押し付けてくる。
しっかりと抱き合うように腕をまわしあって。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
荒い息で角度を変えながらたっぷりと口付けあった。
・・・、もっと」
熱っぽい声で名を呼ばれて求められる。
嬉しいような興奮するような色めいた気分が沸きあがり、もう一度の唇を吸った。
キスの合間にそっとの胸を手で覆う。
ふっくらとしたそれを優しく揉みしだくとの腕に力が篭るのが分かる。
「んっふ・・・は、ぁ・・・」
滑らかな肌がの掌に吸い付いてくる。
夢中で唇を交わしながらは指での尖り始めた乳首に軽く触れた。
「んんっ・・・ぁ、ふ・・・ぅ」
気持ち良さそうなの声で下半身が熱くなる。
既に半勃ちになっていることはばれているだろう。
そっと唇を離し、の目を見る。
「・・・、悪ィ。なんか手加減出来そうにない」
「イイよ。好きなだけシて」
その言葉には噛み付くようにの首筋に顔を埋めた。
仄かに甘いようなの髪の匂いがする。
「っん・・・」
そのまま首筋に舌を辿らせながら続けて胸を愛撫した。
ぷっくりと勃起した可愛らしい乳首をぐりぐりと強く捏ね回す。
「あっあっ・・・」
僅かにが身じろぐが、はそれを押さえつけ執拗に胸を愛撫した。
そっと円を描くように乳首を押しつぶし、そんな刺激で敏感になってしまったそこを舌で弾く。
「はぁんっ・・・!」
そうすると少しだけ背をしならせての頭を腕で抱きしめた。
もっとと強請るように胸を押し付けられて、ますます舌が乳首を意地悪く捏ねる。
ちゅ、と音を立てて軽く吸われ唇で扱かれて。
ねろねろと唾液を絡めた舌でねっとりと舐められた。
「ふは・・・・・・ぁあ・・・イイ、っ」
思わず腰が揺れて、は下半身をの足に擦り付けてしまう。
しっとりと湿っていることが下着越しに良く伝わってきた。
、もう濡らしてる」
「いや、ぁ・・・ダメ、言わないで・・・」
恥ずかしそうに俯くが可愛らしくて。
もっと苛めてやりたいとは思い。
「なぁ、
「なァ、に?」
そっとの手を取り、は自分の勃起したモノを触れさせた。
「扱いてくれ」
「・・・っ」
耳元で請えば、ふわっと頬を赤くしながら小さく頷いてくれた
恥ずかしそうに硬くなった男性器を握りこむその姿に堪らなく欲情してしまう。
「あ、れ。まだ何もしてないよ」
少し膨らんだソレを感じ取っては不思議そうに言った。
視覚だけで思わず膨らませてしまったことには困った表情を浮かべる。
「いいから、早く。・・・頼む」
最後の一言が少し期待に上擦っていた。
なんてイイ声なんだろうとは思う。
耳に入るだけで劣情を誘うような色を含んだ声。
これならどんな女でも簡単にやられるんじゃないかと不安になるほどの。
―――にちゅ。
は言われたとおりのモノを握って手を上下に動かした。
その度ににちゃにちゃと卑猥な音がして堪らなく恥ずかしい思いをした。
「っ、もっと・・・強く・・・」
「うん・・・」
言われるままに擦る。
痛くないのか心配だったがが少し苦しそうに眉を顰めて目を閉じているその表情が物凄くいやらしかったので、きっと気持ちいいのだろうと思うことにした。
は徐々に荒くなってくる息を何とか抑えて。
時折薄く目を開いてを見た。
頬を赤らめて一生懸命自分の勃起したモノを擦っているその姿は、見ているだけで射精できそうだと思った。
「っは・・・もう、いいぜ。出ちまいそ・・・」
ねとねとと鈴口から透明な粘液を零しながら反るほど勃起したソレからの手をやんわりと外す。
そして下着越しにの秘部に触れた。
「さっきよりもぬるぬるになってるな。俺の触って感じた?」
「やっ・・・そんなんじゃ、ない・・・っ」
真っ赤になって首を振るは、にはとても可愛らしく見えた。
思わずぐいっと抱き上げてソファに押し倒してしまうほど。
「きゃ・・・っ」
突然の行動には声を上げる。
はそんなの足をぐいっと持ち上げて肩にかけた。
目を落とせば下着の中心の色が変わっているのが良く見えた。
それに指をぐりぐりと押し付ける。
「大分、濡れてるようだな」
「あぁっ・・・やぁ、ンっ・・・」
ふるふるとはいやいやをする。
「ん?嫌か?じゃぁ・・・」
にやっとは少し笑って、の愛撫により大きく膨らんだモノを指の代わりに押し当てた。
そしてそのまま軽く腰を動かして、下着越しにの割れ目をぐりぐりとなぞったり尖り始めた芯を先端でつついてみたり。
「コレはどうだ?」
意地悪い質問。
勿論に答えられるわけも無くて。
ただただ沈黙で睨み返すだけ。
だけどの先端がの芯を刺激するたびに喘ぎと共に声が漏れた。
「はっあ、あぁっ・・あン、はぁはぁっ・・・もうっ、・・・っやめ・・・っ」
擦り付けられたのモノから滲む粘液や、自らが溢れさせている愛液での下着はもう只の濡れた布になっていた。
・・・っ、ね、もぅ、意地悪しないで・・・っ」
懇願するようにが言うとようやくも腰を止めた。
そしてゆっくり焦らすようにの下着をずらす。
はそっと指先で花弁を押し広げてみた。
ピンク色に充血してぴくぴくとを待つ小さな口。
無意識に喉が鳴った。
「・・・挿れるぞ」
そっと先端を押し当てずぶりとぬかるみに勃起を埋める。
「ひァんっ・・・!!」
―――グジュっ
卑猥な水の音をさせてがじんわりと埋まってくる。
きつい圧迫感を感じては顔を顰めた。
ずるりと内部を抉るの感触は苦しいけれどすごく気持ちがいい。
もう知られているのだ。
何処で如何感じてしまうかを。
「はぁはぁっ・・・、あっイイ・・・っイイのォ・・・っ!」
自由な方の足をの腰に絡めて腰を浮かせた。
求めるようなの仕草にも応える。
の腰を抱き上げずぶっと深く押し込んでやった。
「あぁぁっ・・・すご、イイ・・・っ!!」
ずんっと奥を突き上げられては頭を振って悦んだ。
「・・・っ、・・・」
ぴくぴくと噛み付いてくるの内壁を感じながらは軽く腰を動かした。
ソファが狭いためどうにもこうにも焦れったい動きになってしまう。
「はぁっはぁっ・・・、もっと、もっと激しくしてェ・・・っ」
焦らされて堪らなくなったが声をあげた。
かくいうも焦れったくておかしくなりそうで。
そこで繋がったままを抱き上げてソファの横にあったテーブルの上にを下ろした。
ソファよりも幾分余裕が出来、の顔を横にダンッと肘をついての首筋に顔を埋めながら性急に腰を動かした。
机を揺らしながら激しく打ち付ける。
「あっあぁぁっ!!イイっ・・・気持ちイイっ、あはぁぁンっ」
ようやく心待ちにしていた刺激の波が二人を覆い、スピードを上げて高められていく。
「あっああぁっ、・・・ァあっ」
・・・ッ」
、ダメぇ、あっ、イッちゃうぅ・・・っあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
びくんとの体がしなった。
いつもより随分早い絶頂だと思った。




