嗚呼そんなにも遠く見えるなら。
ねぇ、もっと激しく。






恋愛とは即ち狸と狐の化かし合い也






其の人は、綺麗で。
其の人は、大人で。
だからきっと独自の世界を持っている。
足を踏み入れる事を許された男は、きっと自分一人じゃない筈だ。
鏡を見ながら、新八はそんなことを考えていた。
もう何度か入った事のあるこのバスルーム。
見つめ返してくる自分は、先程恋人に移された口紅で唇を紅く染めている。
嗚呼、僕は男なのになんて様だ。
だけどこの状況が現在の彼女との距離を正しく表しているようにも思えた。
なんと言っても年下で、見るものが見たら「ヒモ?」と聞かれそう。
「・・・」
これから同じベッドで朝まで過ごすのだと言うのにこんなことで如何する、とは思うけれど。
やはり恋人は綺麗で、大人の、オンナ・・・なのだ。
考えても仕方無いのは百も承知。
溜め息混じりに上の服を脱ぐ。
・・・と。
「新ちゃーん、やっぱり一緒に入ろ?」
がらりとバスルームのドアが開けられた。
「ウワァァ!?な、何ノックも無しに入って来てるんですか!?」
「え?別に見られて困る事なんてないでしょ?」
「・・・それは、そうですけど」
嗚呼、余裕だな。
彼女――の言葉に新八はそう思う。
「一人で待ってるなんてつまんない。一緒に入って体洗いっこしようよ」
ね、いいでしょ。
素敵な笑顔で言われると、もう何も言い返せない。
やっぱりまだまだへの距離は遠いのかもしれない。



「はぁ・・・」
新八の溜め息が万事屋に響いた。
「新八、如何したアル。店の雰囲気悪くなるから溜め息吐くなら見えないトコで吐けヨ」
「神楽ちゃん・・・心配してくれてるのかどうでもいいのかどっちなのさ」
「ぶっちゃけどっちでもいいネ」
「あ、そう」
どうせ言うつもりも無い新八は敢えて突っ込まない。
恋愛相談なんかしたって無駄なのだから。
銀時は銀時で興味無さそうにジャンプを読んでいる。
このまま何も聞かれずに今日が終われば良いと思う。
だけど。
「・・・はぁ・・・」
そんな気分とは裏腹に新八の口をついて出るのは溜め息ばかり。
「おい、新八。はぁはぁはぁはぁ変態みたいに溜め息ばっかり吐きやがって。何か聞いて欲しい事があンならさっさと言えや」
「変態は余計ですし別に聞いて欲しいことだってありませんよ」
ジャンプから目を離した銀時にぎくりとしつつ、新八は平静を装って答えた。
銀時に相談してどうなると言う問題でも全く無い。
寧ろ笑われて終わりなだけに決まっているから。
新八は口が裂けても言う気は無かった。
「よし、じゃあ銀さんがその口裂いてやろう!」
「アレェェェ!?違いますから!!!さっきのは比喩的心理描写で僕の全くの心情じゃありませんから!!て言うか文章の垣根飛び越えないでください!!」
慌てて新八は銀時の手から逃れようと飛びのいた。
そんな時である。
折りしも新八の悩みの種が現れた。
「こんにちわー、新ちゃんいるー?」
いつもの通りの素敵な笑顔で真っ黒なプリーツスカートをなびかせながら、無断侵入である。
「お前なー、ちょくちょく用もねーのに来るんじゃねえよ。うちの従業員勝手に連れ出されたら困るんですけどォー」
「あら、今日は用があってきたのよ。新ちゃんに会うついでにね」
「結局新八目当てなんじゃねぇかよ」
やってらんねー、と銀時はソファではなく自分の椅子に座る。
勿論そこに座った理由はが仕事を持ってきたと思ったからだ。
「で?何よ?銀さんに何やらせよーっての?」
「仕事じゃないわよ。コレ、あげようと思って」
ぱらりと銀時の目の前に落とされた2枚の紙切れ。
