罪作りの午後
そりゃ時々は、女の子の格好もしたくなる。
「ねぇ、クロム。どうかな、これ」
は髪を下ろして、淡い桜色のワンピースを着ていた。
これは二人だけの時々の楽しみ。
生まれ付いての美貌の所為で、実の親に虐待を受けたり誘拐されそうになったりと色々忙しい恋人の為にクロムはに男の格好をしろと言った。
効果はテキメンだった。
もともと顔立ちの綺麗なは「綺麗な男の子」と言う風に見えたようだった。
だけど、元々は女の子である。
時々は女の子の格好もしたくなるので、偶に女の子に戻ることにしていた。
「・・・似合うぜ。まあお前は何でも似合うよな」
「ふふ、クロムに褒められると嬉しい」
やっぱりスカートを履くと女の子に戻ったような不思議な気分になる。
久しぶりに化粧もして、ランチを食べにクロムと出掛けることにした。
街中を腕を組んで歩くのは新鮮で楽しい。
いつもは女の子が振り返るけれど、今日は男が振り返る。
それはどちらかというとをいい気分にはしないものの、クロムが傍にいるという安心感を強く感じさせる。
「流石にお前目立つよな」
「そうかな。ねぇ、あのお店にしようよ」
が指を差した先はオシャレなカフェ。
窓を覗くと沢山のカップルであふれていた。
「俺は別に何処でもいいぜ」
事実が喜ぶのであればクロムは何でもいいと思っていた。
口には出さなかったが。
クロムの手を引き、はそのカフェのドアを引いた。
その瞬間。
「!」
ドアの向こうにも、そのドアを開けようとしていた人間がいたらしい。
が自ら開けるより早くドアが開いたのだ。
「あっ、申し訳ない!」
「いっ、いえ・・・!」
当たりはしなかったがビックリした様相のを見て、ドアを開けたらしい男は謝りながら先に出てきた。
「チッ、気をつけろよな」
「クロム!!」
口の中で毒づいたクロムをたしなめて申し訳無さそうにしている男には軽く会釈をした。
「大丈夫ですから」
「ああ、いえ、当たらなくて良かったです」
恐縮したように男は行って、その場を立ち去る。
これがきっかけでお詫びに茶でもなんていうことを言い出したら有無を言わさずシメるつもりだったクロムは男の背を睨みつけるに留まっていた。
「ああ、美味しかった」
は満足そうである。
家を飛び出してからというもの、は明るくなった。
経済的にはどちらかといえば不安定だったけど、それでも満ち足りていた。
「さて、ちょっとぶらぶらしたら帰るぜ」
「そうだね」
久々に可愛い服を着て、美味しいものを食べて、クロムと過ごせた。
今日のデートは非常に満足だった。
「あ、みてクロム。獣型の時のポケモンの服だよ」
ちんまりとした四足用の服。
イーブイやビッパみたいな小型のポケモン用のようだった。
「可愛いね。クロムも弟か妹みたいな感じでもう一匹欲しくない?」
「いらねー。チビにお前とられたくねーし」
ふいっとクロムがそっぽを向く。
「あ、待ってよ」
ふらっとクロムが店の前を離れる。
それを追う。
・・・そしてそれを追う男がいた。
クロムはさっきから気になっていたのだ。
ちらちらを見ている男がいる。
が移動したらほいほい追いかけて来やがった。
念のため足を止めてみる。
「ふふ、クロム。手繋ごうよ」
「・・・ああ」
柔らかいの指がからまる感触は大好きだった。
そして横目に後ろを伺えば、やはり男も足を止めている。
本当ならば先に一発食らわせてやりたいところだが、何もしてきていない人間に危害を加えるのはやめてとに釘を刺されている。
確かに先に手を出した方が悪者になる事の多い昨今、の言う事を聞いている方が得策だと思えた。
手を繋いだまま歩き出せば後ろの男も移動する。
「・・・ね、どうかしたの?」
流石にピリピリしているクロムを変に思ったが顔を上げる。
「・・・ついて来てるヤローがいンだよ」
え、と一瞬振り返りそうになるのを堪えて、は小声で聞いた。
「どんな人?」
「・・・さっきお前にぶつかりかけたやつ」
「え・・・」
と、言われてもちゃんと相手を見てなかったから全然顔も服装も覚えていない。
よくクロムは覚えていたなぁとちょっと感心すらしてしまう。
「・・・何か怒らせちゃったかな」
「大方あの時にお前に一目惚れでもしやがったんだろ」
「・・・そんな・・・」
そこまで自惚れが強くないは控えめに否定的な声を出した。
「まあ声さえ掛けてこなけりゃいいんだけどよ」
「そう、だね」
は少し心配そうである。
こりゃ早めに帰ったほうが良さそうだ、とクロムは足を速めていた。
しかし、コトはそんなに簡単には終わらなかったのである。
宿に戻ると床には一通の封筒が落ちていた。