その後、がイくまで付き合って二人してソファでぐったりと寝転んでいた。
下に、その上にが寝そべっていて。
窓を見れば雨は何時の間にか上がっているらしかった。
だけど空は曇ったまま。
しかし裏腹、の気分は少しずつ晴れ間が差し込んでいた。
「・・・好き、なの。が。・・・何処にも行かないで」
さらりとのオレンジの髪に触れながら言った。
包み隠してきた本心だ。
にも自分にもばれないように。
「行かない。を一人にはしない」
「・・・本当?どうして?」
「・・・」
ああ、成る程。
こういうことを好きというのか。
あの雨の日。
捨てられたあの日からずっと忘れていたこの気分は。
「・・・が、好きだから」
「・・・!」
ぎゅうっとに抱きついた。






気分が晴れてくる。
空が泣いて泣いて泣いて。
そして私も泣いて泣いて泣いて。
だけどその後に見えるのは透き通った青い空。







========
と、言うわけで。
奈々様リクエストのウィンディ夢です。
もうエロが書きたいだけか、俺は。内容ペラペラなうえに強引な展開・・・すいません・・・。
今回はトレーナーではありません。
宿主と泊めて貰っているだけの基本は野良犬みたいな。ウィンディの設定細かいな・・・。
野良犬に犯される宿主様。萌え!!←自分だけ萌えてどうすんだ。
しかも愛はあるくせに二人とも素直じゃなくて愛を認めない体だけの関係だと思ってるんです。萌え萌え。