「ツナ、お前に新しいファミリーを紹介するぞ」
そして蝶は空へと舞う/1
リボーンの言う事はいつでも唐突だ。
もう最近は慣れてきたつもりではあるが、また変なのが出てきては堪らないツナ。
「リボーン、お前何でいつでもいきなりなんだよ!!」
「実はもう呼んである」
「おい!俺の話聞いてる?!」
「入れ、」
全く会話が成り立たないまま、リボーンのその「新しいファミリー」とやらを迎え入れる声。
ツナは慌てて扉の方を見た。
「・・・失礼します」
小さな声が聞こえると同時に開いた扉の向こうからは、黒く長い髪に黒い瞳を持つ人物が現れた。
一目見てツナにも日本人だと判る。
少し背は小さめの、ツナと同い年くらいに見える少年だった。
「・・・初めまして、10代目。僕はといいます。日本人です」
「あ・・・はァ・・・。初めまして」
緊張した風のは少し俯き加減でツナに自己紹介をする。
「10代目のことはリボーンさんとドクターから常々伺っています。ファミリーを大切になさる方だと聞いており、このファミリーに加えて頂いた事を嬉しく思っています。足手まといにはならぬよう全力で10代目をお守りいたしますのでどうぞ宜しくお願い致します」
最後に深々と頭を下げられツナは恐縮する。
ここまで常識的だと感動すら覚えてしまいそうだ。
「い、いや、あの、こちらこそ・・・。と、ところでドクターから俺のこと聞いてるって言ってたけど、ドクターって誰?」
リボーンは勿論判るがドクターと言われて心当たりのある人物はいない。
いや、いないわけではない。
たった一人心当たりはあるけれど、それがその人物かは全く自信が無かった。
しかし返ってきた答えはツナの心当たりと一致していたのである。
「ドクターシャマルです」
「はシャマルの弟子の一人だぞ。獄寺の次のな。教えられてるのは医術で、なかなかの腕なんだぞ」
「えぇっ!?で、でもドクターシャマルっていったら・・・」
そう、ドクターシャマルといえば男ならば血を流そうが骨を折ろうが、極端に言えば死のうが放って置くであろう医者である。
そんなシャマルに獄寺以外の男の弟子がいようとは。
ツナは目の前で小さくなっているに目をやった。
よくよく見れば綺麗な顔立ちをしており、見ようによっては女に見えなくも無い。
女でなくともこれくらい綺麗ならばOKということであろうか。
「まさかもう一人男の子の弟子がいたとは思わなかったなあ。・・・君、本当は女の子なんじゃないの?」
軽くツナは笑いながら言った。
それは緊張気味のを和ませてやろうと思い言った冗談である。
しかしツナの言葉を聞いたはいきなりばっと顔を上げたかと思うと、すぐに手と膝を床について。
「おみそれしました!!流石は10代目・・・!まさか5分でみやぶられるとは。騙すつもりはなかったのですがドクターには女には生きにくい世界だと言われ男として育てられまして、今日も普段どおりで良いと言われたため普段どおりにしたんです。・・・しかしこんなにすぐに見破られるとは・・・。10代目は噂以上に凄いお方ですね・・・!」
「やるな、ツナ。は変装の達人で諜報活動も得意なんだぞ」
「えー――――――(って言うか冗談だったのに!)!!!」
結局間抜けな問答であっさりと女であることをばらしてしまった。
「誰も気付かなかったのに本当に10代目は凄いですね」
興奮気味にツナに詰め寄る。
「・・・いや・・・まぐれなんだけど」
「でも僕が女だとは誰にも言わないでください」
一応内緒なので、とは小さな声で念を押した。
「知っているのはリボーンさんとドクターと10代目だけなんです」
「う、うん・・・判ったよ」
しかし自分が気付いたのだから他に誰か気付いても良さそうなのにとツナは思う。
女性だと言われてみれば、確かにの風体は女のそれに見えてくるから不思議だった。
良く見れば睫毛も長いし長い黒髪は艶やかで指先は繊細である。
服装が男のものなので男だと思えば線の細い男に見えないわけではないが、女性と言われた方がしっくりくる。
そんなツナの観察するような視線に気付いたのだろうか。
は居心地悪そうに身じろぎして。
「あ、あの・・・10代目・・・。そ、そんなに見ないでください」
「あっ、ご、ごめん・・・!」
少し頬を赤くして恥ずかしそうにするにつられ、ツナも照れたように視線を外す。
ツナは女の子に慣れていない。
初めて喋ったのは京子ちゃんで(これもある意味凄く運の無い人生だったと言おうか)その他ハルだのビアンキだのちょっぴりズレている女性しか周りにいないからだ。
さっきの間抜けな問答を思い返せばも至極きっぱりまともと言うわけでは無さそうであるが、それでもビアンキよりは話が通じやすそうだ。
「そうだ、明日から僕も10代目と同じ学校に通うんです。リボーンさんのはからいで10代目と同じクラスにもしてもらいました」
「へ、へぇ・・・(リボーンのはからいでって・・・あいつ何やったんだろ・・・)」
「なので明日から僕が10代目を迎えに来ますので、僕と一緒に登校して下さいね。何があってもお守りしますから!」
任せろと言わんばかりのの様子。
女の子に守ってもらうのはどうだろうと思いつつ、ツナは頷きかけて止まった。
「・・・あ、でも朝は獄寺君と山本もいるんだけど・・・。二人の事は知ってる?っていうか獄寺君は知ってるよね?」
特に獄寺はいらないといっても毎日迎えに来るから、恐らく一緒になるだろう。
「知ってます。・・・そうか・・・獄寺も10代目を迎えに来ているのですか」
「うん。だから一緒になるけど――」
「それでは明日は獄寺よりも早く10代目をお迎えいたします」
一緒になるけどそれでもいいよね、と言おうとしたツナの言葉を遮る形でが口を開けた。
「ええ!?」
かなり予想外の言葉にツナは声を上げる。
獄寺と同じくシャマルについているのなら一緒でも良いのではないのだろうか。
「獄寺に負けるわけにはいきませんから」
「い、いや・・・一緒に登校するのって別に勝ち負けじゃないんじゃあ・・・」
「いいえ、10代目は僕が守ります。獄寺には譲れません」
「相変わらずの闘争心だな。喧嘩はするなよ」
しれっと言うリボーン。
最早他人事であある。
「向こうがふっかけて来なければしませんよ。それに10代目の前でみっともないことは出来ませんから出来るだけ我慢はします」
「・・・」
一抹の不安を抱くツナ。
如何考えても一悶着ありそうな明日の朝を思うと今から憂鬱になるのであった。
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ツナです。もうツナね、最高ですよね。
リボーンで一番格好良いのはツナですよ!いや、マジで。
ところでビアンキって男の名前ですよね。
女ならビアンカ。