「・・・なんだコレ」
恐らくはドアと床の隙間から滑り込まされたのだろうと予測する。
クロムが拾って封を開けた。
「・・・」
「ねぇ私にも見せて」
クロムの横からが覗き込んでくる。
そこには。
「・・・なに、これ」
手紙の文章を少し読んだの表情が一気に強張る。
要はお前を父親のところに連れ帰る、という内容だった。
「あいつ・・・まだ懲りてねぇのか」
「・・・お父さん」
どうやら誰かを雇ったらしいのだが、もしかしてそれがさっきの男だったのだろうか。
結局何処までも付いて回る父親の影。
それに怯えて暮らすのなんかまっぴらである。
だが現実はを平穏の海へとはなかなか推し進めてはくれないようで。
さっと血の気を失うを、クロムはきつく抱き寄せた。
体に覚えこまされた恐怖に少しだけは震えている。
「心配すんな。俺が守ってやるよ」
「・・・う、うん・・・」
そう、あの深淵から助けてくれたのは目の前のクロム本人である。
守ってやる・・・その言葉は確かな説得力での心を包み込んだ。
「その内忘れさせてやる」
だから、との顎を掴み、クロムが唇を押し付けた。
「ン・・・」
柔らかな唇が触れ合って温かな吐息が交じり合う。
ちゅ、ちゅ・・・と唇や頬、こめかみにも何度もキスを落とし宥めるように背中を撫でた。
「クロム・・・」
うっとりしたような表情でクロムを見上げる。
この表情は何時見ても処女のようでとても可愛くうつるのだ。
「可愛いぜ、堪ンねぇ」
欲の炎を湛えた瞳でに囁くと、その細い体をベッドに放り投げた。
「あン!」
乱暴で性急な、いつものクロムのやり方だ。
ベッドに着地した体が、衝撃で僅かに弾む。
そして捲れたスカートを直す間もなくクロムが体を重ねてきた。
二人分の体重にぎしっとベッドが悲鳴を上げて、二人の体がシーツに沈み込むのだった。
「。愛してるぜ」
そういえば父親も同じ事を言ったっけ。
言われる相手が違えばこんなにも気持ちよくて安心するのだ。
「私も・・・」
クロムの背中に腕を回し、どちらからともなくキスを交わした。
くちゅくちゅと柔らかく唾液が絡む音が響く。
舌を愛撫されると蕩けていきそうな気分になる。
「ン・・・ふ、んっんっ・・・」
小さな吐息を漏らして、何度も角度を変えながら唇で愛し合う。
時折僅かに離れて、でもまた唇を押し付けあって。
ようやく離れた時にはは誘うように瞳を潤ませていた。
綺麗な顔が、妖艶な色気を放つ美貌に変わる瞬間である。
「あ・・・」
クロムはワンピースの背にあるファスナーを一息に下ろして、するりと肩から引き下ろした。
男装していても下着だけは普段から女物。
の見慣れた夜の姿なはずなのに、何時も何時も違う色気でクロムを誘うのだ。
体重をかけ逃げられないようにして、まだ腰の辺りに纏わり付いているワンピースの裾から手を入れて太股を撫でる。
「ンっ!」
ぴくんと長い睫毛が震えた。
すべすべとした滑らかな足を緩やかに撫でる。
「ああ・・・やァん・・・」
くすぐったいような感覚には少しだけ身じろいだが、更に何度も啄ばむようなキスをすると大人しくなった。
そのままクロムは手を胸の上に滑らせる。
下着に包まれた膨らみを揉みしだき隙間から、そっと手を滑り込ませた。
「っぁ・・・」
尖り始めた乳首を摘み上げられ膨らみを捏ね回される。
柔らかく弄ばれては頬を赤く染めて目をきつく瞑った。
「・・・気持ちイイか?」
低く掠れた声で聞かれて余計に体が熱くなる。
愛しいクロムが自分の体に欲情している事実を付きつけられたようで、恥ずかしいのに興奮を感じてしまって。
「そんな・・・分からな、い・・・」
「嘘付け。こんなに勃ってるぜ」
言いながら柔らかな唇が赤く膨らんだ乳首に被さる。
「はァ・・・っあ、ンン・・・っ」
指ではなく、舌で弄ばれてきつく吸い上げられると痺れるような甘い疼きが走って腰が動いた。
ぷちゅぷちゅとわざと音を立てて含まれている。
なんていやらしい動きなんだろう。
「・・・へへ、感じてんだろ?腰が誘ってるぜ」
「やっ、ばか・・・っ!」
恥ずかしくて、両手で顔を覆う。
そうしたらクロムが体を離してしまった。
温かな体温が消えて一瞬不審に思う。
「・・・え、クロム・・・?きゃぁっ!」
何故手を止めたのか確認しようとしたら、いきなりワンピースの裾を捲くりあげてその中に頭を突っ込んできたのである。
「ちょっ、クロム・・・っ」
スカートの中に入り込んだ彼は勿論迷うことなくの足の間に顔を押し付けた。
「やっ、やだ!クロムやめて・・・!!」
