001/ほおづえついて





どうしても、どうしても。
必要だったわけで。
「・・・だからって普通自分で試すかぁ?」
呆れた声で僕を見た。
まあ、そりゃ呆れもするかな。
効果の分からない薬を飲んだんだから。
「じゃあ、お前に試せばよかったって言うのか・・・?」
力無く机に突っ伏しながら、今飲み干した試験管を見る。
薬作るのって難しいんだなぁ・・・。
「・・・クリフの調合のレベルが低いから悪いんだろ」
僕は苛々としながら言った。
殆ど八つ当たりだって分かってる。
でも言わずにはいられなくて。
「人の所為にすんなよな」
心なしかクリフも苛ついた口調で返してきた。
その言葉が突き刺さる。
僕が悪いんだけど。
「・・・・・ごめん」
素直に謝ったらクリフもちょっとばつが悪そうに頭をかく。
どうしてもクリエーターのスカウトに必要だからって、コストを下げに下げた薬を飲んだら副作用があるに決まってるよな。
だからって僕は自分達で作り出した怪しげな薬を誰かに試すなんてどうしても出来ない。
「まぁ・・・その、なんだ。そのうち元に戻るって」
「・・・無理して慰めてくれなくてもいいよ」
溜め息をつきながら僕は鏡を見る。
嗚呼。
僕は若返り薬(ニセモノ)を作っていたのに・・・。
何処を如何間違えて女になる薬を作っちゃったんだろう・・・。






フェイトとクリフはそのままファクトリーで夜になるのを待って、部屋に戻ることにした。
フェイトにとって幸いなことに、クリフとは同室だった。
実は2人は仲間内でも公認の仲。
改めて恋人、とか言うとなんだか気恥ずかしい気もするが、まあそういう関係だ。
だから、とりあえず今晩は誰にばれることも無い筈と二人は考えていた。
その予想通り夜遅く帰ればもう誰も起きてはいなかった。
それでも二人して足音を極力立てない様に気をつけつつこっそりと部屋に戻ったわけであるが。
「フェイト、明日までに戻らなかったらどうすンだ?」
「・・・」
そこだ。
帰って来る時もフェイトはずっと考えていた。
今は凌げても、明日は?明後日は?
この体が男のものに戻る保証も無いのに。
「・・・とりあえず戻らなかったら・・・・・・明日は風邪引くことにするよ・・・」
「そうか」
クリフにもそれ以上の妙案は無いらしい。
特に反論もすることなく黙り込んだ。
「・・・あ、あのさクリフ」
「うん?何だ」
「悪いんだけど・・・ちょっと廊下に出てくれる?」
フェイトの言葉にクリフは首をかしげた。
「何でだ?」
「あの・・・その・・・着替えたい・・・、から・・・」
我ながら恥ずかしい申し出だと思った。
普段ならばそんなこと気にしないが、流石にこの体をクリフの前に晒すのは気が引ける。
一瞬今着ている服のまま寝ようかとも思った。
だが、情けない話だが今着ている服だと胸が圧迫されて苦しいのである。
「・・・あ、ああ・・・そっか。悪ィ」
と、立ち上がりフェイトに背を向けた。
はぁ・・・やっと脱げる。
ちょこっとフェイトが安堵したのも束の間、クリフはふと立ち止まりくるりと踵を返してきた。
「・・・何?」
「いや良く考えたらよ、別に気にするこたぁねェだろ」
「え?何でだよ」
なんだかクリフの嬉しそうな表情。
嫌な予感がする・・・。
「俺らの仲って普段から公認だろ?んじゃ、俺がお前のカラダ見ようと何ら問題ねェよな?」
「ぼ、僕にはあるよ!こんな情けない姿見られたくないし!!」
「俺は見たい」
信じられない台詞をぼそっと吐いてクリフの手が僕の腕を捕まえた。
そしてすかさずフェイトの腰に腕を回し、ちょっと強引気味にキスされた。
「っン!?・・・ふは・・・っ、ちょっ、何考えてるんだよ・・・!!」
必死でクリフの胸を押し返し離れようとした。
だけど・・・。
「おいおい、嫌ならもっと本気で抵抗しな」
ニヤニヤ笑いながらクリフの奴はフェイトの腕を取ると、壁に押し付けた。
もの凄い力でびくともしない。
そんな馬鹿な。
いくらクラウストロ人だからってこんなにフェイトとの力の差がある訳ない。
フェイトが本気で抵抗すれば振り解けるはずなのに。
ぞくりと戦慄が走った。
女になるって・・・こういうことなのか?
