014/天体







見上げた先に、見えますか。
私達の未来が完全に機能しているのかどうかを。
確かめる術はありますか。
教えてください。
羊水に浮かぶ、私だけの貴方。






異常だ。
そんなこととっくに二人ともずっと理解してる。
見下ろせば、月。
窓から見えるのは地球。
隣で眠る葉子はいつもオリジナルの方を向いて寝る。
無意識からの行動かもしれないが、いつもそれを苦く見るしかないリバース・ハーンは。
だけど心がそこに無いのなら。
せめて体くらいはと。
「・・・綾小路・・・さん」
そっと名前を呼んで後ろから葉子の細い腰を抱いた。
一瞬、オリジナルと目が合ったような気がして力が入る。
培養液に浮かぶそれは如何見ても死体でしかないのに。
それでも葉子は自分を選ばない。
抱きしめる腕も、意志も、何も無いはずのオリジナルに・・・だけど勝てない。
「綾小路さん・・・」
「・・・リバース・ハーン君・・・?どう、したの」
薄っすらと目を開けて見上げてくる葉子。
まだ、さっきの余韻の残る頬は薄っすら紅潮している。
堪らず抱きすくめた手を葉子の胸元へ伸ばして。
一瞬驚いたように開かれた口許は唇で塞いだ。
「んっ・・・ンン・・・」
僅かに抵抗するように逃げようとした葉子を押さえて更に奪う。
こっちを見てくれ。
せめて今だけでも。
最後にはあっちを選んでも構わないから。
「好きなんだ。綾小路さんが」
毎晩繰り返される告白に葉子は困った表情だけを返す。
なし崩しにこんな関係になってしまったけれど、まだ葉子は一言もリバース・ハーンに愛の言葉を囁いたことは無かった。
「リバース君・・・」
それでもせめて名前を呼んだ。
応えられない愛に戸惑う声で。
「・・・っ、いいから・・・!黙って」
リバース・ハーンにも分かっている。
入り込む余地はきっと無い。
出来ることといえばきっとこうして寂しさを紛らわせてやるくらいだ。
それは人形と同じもの。
記憶を思い起こすだけの影なのだろう。
「いいから」
もう一度、改めて葉子に口付けた。
それを深いものに変えていきながら、ちらりと視線をずらす。
無力に浮かぶだけのオリジナル。
毎夜毎夜オリジナルの目の前で、繰り返されているこの情事。
異常だと。
そんなこともうとっくに二人とも理解していた。
葉子を少し強引に組み敷いて、その細い腰に跨る。
体を起こしてじっくりと葉子の体を見下ろした。
散らばった長い髪。
逸らされた目。
薄っすらと赤みを帯びる頬。
柔らかそうな唇。
白い首筋。
浅く上下する胸。
見ているだけで堪らなくなってくる。
思わずリバース・ハーンは自らの性器に指を伸ばした。
どくりと脈打つのが分かる。
散々交わしても未だ引かない熱を感じ、自嘲気味に笑った。
「好きだ・・・綾小路さん」
そっと首筋にキスをして、葉子に覆いかぶさる。
「・・・あっ、りばー、す・・・君・・・っ」
そっと乳房を手で覆い優しく揉み解す。
やんわりとした感触を味わいながら尖り始めた葉子の乳首を指先で捏ねる。
同時にゆっくりと唇を辿らせて鎖骨の辺りをきつく吸った。
「っ・・・ン!」
ちりっとした小さい痛みを伴いつつ、そこが赤く染まる。
印をちろりと舌で撫でて葉子の腹に昂ぶり始めた自身を押し付けた。
「や・・・、リバース君・・・っ」
当たっている感触に羞恥を感じたらしい葉子は顔を赤らめて非難の混じる声を上げた。
だけどリバース・ハーンは聞き入れない。
唇を辿らせて葉子の乳首に触れ、それを舌先で弄んだ。
「はっ・・・あン・・・っ」
―――れる・・・ちゅぷ・・・っ。
淫猥な音をわざと立てながらリバース・ハーンは丁寧に葉子の胸を愛撫した。
いつの間にか手はするりと下の方へ伸ばされ脇腹やら下腹やらを撫でられる。
くすぐったさに葉子が身を捩り、甘い声を上げた。
「はぁっ・・・ん、や、ぁ・・・っ、リバース君・・・っ」
僅かに拒絶するようにリバース・ハーンの胸を押しやる手。
全く力は入っていないに等しかったけれど。
少しだけ気に障った。
「・・・ひぁ・・・っ」
葉子の腰がびくりと跳ねる。
意地悪な指先がぬるりと葉子の割れ目をなぞったからだ。
その刺激で先程のリバース・ハーンの放ったものがどろりと溢れてくるのが分かる。
「やっ・・・あ、やめ・・・リバース、くぅん・・・っ」