羞恥に顔を真っ赤にしてワンピースのスカート部分を押さえるが、それでは逆にクロムの鼻先に秘部を押し付けているようなものである。
クロムはの悲鳴を無視しそっと下着をずらすと迷うことなくそこに舌を這わせ始めた。
「ひぁっ・・・!」
一番敏感な部分を舌でなぞられては驚いたような声を出す。
しかしそれも最初だけ。
ちゅる・・・ぺちゃ、ぺちゃ・・・くちゅ・・・・
丹念に溝をなぞりあげて、尖り始めた小さな突起を舌先でちろちろと苛まれる。
優しいのだか意地悪なのだか・・・な舌の動きにはぎゅっとワンピースの裾を握り締めた。
「あぁ・・・ン、だめ・・・ダメェ・・・はっはっ・・・あ、ああぁ・・・」
ちゅうぅっと膨らんだ芯を強く吸われてはびくんと体を震わせる。
軽く達してしまった事は明白で、クロムは更に興奮したように舌先を奥へと潜り込ませてくる。
うねる柔らかな異物にの花弁は快感に戦いて震えた。
くちゅくちゅ・・・ぷちゅ、くちゅ、・・・
「やっ、も・・・クロム・・・クロム・・・っ」
うわ言の様に名前を呼ぶ。
クロムはもぞもぞと這い出てくると、にやりといやらしく笑って見せた。
「俺が欲しい?」
「・・・ん・・・お、願い・・・もう・・・私、・・・っ」
「じゃあ言えよ、俺が欲しいって。奥まで欲しいって」
ぱあっと頬が赤く染まるが、の方もなりふり構っていられないほどに興奮しているらしい。
「欲しいっ・・・クロム、入れて・・・っ、奥まで、奥まで入れてっ・・・!」
自らワンピースを捲り上げるまでのサービスをみせては強請った。
「・・・ああ、いいぜ」
愛しい女の乱れた様子に息を弾ませてにのしかかり、性急にズボンの前を開けてとうに大きく反り返った自身を取り出す。
そしての下着を取り払って足を広げさせると、ずぶりと突き立てた。
「はぁぁぁんっ・・・!」
待ちわびた感触に思わずの腰が跳ね上がる。
挿入の瞬間の鳥肌が立つような快感。
狭い内壁を擦りながら貫かれるこの言いようの無い甘い快感。
「クロム・・・っ、イイ・・・凄く、感じる・・・っ」
「はっ・・・俺も、感じるぜ・・・っ」
派手にベッドを軋ませてクロムは勢いよく打ち付ける。
「あっあっ、はぁっ・・・は、あっ・・・あ、あっ」
荒い呼吸と、言葉ではなく声を上げる。
苦しそうな表情とは裏腹に、気持ち良さそうに腰を揺らめかせている。
出し入れのたびにぐちゅぐちゅといやらしい水音が響いていた。
「あっあっ・・・ダメェ・・・それダメ・・・っ」
どうやらイイところに当たり出したらしくの声が一際大きくなる。
「嘘付け・・・っ、これが、イイんだろっ・・・!」
容赦なくずんずんと腰を打ちつけながら、クロムは込み上げてくる射精感を堪えていた。
「あっあっ、イっちゃう・・・っイっちゃうぅぅ・・・っ」
壊れたように頭を振って、の体が大きくしなる。
内壁がきつく締まりクロムも小さくうめき声を上げた。
「―――――あぁぁっっ・・・!!」
「・・・くぅっ・・・!」
ぶるりと震えてその中にたっぷりと注ぎ込む。
も激しく達してしまったようで何度かぴくんぴくんと腰を跳ねさせていた。
ずるりと引き抜いた時に少しだけあふれ出たが、既にシーツの上はの愛液で濡れており、気遣う必要すらないように思えた。
そのままはぐったりと体を横たえていた。
激しいセックスに意識を手放したらしいことを確認して、体を拭いてやり空いていた未使用のベッドに移動させてやる。
そして、クロムはそっと窓の外を見遣った。
「・・・いるな」
外からずっとつけてきたのだろう。
これではの心はまた乱れてしまう。
暫らく観察していると、男はくるりと振り返った。
どうやら煙草を探しているらしかった。
「・・・」
チャンスだと思い、クロムは窓を開け放つ。
勿論、その音で男が振り返るのも計算のうち。
しかし男が状況を飲み込む前に、窓から飛び降りたクロムは振り返りざまの男の鳩尾に一撃拳を入れた。
「ぐ、っぇ・・・っ」
不意打ちを食らって男は伸びてしまう。
「殺しはしねぇから・・・悪く思うなよ」
出来ればこのまま諦めてもらいたいところだ。
クロムは見た目以上の力で男を肩に担ぐと、街外れの工場跡へ行き男を置き去りにすることにした。
これなら気付きさえすれば自力で街に戻れるであろう。
それまでに自分達は行方をくらます寸法だ。
逃げ続ける事でなにか解決するのかどうかは甚だ疑問であったが、だけは何があっても守り抜く。
二度と辛い思いなどさせはしないと固く誓って、クロムは工場跡を後にした。
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口の悪めなルカリオでした。