「ちょっ、クリフ・・・!僕は今女なんだぞ!!お前に敵うわけないだろ!」
体を押し付けてくるクリフの耳元で精一杯怒鳴ってやった。
「耳元で喚くなよ」
「お前が!!お前が、僕の話きかないからだろっ・・・ン、こらっ」
抗議の最中にもクリフの好色な手がフェイトの胸を更に服の上から押しつぶす。
それは言いようの無い感覚で。
「やっ・・・ちょっと、止め・・・、うわ・・・っ」
ありえないありえない。
クリフの手が胸を揉みしだくたびにフェイトは変な気分になる。
「こーいうのも興奮すんな。お前あっちこっち超やーらけェ」
「〜〜〜〜〜馬鹿!!!もう、放せってば!」
「嫌だね」
不敵に笑って見せると、クリフは素早くフェイトの上の服のファスナーを下ろした。
圧迫されてた胸が開放されるほっとしたような感覚と、続いて沸き起こる激しい羞恥。
「見られた」こともそうなのだが、初めて目にする女性の胸にフェイトは自分のものであるということも忘れ頬が熱くなる。
「へーェ、結構あるな。どれどれ・・・」
「やっ!触るな・・・っア、あンっ・・・」
直に強く掴まれた。
興奮したような息遣いが首筋を伝わる。
視線を下ろせば他人の物のように見える胸がクリフの手に遊ばれていて。
・・・なんて、光景だ。
「あっ・・・あっあァ・・・やァ・・・っん、クリフ・・・はあっ、あっ」
「イイか・・・?フェイト」
荒い息と掠れた声で囁かれた。
クリフの興奮したようなこの囁きに、フェイトは何か体の奥から溢れてくるものを感じる。
それはとろりとした感触を以って下腹部を濡らす。
「や・・・っ、なんか・・・はぁ、ン・・・溢れて・・・あっあっ・・・」
焦れったいような疼きを感じ、無意識にフェイトは膝を擦り合わせる。
その疼きはクリフが乳首を弄ぶ度に押し寄せてきて。
「あン・・・っダメ・・・はぁ・・・っ僕、立って・・・られ、な・・・」
崩れ落ちそうになる足下を何とか支えながらも限界をクリフに伝えた。
苦しそうなフェイトの声を聞き、ゆっくり離れたかと思うと。
「わっ・・・!」
傍らのベッドに少々乱暴に押し倒された。
のしかかられて上の服を脱がされる。
そしてフェイトの腰の間を跨ぎ、自分も上の服を脱ぎ捨てた。
「・・・」
目の前のクリフの股間が目に入り、フェイトは息を飲む。
(・・・あんなに大きくなってる・・・)
クリフとは3日と置かずほぼ毎日のようにセックスしているし、もともと自分にもあるものなのだから見慣れてる・・・筈なのに。
(なんか・・・恥ずかしいな・・・)
今自分にはソレが無いのだと思うと、妙に異質なものに感ぜられて変に意識してしまう。
それを悟られたくなくてクリフから視線をそらした。
すると、そっと頬に手が触れて。
「・・・フェイト」
「あ・・・ゥ、ふ・・・うン・・・」
名を呼ばれたと思ったら、唇を押し付けられていた。
ぬるっと舌が滑り込んできてフェイトの口内を柔らかく犯す。
何度も角度を変えて息が切れるほどの深いキス。
飲み込みきれず溢れた唾液がフェイトの顎を濡らした。
「んっ・・・んン・・・っ・・・ふは・・・あっ、クリフ・・・ん、ンふ・・・っ」
銀の糸を引きながら離れる唇。
フェイトに投げられる視線は何処か苦しそうに熱く、強い。
そっとクリフの舌先が顎に触れた。
