だってこんな時代じゃないですか。
離れている時間が惜しいって言うのは。
愛しいキミともっと愛し合いたいって言うのは。
それでもやっぱりボクの我が儘なんですか?
015/上を向いて
だってこんな時代じゃないですか。
溜め息を吐きながらマリューはソファに沈み込んだ。
緊張感が堪らない。
その細い肩には何人もの命が乗っているその重責とか。
次はどうする?
考えなくては。
でも何を?
出来るだけ戦わず、犠牲を最小に抑えて、全員生き残れる道を?
そんなものキラやフラガという戦闘員が何とかしてくれるからではないか。
二人を前線に追い立てて何が策だ。
どうすれば誰も彼も円満に上手く事を運べるのだろう。
・・・ああ、それにしても眠い。
疲れた・・・。
すとんと暗い眠りに落ちる自分の意識を踏み留めることも出来ないマリューは静かに目を閉じ・・・ようとした。
「・・・あら・・・?」
しかしそれを踏み留めるものがあったのだ。
どろどろに疲れていたマリューは部屋に入ったときは気付かなかったのだが。
「・・・変、ねぇ・・・」
どうにも違和感を感じる、ベッド。
朝出てくるときはきちんと整頓して置いたつもりだったのに。
まるで一度誰かが使ったかのように端がぺろっと捲れている。
そこでふと。
ピンポイントで思い当たる人物が頭をよぎる。
そうだ、きっとこんなことをするのは。
「フラガ少佐っっ!!!」
つかつかと勢いよく機関室に入ると、そこには結構真面目な顔でキラと喋っているフラガの姿が。
マリューに呼ばれて、キラと共に顔を上げる。
本当はいつもならば遠慮するところだ。
流石に二人きりではないのに個人的なことで言い争いをするマリューではない。
だけど。
今日のマリューは決意が違った。
早めに且つ徹底的に注意しておかねばいけないことを知っているからだ。
キラがいようがフラガがまだ勤務中だろうが知ったことか。
「艦長・・・どうしたんですか?」
フラガよりも先にキラがマリューに声をかける。
「・・・キラ君。少佐を少し借りるわね」
「え・・・はぁ・・・」
曖昧に答えてキラは問いかけるようにフラガを見上げた。
が、残念なことにフラガにもその問いかけに答えることが出来ない。
軽く肩をすくめて見せ、そのまま手を引くマリューについていった。
「何?なんか緊急事態?」
早足で通路を歩くマリューに自然と緊張したものを感じつつ声を掛ける。
「・・・ある意味緊急事態かもしれませんね。どうも私の部屋に誰かが勝手に入ったようなんですけど」
「!」
ちろりと視線だけで見上げられてフラガはしまったという表情になる。
そして同時に何故ばれたのだろうと。
「・・・そりゃ大変・・・」
「ええ、本当に。まあ言い訳は部屋で聞きますので。逃げたりしないでくださいね、少佐」
いつものように優しく笑ってマリューはそれきり一言も喋らなくなった。
嵐の前の静けさだ・・・とフラガはこの後のことを考えこっそりと溜め息を吐く。
勿論マリューには絶対に聞こえないように、だ。
「それでは・・・言い訳を聞きましょうか。少佐」
いつもなら部屋に誘えば喜んで入ってくるフラガの足取りが心なしか重そうだった。
怒られるために部屋に呼ばれるのだからそれも無理ないことだろうが。
「いやぁ・・・最近部屋に呼んでくれないだろ?ほら、独りで寝るのは寂しいっつーか・・・なんていうか・・・」
「部屋に呼ぶも呼ばないも、勤務シフトの時間が合わないんですから当たり前です!」
特にフラガは戦闘員。
いつ何時出撃しなければいけないのかわかったものじゃない。
生還したと思えば機体の調整、それが終わったかと思えばまた出撃。
そしてブリッジでの勤務・・・など。
艦の指揮をとるマリューとスケジュールが合わないのは当たり前といえば当たり前の話で。
だからフラガの言葉も、マリューの言葉もどっちも間違ってはいない訳で。
「うっ・・・そりゃまあごもっとも。だ、だけどな・・・!もう10日だぞ?流石に我慢の限界だって!!」
「だから人の部屋に勝手に入るんですか」
二人共の主張は全くの平行線だった。
しばしそのまま睨み合いを続けるが、先にマリューがふいっと視線を逸らす。
「・・・分かりました。こうしていてても埒があきませんものね。少佐、勤務中失礼しました。持ち場にお戻りください」
「ちょっ、マリュー・・・!俺は」
「私も休みますので」
ぴしゃりと言い放ち、マリューはフラガを外へ追い出す。
勿論その行動に抗議しようとしたが、マリューは受け入れずにドアを閉めた。
いつものマリューらしくないその行動にフラガは驚きながら、そんなに怒らせるようなことだったかなぁと思う。
「・・・まあ、夜にでもご機嫌伺いに来ればいいか」
ぼそりと呟いてフラガは機関室に戻ることにした。
そういえばまだパイロットスーツを着たままだった。
一方マリューは。
フラガにも宣言したとおり、少し寝ようと軍服を脱ぎ几帳面にハンガーにかける。
皺になるかとも思ったが、スカートはそのままでベッドに寝転んだ。
その瞬間シーツから立ち上るフラガの匂い。
やっぱりここで寝たのだと改めて実感させられる。
「・・・確かに、10日ね」
少しだけフラガの言ったことも理解できるかもしれない。
さっきまでは気付かなかったけど、ベッドに残る香りに抱きしめられて。
「これじゃぁ・・・眠れないわ」
自分のベッドを使ったフラガもこんな気持ちだったのだろうか。
