気配
「サガ・・・ずるい」
「?何がだ、」
隣でぷいっとそっぽを向く少女の肩に腕を回し、腰を屈めて視線を合わしながらサガは問うた。
「昨日、あたしがサガのこと驚かそうとしたでしょ?
「そうだな。それがどうかしたのか」
それは丁度24時間ほど前のこと。
がそうっとそうっと双児宮に入ってきて、新聞を読んでいたサガに『わっ!!!』と言って抱きついた。
それは勿論驚かせてやろうというの悪戯心からだったのだが・・・。
サガは驚くどころかを確認するとにっこり笑って。
『良く来たな。今日はお前の好きなケーキを買ってあるんだ。直ぐにお茶を淹れよう』
などと言って見せただけ。
全く動じないサガにちょっとがっかりした。
まあサガは大人だし聖闘士なんだからこれくらいじゃ動じないんだろうな、とその時は納得したのだ。
「でも今日カノンに聞いたらね、そんなの小宇宙感じりゃ誰かくらい一発で分かるっつーの・・・って言われたの!」
「だから?」
「だから!ずるい!!ちょっとした悪戯も出来ないなんて!!」
別にそんなことしなくてもいいじゃないかと思ったが、口には出さない。
それにこうやって拗ねる様子のがまた可愛くて自然に口許が緩んでしまう。
「あー、ほらまたそうやって笑う!どうせ子供だもん!!まだ15歳だし!」
「別に子供と思っている訳ではないぞ?ただお前があんまり可愛いからな」
肩を抱き寄せる腕に力を込めながらそっと耳打ちすると僅かに頬が染まった。
サガからの賛辞にいつまでも慣れることが出来ない。
ますます可愛く感じて、思わず抱き上げ膝に乗せた。
はサガに後ろからゆったりと抱かれる格好になった。
「それにな、私はの小宇宙を意識して探しているんだ。可愛いお前が何処かに行ってしまわない様に。だからすぐにだと分かってしまうんだよ」
そっと腰を抱きながら優しい声でサガはに言った。
甘い言葉には眩暈を感じるほど照れてしまって。
「っ・・・サガ、なんでそういうこと恥ずかしげも無く言えるのっっ・・・!!」
真っ赤になりながら頬を両手で押さえる。
「うん?を愛しているからに決まってるだろう?」
「やーっ!!!ばかばか!!!それが恥ずかしいって言うの!!!」
もう言わないで!
と言われサガの口許がにやりと歪む。
「それでは私の口が使えないようにキスしてくれるか?」
「えっ・・・」
予想外のサガの言葉には固まった。
自分からサガにキスなんてしたことがない。
「ふふ、しないならいつまででもお前に愛を囁いてやるぞ?」
「そ、それは・・・恥ずかしいからやめて」
「では、キスを」
「うぅ・・・」
求められるのが嫌なわけではないのだけれど、それってもっと恥ずかしいんじゃ・・・。
まんまと踊らされているような気がしてならないだった。
しかし意を決してサガの方に向き直る。
「キスしたらもう恥ずかしいこと言わない?」
「ああ、約束しよう」
「・・・」
サガはにこりと笑みを浮かべてそう言った。
嘘を吐かない人だということは知っている。
はそっとサガに顔を近付けた。
綺麗な顔だ。
こんな人が自分の恋人だなんて嘘みたい。
だけど。
「っ・・・」
柔らかく唇に当たる感触は、紛れも無く本物のサガのもの。
そっと触れたのを確認してが離れようとしたときだった。
「っ!?」
ぐっと頭を押さえられて、離れることが出来ないようにされてしまって。
「んっ、ちょ、サガ・・・んぅ・・・っ」
きつく抱きしめられながらサガの唇が角度を変えてもう一度を奪う。
「ふは・・・っ」
そっと唇を抉じ開けられ舌先が触れ合って。
柔らかな感触にはぎくりとした。
「や、んン・・・っ」
抵抗するかのように漏れた拒否の言葉も無理矢理飲み込まされる。
ちゅ、と小さく音を立てながら唇を軽く吸われてぞくりと震えて。
絡め取られた舌からサガの味が伝わってきた。
「は、ァ・・・んンぅ・・・っ、ふ」
飲み込みきれなかった唾液がの顎を伝うのを目ざとく見つけて、そっとサガは唇を離し舌先でなぞるように舐め取ってやる。
ようやく離れたサガ。
「ちょっと・・・!何するのよ・・・っ」
真っ赤になって睨み付けるも、既に奪われた後であれば負け犬の遠吠えと変わりない。
対するサガは別に何事も無かったかのようである。
「キス、だろう?」
「あ、あんなのっ・・・反則!」
「ふふ、感じてしまったか?」
意地悪く笑ったサガがぎゅうっとの腰を抱きしめた。
「やっ!そんなこと・・・っ」
「そんなこと無いかどうか・・・確かめてみないと分からないだろう?」
そういってサガはのスカートの上から太股を撫でる。
「ヤダ!!こんな明るいうちから・・・っ」
いやいやと首を横に振りはサガの腕の中から抜け出そうともがく。
しかし所詮は普通の女の子、サガは黄金聖闘士。
敵うはずも無く。
「が可愛すぎて夜まで待てんのだ。いいだろう?」
「良くない・・・!」
しかしサガの手は止まらない。
ぷつんぷつんとのブラウスの釦を外してしまう。
「や・・・やだ」
「何故?綺麗だぞ?・・・」
そう目を細めて言ったサガがのブラウスを引き下ろそうとした時・・・。
悲劇は起こった。
――――ダァァンっ・・・!
「えっ」
物凄い音がしてとサガがそちらを見た。
双児宮のリビングのドアのところである。
そこには・・・。
「いってぇ・・・おいっ!だから押すなって言ったんだよ!!!」
「るせぇ。見えねェんだから仕方ねーだろ」
「どうでもいいが、早く退けよ。重いぞお前等」
と、どうみても今来たばかりとはいえない面々がいた。
因みに上からミロ、デスマスク、カノン。
一瞬呆気にとられていたとサガであったが。
はっとは気付く。
・・・覗かれてたんじゃん。
その事実に気付いたは物凄く怒った表情でサガに向き直った。
「っっ!!!なんであたしの小宇宙は探れるのに他のは気配すら感じないわけ!!!!最っ低!!!!!」
「いや、それは誤解だ、思わずに夢中になって・・・」
珍しく焦ったように言い訳をするサガ。
しかしは聞いていない。
「もう知らない!!あたし帰る!!!」
ブラウスの前を押さえ、サガの腕から一瞬で抜け出した。
勿論それに気付いたサガがを捕まえようとしたがするりとすり抜けられてしまった。
はドアのところにいる3人の横を脇目もふらずといった感じで通り抜けると双児宮を出て行った。
「・・・」
「あーあ、振られちまった」
「もうちょっと面白いことしてると思ってたがな。案外普通だったな」
「ていうかマジで退け、お前等」
好き勝手言っている面々。
しかし言った後で気付いた。
・・・サガの髪が黒い。
「・・・き、貴様等ァァァ・・・」
ぎらりと凶悪な視線が3人に向けられる。
ヤベェ。
3人が一様に思ったときにはもう遅く。
「・・・覚悟は出来てるんだろうな・・・」
にたりとサガは凶悪に笑った。
そしてその日。
双児宮が異次元に吹っ飛んでなくなってしまったということで、は家にサガを泊めることになったとか。
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ありがち落ちですが。
白サガは基本的に天然意地悪だと思います。
優しいのに何故か意地悪いの。
黒はいじめっ子だけどヘタレ希望。