「だって、10代目の前では・・・」



そして蝶は空へと舞う/3






保健室。
ぼんやりと過ごしているに視線をやり溜め息をつくのは、彼女の先生でもあるドクターシャマル。
こんなを見るのは初めてだった。
ベッドの上に座ったままで上の空。
ぼんやりと空中を見つめたままで何かを考えているような感じだ。
「はぁ・・・」
そして時折溜め息をつく。
「何やってんの、は」
「・・・ドクター・・・」
視線だけを移してはシャマルを見た。
「なんかぼんやりしてンなァ。どーした?」
「・・・何でも・・・」
何でも、ない。
口では言うが、シャマルにはそうは映らない。
「風邪でも引いたか?よし、先生が見てやろう!とりあえず脱げ・・・イテ!」
言ってブレザーの襟を掴もうとするのを叩き落し、はまた空中へと視線を映す。
昨日から思い出すのはツナのことばかり。

『判ってくれて、良かったよ』

照れくさそうに笑う優しいツナの表情が忘れられない。
優しすぎるところもあるし、戦いは全くダメだとリボーンに聞かされてはいたけれど。
そんな欠点すら覆い隠す器の広い男なのだと思った。
「・・・10代目って、凄い」
「んン?ツナのことか?」
そうか?とシャマルが言うのも最早耳には入らなかったけれど。
「なんだ、お前さっきからツナのこと考えてンのか?」
「えっ・・・ちちちち違・・・っ」
漸くしっかりシャマルの方を向いたかと思うと真っ赤な顔で全力否定。
嗚呼もうちょっと上手に嘘をつくコツを教えてやれば良かったかとシャマルは苦笑いだ。
諜報活動はしっかり出来るのに自分の事となると全く素直すぎて可愛らしいくらいである。
「やめとけやめとけ。お前のボスになる相手だぞ。それにあいつは女慣れしてねぇからアッチとか最悪だぞー・・・って痛い痛い!ちゃんヤメテ!!」
「10代目がドクターのように破廉恥な真似するか!!!」
「馬鹿、お前男は皆破廉恥なんだぞ・・・って痛い痛い!ちゃん許して!!禿げる!!」
目をすわらせ思い切り髪を引っ張る
ここで皮まで剥いてやったほうがもしかしたら世の女性の為になるかもしれないと本気で思う。
「10代目は真面目で優しくて器の深い素敵な人だ!!僕みたいな・・・女か男かわからないような人間とは・・・釣り合わない」
段々と語尾が小さくなって。
何だか言ってて哀しくなってきた。
「真面目で優しくて器が深い・・・?嫌々真面目で小心者の間違いじゃないか?釣り合うも何もマトモに恋愛だってしたことないだろ、アレは」
「何でそう歪んだ見方をするんだ!あまり10代目の悪口を言うならドクターでも許さないぞ!!」
大声で叫ぶにシャマルは軽く肩を竦めた。
なんだかんだでめろめろじゃないか。
がここまで男に肩入れすると言うのも珍しいものだ。
娘のように思ってきたに相手が出来るのはなんとなく面白くないけれど、それが振られるというのは更に面白くない。
「男親ってのは皆こんな感じなのかねぇ」
「何?」
「何でもない。それより教室に戻ったらどうだ?ツナだっているんだろ」
「・・・だ、だって・・・10代目の顔、まともに見れないから・・・」
ツナの顔を見ると頬が熱くなる。
それを見られるのは非常に恥ずかしい。
「・・・それに・・・10代目の周りには・・・ビアンキさんとかその他綺麗な人もいるから」
少し耳の痛い台詞を聞かされシャマルの表情が硬くなる。
実際に女を捨てさせたのは自分であるわけで、勿論その辺に責任は感じている。
いつかこう言う日が来るのだろうなとは思っていた。
「・・・悪いな・・・」
「え、あ・・・ドクターが謝ることじゃないよ。拾って育ててくれたことには感謝してるから。それに、ドクターに会わなきゃ僕は10代目には会えなかったしね」
ただ、少しだけ。
「少しだけ・・・哀しいけど。だって・・・10代目の前では・・・」
女の子でいたくても、いれないから。
そんな言葉をが呟こうとしたときである。
君・・・!やっぱり、ここにいた」
ばんっと大きな音を響かせて保健室に入ってきたのは噂の中心人物、ツナである。
「じゅ、10代目・・・」
「もうお昼だよ。一緒にご飯食べよう」
「え・・・っ」
僅かに熱くなる頬を隠す事も出来ず、ただ傍に来たツナをきょとんと見るだけ。
そう言えばずっとここで溜め息ばかりついていたけど、もうそんな時間なのか。
「獄寺君と山本も待ってるよ。ほら、行こう」
「えっと、あの・・・っ、は、はい・・・っ」
手を引かれるままにはベッドから立ち上がる。
そしてそのまま、シャマルに目もくれず行ってしまった。
ようやく一人になった保健室で、シャマルは緩く椅子に座りなおして。
「やれやれ・・・娘ってやつは薄情だねぇ・・・」
なんて一人ごちる。
だけど悪いことでもないかもしれない。
親というのはやはり子の幸せを喜ぶものだから。



「あ、あの・・・10代目・・・。何で僕が保健室にいると思ったんですか」
「だってシャマルの弟子でしょ?女の子だしね、シャマルが追い払うわけないし・・・サボるならぴったりの場所かと思って」
「・・・」
直感で探し出してくれたわけではなかったらしい。
そんな関係になれるまでまだまだ道は遠そうだ。
だけど、それでもこうやって探してくれる優しいツナにはますます胸を痛めるのであった。












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男装してても性根は女らしいヒロインに萌え。
男勝りと天然最強はぶっちゃけあんま好きじゃないんです。
いや、男勝りはいいんだ・・・でも天然最強は・・・。
銀魂のお妙思い出すから・・・。お妙あんまり好きじゃない・・・。
って、リボーンの話題にしろよ。