「何だコレ」
つまらなそうに銀時が手に取った・・・瞬間。
目の色が変わる。
「オイィィ!!!これアレじゃねぇか!!最近出来たデケェホテルの・・・!!」
「そ。ランチビュッフェの招待券貰ったのすっかり忘れててさ。今日までなの。2枚しかないから銀時と神楽ちゃんにあげるわ」
「マジでかァァァ!!!!後で新八と行きたいっつっても返さねェぞ?!」
「うん、時間もあんまり無いから行って来なよ。留守番、しててあげる」
「よっしゃァァァァァ!神楽、昼飯は食い放題だぞ!!!」
「ホントアルか!?何でも?」
にんまりと、が笑う。
しかし昼食代の浮くと分かった銀時はそれに気付かない。
神楽と一緒にはしゃぎまわっていた。
「よし、善は急げだ。行くぞ神楽!」
「いつでも準備おっけーアルよ!!」
「はいはい、いってらっしゃーい」
ばたばたと2人を送り出す。
「え、ていうか僕完全に忘れられてますよね」
ぽつりと呟くが銀時と神楽は本当に出て行ってしまったようだ。
・・・これはこれで結構寂しい。
「ふっふーん、さーこれで邪魔者はいなくなったわ。新ちゃんは今度皆でビュッフェ行こうね」
「え?」
「ふふっ、実はランチビュッフェと一緒にディナービュッフェの招待券も貰ったの!こっちは一週間後まであるし枚数も4枚あるから、皆でね」
ぴらぴらと4枚の紙切れを新八に見せながらは笑う。
嗚呼本当に周到な人だ。
何もかも見透かされているようで新八は少し俯いた。
「・・・新ちゃん・・・?やだ、もしかして皆とお昼行きたかった?」
「いえ!・・・そんなんじゃ、ないんです」
子供じゃないんだから、好きな人と一緒で嬉しくないわけが無い。
だけど。
慌てて顔を上げて否定する、新八の表情はやや暗い。
「敵わないな・・・と思って」
「え?」
「今だってわざと銀さん達を追い出したんでしょう?・・・そういうのって本当は男の僕がするんじゃないんですか」
は答えない。
ただ、珍しいものを見たように目を見開いているだけ。
「昨日一緒にお風呂入ったときも何か余裕だし・・・」
あっけらかんとノックも無しにドアを開け放って入ってきたを思い出す。
結局我慢出来ずにバスルームで一回事を済ませてしまったことも、一緒に。
「新ちゃん」
「情けないですよね、僕」
「あのね、新ちゃん。一人で感極まっちゃってるとこ悪いんだけど」
はすっと新八の横に座り込んだ。
その目は真剣そのもので、笑っているときも綺麗だけどこういうのも好きだと新八は思う。
「あたし、余裕なんか全然無いのよ?」
「え・・・」
「新ちゃんと二人きりになるだけで、ほら」
すっと新八の手を取り、自分の胸に押し付ける。
その行動に少し新八の頬が染まるが、伝わってくる鼓動の早さが言葉を失わせた。
「新ちゃんは情けなくなんか無いよ。こんなにも一人の女をドキドキさせてるのよ?」
「・・・」
「もっと自信持って。ね?」
嗚呼、やっぱり情けない。
慰められてしまった。
だけど、手を伝わる鼓動は本物だ。
その事実に安心した新八は、微かに笑うとそっとに顔を近付けた。
「!・・・新ちゃ、ん・・・」
柔らかく、唇が重なる。
ちゅ、と小さな音が響いた。
「ン、ん・・・ンぅ・・・」
唇と唇の間で舌が緩やかに絡まる。
お互いの味を堪能しながら深く探り合った。
徐々に新八がに体重を掛け始めた。
「ン・・・!し、んちゃん・・・?!」
背中に当たるソファの感触。
見上げれば新八と、僅かに天井が見える。
「何ですか」
「や、あの、ここ・・・銀時のお店だよね?」
「そうですけど」
「ちょっとココは・・・まずいんじゃ・・・」