指を中に突っ込むわけでもなく、芯に触れるわけでもなく。
ただただリバース・ハーンの指先は溝に沿って動くだけ。
それでも葉子の愛液や先程の残滓が溢れてきているソコは、くちゅくちゅと卑猥な音を立て始める。
「はぁっはぁっ・・・ダメ、そんな・・・あぁ・・・」
葉子の中の女の本能が羞恥心を押しのけて徐々に脚を開かせる。
立てられた膝が誘うようにリバース・ハーンの腰を擦った。
「リバース君・・・あぁ、嫌・・・もっと・・・」
「もっと・・・何だい?」
「っ・・・いやぁ・・・」
頬を染め両手で顔を覆う。
そんな葉子を満足げに見下ろしながらリバース・ハーンはそれでも指の動きを止めない。
決定的な愛撫は加えず、ただ撫でるだけ。
そうしている間に葉子の下肢から垂れた愛液はどろりと内股まで汚していた。
「お願い・・・お願い、リバース君・・・っ」
葉子が涙目で訴えている。
いつもならこの辺で折れているだろうリバース・ハーン。
だけど今晩は2度目なこともあって少しだけ余裕が生まれている。
「綾小路さんがちゃんと俺を欲しいと言えたらやるよ」
「嫌・・・っ意地悪・・・」
髪を乱しながら葉子はふいっと目を逸らした。
にやっと笑って、リバース・ハーンも同じ方を見る。
窓の外。
彼方に見える地球。
そして、無力に浮かぶオリジナルの体。
見ているか。
リバース・ハーンは心の中で問う。
見ているか、オリジナル。
お前はこれをみて如何思う。
僅かでも悔しく思うなら。
微かにでも嫉妬を覚えるなら。
今すぐ生き返って綾小路さんを抱いてやれ。
しかしその言葉は届きはしない。
「・・・リバース、君・・・」
ふと名を呼ばれ我に返った。
「お願い・・・分かるでしょう」
顔を赤らめて葉子は腹に押し付けられたリバース・ハーンの勃起を指でさらりと撫でた。
それだけでかっと体が熱くなるのが分かる。
「・・・くっ、綾小路さんっ・・・」
思わず葉子の脚を持ち上げて、蜜壷に自身を押し当てている自分がいた。
―――ぐぷっ。
卑猥な音と共に一気に葉子の中に突き立てる。
「あはぁぁぁぁっ・・・!」
悲鳴とも歓喜ともとれる声で葉子は啼いた。
先程の余韻の残る葉子の中は柔らかくて温かくて、適度にきつくて。
ぎしぎしと派手にベッドを軋ませながらリバース・ハーンは何度も葉子に打ち付けた。
その度に仰け反る喉元とか。
リバース・ハーンの首に回された腕に篭る力とか。
もう何もかもがない交ぜに愛しすぎて堪らない。
「やっ、ダメっ・・・あ、りば、す君・・・っ、イちゃ・・・イっちゃうぅぅ・・・っ」
殆ど喘ぎに掻き消されている葉子の切羽詰まった声。
同じくリバース・ハーンもそろそろ限界だった。
「綾小路、さんっ・・・好きだ・・・っ」
「あっダメ、はぁはぁっ・・・ダメぇぇぇっ!!」
「くぅ・・・っ」
思い切り突き上げた瞬間、葉子の内部がきつく収縮し絶頂を迎えたことが分かる。
その刺激でリバース・ハーンも達した。
今夜2度目の絶頂は、じっとりと重くて甘いものだった。





彼方に見える地球では。
まだ彼等が戦っているのだろう。
逃げた?
自分達は逃げたのか?
だけど葉子はオリジナルが傍に居ればそれで良く。
またリバース・ハーンは葉子が居ればそれで良かった。
未だ未来は全く見えないけれど。
ひっそりとここで生き。
ひっそりとここで死ぬ。
そうだ、まだこの月は安全だ。


この後真に訪れる幸せも知らず。
二人はまだこの月という星の上で偽りの幸せを必死に繋ぎとめる。











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えーっとハーン×葉子前提のリバース×葉子・・・みたいな?
シリアス書いちゃってちょっと苦しい上に、悪趣味なモン書いちゃったんじゃないかと心配しています。
結局オリジナルにリバースは勝てないのか。そんなことはないと思うんだけど葉子はやっぱりどっかで八雲が好きなんだろうし・・・。
複雑。ていうかうちがリバースもオリジナルも好きだから複雑になるんだけど。
因みに時期は葉子とリバース・ハーンが二人で龍皇城へ行ってから舞鬼が目覚めるまでです。
そんなに長い時間舞鬼が寝てたとも思えないけど、それでも時間はそれなりに経っているはずなので・・・。
お題またしても勘違い気味ですかねぇ・・・。