唾液の跡を伝って首筋をなぞり、手は胸を包み込む。
「やっ・・・ア、ああぁっ・・・クリフっ、あぅ・・・っ」
勃起して敏感になった乳首を指先で弾かれると足先が痺れる様だ。
軽く摘まれたり、舌先で弄られるとますます溢れさせてしまう。
乳首を舌で愛撫しながら、そっとフェイトのズボンの中に手を入れたクリフは、それを発見しにやっと笑った。
「すっげ。ぐちゃぐちゃ」
その一言でフェイトの顔がさっと赤くなる。
「女になっても感じやすいトコ変わんねーのな」
「やっ・・・馬鹿、ちょっ、やめっ・・・やだ・・・っ!」
指先で割れ目を軽くなぞるとフェイトの腰がしなった。
「あっあっ・・・ヤダ・・・、なに、コレ・・・っ」
クリフの指が尖り始めたクリトリスを柔らかく引っ掛ける度に体の奥が脈打つような。
にゅるにゅると擦られ、言いようもない快感にフェイトは足を強張らせてもがく。
そうしないと息が止まってしまいそうだ。
呼吸すら出来ないほどの、この快感の波に触られて。
「暴れんなよ」
ばたばた暴れるフェイトの足をクリフの腕が押さえ込む。
そしてそのまま、捕まれた足は持ち上げられてクリフの肩の上に乗せられてしまった。
「うわっ・・・!!」
自分がどんな格好をしているか気付き、慌てて手で隠そうとしたがその手も捕まえられて。
好色な視線が突き刺さり、頬が熱くなる。
そのままクリフが身を屈めて来てフェイトの心臓が跳ね上がった。
まさか、と拒絶の台詞を口にする前に生温い柔らかなものをぬるりと感じる。
「ああああっ・・!やっ、やめ・・・あっあっ・・・はぁぁっ」
クリフの舌が容赦なく割り込み柔らかい粘膜を抉り、卑猥な音を響かせている。
その原因が半分以上自分の体内から溢れてくる体液によるのだろう。
「あぁっ、あっあっ・・・ンっ、はぁっ・・・あは・・・あぁぁ・・・っ」
舌がぴちゃぴちゃと粘膜を撫でる音が恥ずかしくて堪らないのに自然と腰が浮き、もっともっと奥まで欲しいと無意識にクリフの頭を押さえるように手が動いてしまう。
「ひィ・・・っはぁはぁ、あっア・・・んっ、イイ・・イイよぅ・・・っア・・・ああっ」
執拗な愛撫にフェイトの体がピクンと跳ねた。
それを見て取ったクリフはゆっくりフェイトから離れ、フェイトを覗き込む。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・な、何だよ・・・」
いきなり開放されたことを不思議に思いながらフェイトもクリフを見上げた。
乱れた呼吸を整えようと深く息をする度に、乳房が柔らかく上下するのがクリフの目に入る。
それをそっと手で包み込んだら、見下ろすフェイトの表情が歪んだ。
声を押し殺すように苦しそうな顔で。
それが堪らなく色っぽい。
込み上げる笑みを隠そうともせずにクリフはフェイトの耳元で囁いた。
「今軽くイったろ?」
好色そうな笑いを含んだ声で。
からかいを含んだ言い方にフェイトは言い返そうと口を開きかけたが、その後に続いた言葉。
それが。
「俺もイきてェ・・・なぁ、最後までいいか?」
とても真摯で真剣に聞こえたので。
そして何より耳元で囁かれたその声がちょっと掠れ気味の、非常にそそられる声だったので。