いつ来客があるともしれない、事務所のソファの上。
「大丈夫ですよ。ココ最近まともにお客さんなんか来てませんから」
にこりと新八が笑う。
さんが自信をくれたおかげです。・・・大好きですよ」
「!」
恥ずかしげも無く言ってのけた新八の言葉には頬が熱くなるのを感じた。
思わず両手で頬を覆う。
「やっ、何よ、急に、そんな・・・!」
慌てて視線を逸らした。
そんな新鮮な反応に新八は内心驚きつつも顔には出さない。
なんだ、こんな可愛い反応も出来るんだ。
「・・・なんか、さん可愛いですね」
「やー!!ばかばか!!真顔でそういうこと言わないでよ・・・!今までの可愛い新ちゃんじゃないわ!」
「今までのって・・・」
「あたしが何か言うたびに紅くなったりしてたから、あたしもお姉さんでいられたのに・・・」
急に男の子っぽくなるんだもん、ドキドキしてるの隠せないじゃない。
の言葉に新八は笑う。
なんだ余裕を持てば、良く見えることだったのか。
ゆっくりと新八がに覆いかぶさる。
「あ・・・新ちゃん、ホント、まずい・・・」
隊服の上から胸を探られての体が強張った。
新八はの首元に顔を埋めると、耳元で低く囁く。
「銀さんが帰ってくる前に済ませます。・・・もう止まらないんで」
「あン・・・っ、だめ・・・」
隊服の裾から新八の手がするりと滑り込んできた。
ごそごそと探るように動く。
「ん、や・・・ァ、あ・・・っ」
きつく新八の袖を掴んで目を閉じている
手探りでの下着を上へ押し上げてずらし、やんわりと掌で覆った。
形を変えるように揉みしだき、指先で尖り始めた乳首を捏ねる。
「っ、新、ちゃん・・・!」
思わずは新八にしがみ付いた。
絶え間なく首筋に触れる吐息と唇の感触が更にを煽る。
「はぁ、はぁ・・・っ」
新八は少し体を離して荒く上下するの胸元を見下ろすと、おもむろにの隊服を捲りあげた。
「あ・・・」
べろりと肌蹴た白い胸に手を伸ばす。
柔らかい弾力、つんと硬くなった赤い頂。
そっと顔を近付けて唇に含んだ。
「やぁ、ン!・・・だめぇ、あ、あぁ・・・」
舌先でちろりちろりと弄ばれ、抗議するように新八の髪に指を絡めた。
だが新八がそれを抗議と取ったかどうかは甚だ疑問であったが。
「はぁっはぁっ・・・新ちゃ、ァ・・・あぁ・・・っ」
執拗に嘗め回されて、の膝が求めるように新八の腰を擦る。
そんな誘いに答えるが如く新八は手をゆっくりと下へ滑らせていった。
滑らかな脇腹をくすぐるように撫でつつ、手をスカートの中へ。
「っ・・・う、ぁ・・・」
迷うことなく新八の指先が脚と脚の中心に埋まった。
下着越しにもじんわりと湿り気が伝わってくる。
「・・・さん、凄い・・・」
「やっ、言っちゃ嫌・・・!」
軽く指を動かせば滑る内部が手に取るように分かった。
以外の女と関係を持った事も無ければ、経験も少ない自分の愛撫で感じてくれているという事が新八を煽る。
下着の隙間から指を侵入させるとがぎくりと震えた。
「あっ、・・・新ちゃん・・・っ」
中はぬるりと熱く、軽く動かすだけでいやらしい水音が小さく漏れてくる。
「はぁっ・・・だめ、だめぇ・・・っ、そんなに、あっあぁ・・・っ」
音を立てながらの芯を指の腹で押し潰すように刺激した。
「やぁぁぁっ!」
悲鳴のような声と共にの手が新八の腕を強く掴む。
跡が残るのではないかと思うほど、きつく。
「あっ、だめっ、はぁっ、はぁぁっ・・・そんな、したら・・・っ」
脚の間に入り込んだ新八の体をぎゅうぎゅう挟み込んで、は薄っすらと涙を浮かべながら髪を振り乱した。
さん・・・」
そんな痴態を見せ付けられている新八も少しずつ息が上がる。