そうだったらいいなと思いながら、マリューは目を閉じた。
「・・・私だって寂しく思ってない訳じゃないのに」
その呟きはすぐに寝息にかき消されたけれど。
最低限の人数で稼動している夜。
特にマリューはナタルと交代で仮眠をとることが多い。
フラガはパイロットであるので、夜に戦闘状態にでもならない限りは夜勤なんて滅多にない・・・ことになっている。
寝不足で機体を飛ばすことが出来ないから、というのが主な理由であるのだが。
しかし事実上ではこのアークエンジェルの人手不足などもあって真夜中でも良く機関室にいる。
今日もそこでマードックやらと話しながらマリューがナタルと交代するまで待った。
勿論、昼間の続きのためだ。
部屋に戻ろうとするマリューを引きとめてフラガは自分の部屋に連れ込むことに成功した。
フラガは部屋に入るなりマリューを抱きしめて。
「俺のコトもう飽きちゃった?」
なんて聞く。
思いもよらない先制攻撃にマリューはうっと言葉に詰まった。
「そんなわけないじゃない・・・っ」
「良かった」
すっとフラガの目が細くなる。
そんなに嬉しそうな顔をされたらマリューにはもう何も言えなくなってしまうのだ。
怒っていたわけではないが、もうそれすら口をついて出てこない。
「マリュー」
宥めるようなキスを優しく落とされる。
それはとてもズルイけど、泣きたくなるくらい優しいから。
だから。
「・・・もう、いいわ。ムウ・・・っ」
抱きついたマリューが自分からフラガのベッドにダイブしたのは、無理もないことだったかもしれない。
上に乗ったマリューはフラガの・・・下に敷かれたフラガはマリューの。
互いに服を脱がせあうも、それすらもどかしくて。
フラガの逞しい腕がマリューの腰を抱き、空いた手が服の中へ進入してくる。
「っあ・・・」
下着の上から捕まれて思わず声を上げてしまう。
鼻に掛かった小さな声。
「そんなに可愛い声出すなよ」
荒々しくマリューを組み敷いてフラガは乱暴に服を毟り取る。
噛み付くようにキスを繰り返しながら、フラガの手は性急にマリューのスカートの中へ。
「やっ・・待って、あン・・・っ」
「10日待ったぜ?・・・もう待てるか」
意地悪な長い指が下着の上から割れ目をなぞる。
くすぐったいような感覚にマリューは腰を震わせた。
「それにマリューだってこんなにしてる・・・」
「!・・・もうっ、馬鹿!!」
ぐじゅっと卑猥な音を立ててフラガの指が下着ごと埋まってくる。
徐々に湿り気を帯びる指先をぐりぐりと突きたてられ、マリューは途切れがちに息を吐いた。
「はぁっ・・・あ、ぁはぁ・・・っ」
にちゃにちゃと指先がかき混ぜる。
時々親指が掠めるように尖った芯を撫でて行くのが堪らない。
「ダメっ・・・あぁン、やっ、ムウ・・・っもう・・・っ」
涙目で見上げた先にはマリューと同じく余裕の無いフラガの笑み。
だけど「いい?」なんて聞くから思わず苦笑が漏れた。
フラガの手がスカートを巻くり上げて下着を下ろす。
それは透明な糸を引いてぐっしょりと濡れており既にその機能を失っている布きれになっていた。
そんなにも期待してしまっていたかと思うと恥ずかしくなる。
が、下腹部に押し当てられた熱を感じた瞬間、そんなことなど分からなくなるような波に襲われた。
「あっ、あぁぁぁっ・・・!!」
中にフラガを感じた瞬間マリューの体が一瞬仰け反って硬直する。
「・・・やだ・・・少し、イっちゃった・・・」
そのままフラガが性急に腰を動かしてきたが、恥ずかしくてなかなか顔をマトモに見れなかった。
存分に肌を合わせた後で。
「・・・別に私はムウのことを怒ってたわけじゃないのよ」
落ち着いた二人はベッドに寝転がって。
天井を見上げながらマリューが小さく呟いた。
「ちょっと・・・神経質になってただけなの。・・・ごめんなさい」
何処か遠くを見遣るように呟かれる言葉はフラガの耳に気持ちよく入ってくる。
「別に?気にしてないし」
笑ってマリューの腰を抱く。
一瞬、また求められてしまうのではと体を硬くしたがフラガにその気は無いみたいで。
ただそのまま。
だってこんな時代じゃないですか。
キミが好きで、隠れて泣いているキミが愛しすぎて。
そんなキミが見上げた先を全て護りたいって言うのは。
それでもやっぱりボクの我が儘なんですか?
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お題未消化気味ー。まあフィーリングで感じ取って下さい(ぇ。
ポケモン以外でNot女体がかけるとは自分でびっくりです!(実はフラキラ書いてたけどこっちの方が萌えすぎて、そっちが手につかなかった・・・)
まさかここまでフラマリュにはまるとは!って感じですけどね。
二人とも別人でもご容赦ください。何度も観れるわけじゃないし観てないしで・・・。ビデオ借り物だし。
それから恋人になる前っぽい時間軸だけど無視の方向で・・・。
すいません・・・だって恋人になってからフラガが戦死するまでの期間短すぎるんだもん。恋人になって殆ど何も出来ないまま戦死って感じ・・・。
でもこの二人の愛は永遠に不滅ということで書いてみた。
ちなみにナタマリュ(百合)もとてつもなく好きです。堪らん。
ところで最初のくだりを書いてるときはシリアスにしようと思ったけどいきなりシリアスはシャレにならない感じで重くなりそうなんでやめた。