「「10代目!どっちか決めてください!!」」





そして蝶は空へと舞う/2




絶対、こうなると思っていたのだ。
昨日の時点で。
宣言どおり迎えに来たは獄寺が来るよりも確かに早かった。
だけど今日に限って何故か獄寺も早かったのである。
「俺が教えたんだ」
「お前がかよ!!喧嘩禁止とか言いながら波風立ててるのお前だろ!!」
と先に学校へ向かってしまえば何とかなるだろうと思っていたツナの当ては見事に玉砕したのだった。
、テメェに10代目は任せておけねぇ。帰れ」
「お前じゃ10代目に何かあったとき治療できないだろ。僕がいる方がいい。獄寺が帰れ」
「10代目が死んだら治療も何もねぇだろうが!」
「10代目をみすみす死なせるもんか。命を懸けて守る覚悟ぐらいある!!」
通学途中にそんな危険が転がっているわけが無いと自信をもって言える。
なんだかだんだん話が飛躍し始めたような気がする。
「言っとくけどな、俺はテメェなんざ守らねぇぞ!」
「僕だってお前を治療してやるつもりは無い!」
「ふ、二人とも・・・それくらいにして学校行かない・・・?」
言い合いを続ける二人の間になんとか入り込んで、ツナは宥めようとする。
するとが時計を見て。
「ああっ、10代目が遅刻してしまう!さ、僕と行きましょう」
ばっとツナの手を取り走り出した。
「おぁっ、待てコラ!!!」
慌ててそれを追いかけ空いているほうのツナの手を獄寺が取る。
「おいコラ逃げンのか!」
「阿呆、10代目が遅刻する方がゆゆしき問題だ!決着は学校でつけてやる」
ツナの手を引っ張りながら走る二人について行くのがやっとのツナ。
傍から見れば遅刻しそうな二人が走りの遅いツナを引っ張って仲良く登校しているように見えたであろう。

「・・・もうダメ、朝から体力使い切った・・・」
走りすぎてへろへろになったツナとその横でまだ言い合いを続けると獄寺。
疲れたツナはそれを聞くともなく聞いていたがやがて二人は何かの結論に達したらしい。
二人してツナを振り返ると、口をそろえてこう言った。
「「10代目!どっちか決めてください!」」
「・・・は?」
唐突になんだというのだ。
前後の話を聞いていなかったツナは目を瞬かせて二人を見る。
「俺かか!」
「選んでください!!」
「え・・・?何、選ぶって・・・」
一体どういう流れでそんなことになったんだろう。
要領の得ないツナにが説明を始めた。
「僕か獄寺か、10代目に信用を置けると判断された方が明日から10代目を迎えに行くことになりました」
「・・・え?」
「なので僕か獄寺か。10代目が信用し信頼できると思った方を選んでください」
「・・・」
・・・。
・・・・・・。
なんだ、それは。
ツナは周りの空気が一気に冷たくなるのを感じた。
何だろう、この言い様もない気分は。
「・・・10代目・・・?」
無言になったツナをが覗き込む。
「・・・いい」
「え?」
「・・・・・・それなら、どっちも来なくて良いよ」
「「えぇっ」」
どうして、と理由を聞こうとしたらタイミング悪くチャイムがなった。
暗いツナの表情とそれに邪魔をされ、二人は理由を聞くタイミングを失った。
その後も理由を聞こうとしたら。
「・・・理由は俺に聞くんじゃなくて、気付いてくれないとあんまり意味が無いんだ」
と苦く笑われ、結局も獄寺もその話に決着をつけることは出来なかった。



溜め息が、でる。
ツナの言葉を色々考えては見るものの答えがわからなくて。
明日の朝は如何しよう。
ツナの事を完璧に守りきると誓った矢先この始末だ。
嗚呼、何かよくない事をしでかしたのだろうか。
学校から帰っても何も手に付かない。
は携帯を手に取った。
「・・・あのさ、ちょっと提案があるんだけど」
相手の了承を確認するとは立ち上がった。
目指すはツナの家。
小走りで向かうと、既に家の前には一人の人物が立っていた。
それを見ての表情が少しだけ強張る。
「・・・遅ェ」
「うるさい。一時休戦だと言っただろ」
二人とも少しぎこちなくツナの家の前に立つ。
そして恐る恐るチャイムを押すと、出てきたのはリボーンだった。
「あ、リボーンさん」
「ツナに用か?ツナなら部屋だぞ。上がれ」
「あ・・・すいません」
全く家族でもない人間がこんなことをしても良いのだろうかと思いつつ、リボーンさんだから大丈夫か、とは思い獄寺に続く。
階段を昇るたびに何だか嫌な緊張感が纏わり付いてくるのが判った。
昨日のようだとふと思う。
恐らく生涯その下にいるのだろうと思われるボスに会う昨日のこの階段は長くて短くて。
入れと言われて手が震えた。
聞いていた通り穏やかそうな、そして聞いていたより若いボス。
怒らせてしまったなら謝らねばなるまい。
だけど理由も分からず何を謝るというのだ。
気付けないことを不甲斐なく思いながらもボスとわだかまりがあればそれが後々重い枷になる事を承知している。
「・・・あの、10代目・・・いらっしゃいますか」
恐る恐る声を掛けると、中で何かが落ちる音。
その直後ドアが開いて苦笑いのツナが出てくる。
「びっくりしたなあ。リボーンの奴が入っていいって?」
「は、はい」
実は結構慣れっこのツナだった。
それでなくともビアンキやランボが勝手に入ってきては家にいるという日常にさらされているので。
「入りなよ」
二人を招き入れるツナ。
ぎこちなくもそれに従うと獄寺。
「ええっと・・・来た理由は結構分かってるんだけど・・・」
部屋に招きいれはともかく獄寺までお行儀良く座っているのを見てツナは笑う。
「やっぱり、判らない?」
「・・・すんません10代目・・・」
「・・・判りません・・・」
しょぼんと小さくなる二人にツナは笑って。
「うん、俺も大人気なくて・・・ごめん」
ちょっと困ったように笑いながら頭をかいて。
視線を外し、ツナは言葉を続けた。
「何て、言うのかなあ。信用が置けて信頼出来る方を選べって・・・それって、逆に言えば片方は信用も出来ないし信頼も出来ないってことだよね?俺、二人のことそんな風に思えないし思うつもりも無い。二人ともファミリーとかそういうのじゃなくて友達だと思ってるしさ」
だから・・・、とツナは照れたように視線を泳がせる。
「だから、どっちが何て俺には選べないし・・・、ファミリーとして俺を迎えに来るんじゃなくて友達として俺を誘いに来て欲しいんだけど。それなら毎朝でも来て欲しいよ。・・・二人でさ」
「・・・10代目・・・!そんな深い考えがあったなんて!!俺らが浅はかでした!!!」
がばっと獄寺がツナの手を掴んで詰め寄る。
「あ、あはは・・・獄寺君、近いんだけど・・・」
感動した風の獄寺を見つめながら呆然とする
嗚呼、このボスには。
どうしようますます惚れる。
命を懸けても惜しくない。
この人を守るためなら何でも出来る。
は僅かに痛み疼く胸を押さえながらただ呆然と、そう思っていた。










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なんかさーツナ別人だよね。でもあたしにはこう見える。
ツナってもっと優柔不断でダメっ子なんでしょうが、うちの目には穏やかで格好良い人とうつっております。