堪らずスカートを捲り挙げると、既に機能を失い始めているの下着を引き下ろした。
「新ちゃん、早く・・・お願い・・・」
「分かってます・・・」
新八も限界である。
袴の帯を解き、の脚を抱え挙げた。
焦らすなんて考えは毛頭無いし、我慢できそうに無いし。
熱く反った自身を押し付けると一気に貫く。
「あぁぁっ・・・!」
小さくが仰け反った。
それを押さえつけて腰を進めて。
とろりと蜜の溢れるのそこは緩やかに新八を飲み込む。
「はぁっはぁっ・・・ああ・・・っ」
ぐちゅぐちゅぐちゅ・・・。
、さん・・・っ」
侵入してしまえば、圧迫感に気遣う余裕も無い。
「あぁっ、はぁぁ・・・っ、あ、すご・・・ィ好い・・・」
がたがたとソファを揺らしながら新八は腰を動かした。
出入りする度に結合部からは卑猥な音が響いている。
女の扱いに慣れた訳ではないけれど、何度か回数を重ねている間にが良く啼く一部を覚えた。
「はぁっはぁっ、ダメ!そこ・・・あぁぁっ・・・だめぇぇ・・・」
すりゅっと内壁を擦り上げられが髪を乱す。
「あぁっ、イ、イっちゃう・・・!」
「うぅっ・・・さん・・・っ」
「だめ、だめぇぇっ!」
ずぅんと奥に重い衝撃が走ると同時にの背が仰け反った。
「――――――っっ・・・!」
声にならない悲鳴を上げての体がびくんびくんと痙攣する。
「っう・・・」
新八はきつく締まるの中からずるりと自身を引き抜くと、白い腹の上に精を放つ。
はそれを見るともなく見ていたが。
「・・・別に、中で出しても良かったのに・・・」
と、呆然と言った。
「ダメですよ。こういうことはちゃんとしないと・・・って避妊してない僕がいっちゃダメですかね・・・」
「でもさ、赤ちゃん出来たら・・・新ちゃんに責任とって貰ってずっと一緒にいれるデショ?」
「・・・そんな既成事実作らなくたって・・・ずっと一緒ですよ」
真面目に、真顔で。
新八がそんなことを言うものだから。
「・・・ばか・・・」
またしても紅く染まった頬を押さえは恥ずかしそうに視線をそらした。











→そのあと。

「つーか俺の家をホテル代わりにすンじゃねーよ」
事後、二人でまったりしていたら帰ってきた銀時に言われた。
出て行く前より明らかに濃密な雰囲気を纏っているのだ、よほどの者でなければ気付こうというものである。
「ホテル代のかわりにチケットあげたでしょ」
「金だしゃいいって問題じゃねーっつの!俺はこれからどうやってこの部屋に女呼べばいいんだよ?!ホテル代わりにされたこの部屋によォ」
「呼ぶ女がいるんですかー?いないのに見栄張らないでくださーい。寒いから」
「ガンガンいるよ。銀さんあっちこっち引っ張りだこでホント大変なんだから。いやホント、ホントだってば。そんな目で見るな」
「いやホントマジで寒いだけだから」
肩を竦めては深く新八に凭れ掛かる。
そんな体重を心地よく感じながら、銀時への優越感を感じるのも悪くないなと新八は思った。










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「即物的なもの也」の続きを求める声が多いんですが・・・。
そうと見せかけて続きじゃない。すいません、その内気が乗れば書きます(アバウトだな)
いや、童貞難しくて・・・てか新八タイプの童貞は難しいです。銀さんが童貞だったらハァハァします(聞いてない)
昨日神楽が出てくだの出てかないだの言ってた巻を読んだら、うっかり新八に見惚れました。
やるときゃやるんだよね、あの子。
というわけでやる時にはヤってもらいました。