フェイトは何も言わずただ返事の代わりにクリフのベルトに手をかけた。
慣れた手付きでベルトを引き抜き、改めてその昂ぶりに触れてみて苦笑する。
「・・・苦しそうだな」
「あぁ、さっきから痛ェくらいでよ。早くしてくんねーか?」
「ちょっと、待って」
ベルトをベッドの外へ放り投げファスナーを下ろしてそぅっと手を差し入れる。
先ずその熱に少しだけ戦き、普段なら普通に触れたり口に入れたりしているソレが異質なものに感じてどきりとした。
軽く上下に扱くとクリフの体が強張るのが分かって嬉しかった。
クリフはフェイトの手を優しく解くと、フェイトの足の間に割ってはいる。
「力抜けよ」
「う・・・うん・・・」
足の間の熱い感触。

―――ヂュプ・・・っ

「っや・・・!いった・・・・・・・・!!」
生まれて初めて迎え入れるソコはクリフの大きさに戦いて。
「うわ・・・キツいな・・・っ」
「っ・・・痛いって・・・、っかァ・・・は・・・・っ」
呼吸が乱れて大きく胸が上下する。
薄っすらと目に涙が溜まりその目でクリフを見上げると、困ったような顔で見下ろしてくる。
「そんなに・・・痛ェ、か?」
「っんん・・・っでもっ・・・抜かれるのも困る、っから・・・、早く終わらせて・・・っ」
健気な答えにクリフは笑って、フェイトにキスをした。
「あっあっ・・・はぁぁっ・・・」
抉じ開けるように沈み込んでくるクリフを感じながらフェイトは思い切り爪を立てる。
重い圧迫感はフェイトの呼吸すら妨げるけれど、荒い呼吸の合間に聞こえる喘ぎは苦痛のものだけじゃなかった。
「んっ、あン・・・っはぁはぁ・・・あぁぁぁぁ・・・っ」
「はぁ・・・はぁ、ほら、全部・・・入ったぜ」
きつい処女の膣壁がぎゅうぎゅう締め付けることに顔を顰めながらフェイトの頬を撫でる。
ほっとしたように溜め息を吐くフェイトは、すこし伏せ目がちで何だかとても色っぽく見えた。
クリフはごくりと喉を鳴らして耳元で囁く。
「悪ィけど・・・俺もう我慢できね・・・っ。ちょっと、我慢な?」
「えっえっ、あっああっ、やぁぁン・・・っ!」
まだ体に馴染まない異物が乱暴に引き抜かれ、そしてまた押し込まれる。
「ひっ・・・ぅぐ・・・っはぁあっ、やっ、待っ・・・っく」
痛いんだか気持ちいいんだか分からない。
でも。
「あっあっ・・・はぁぁ・・・っひァっ・・・あっ」
甘い声。
痛いだけじゃない。
腰を動かしながら夢中でキスしたらフェイトも応えてくれたので。
「クリ・・・っフ・・・僕、何か・・・っあっあぁぁぁ・・・っ」
「イくか?いいぜ、イっちまえ・・・っ」
「あっあっ・・・あぁぁあぁぁぁぁっ!!」
一際大きくフェイトの体が跳ね上がり、中がビクビクと波打つ。
一呼吸遅れてクリフも。
余韻の残るフェイトの白い腹の上に白濁した粘液をぶちまけた。





「・・・最低」
朝起きてフェイトは一言そう言った。
「今日は風邪引き決定だなぁ・・・」
クリフも困った表情を浮かべる。
そう、フェイトの体はまだ戻っていないのだ。
いつもの服は胸がきついので、クリフの服を着て。
拗ねた様な表情でベッドに座り込む姿は非常に可愛らしい。
「どーしろって言うんだよー。普通こういうのって一日したら直るだろっ!!」
「・・・俺に言うなよ・・・」
ぎゃんぎゃん騒ぐフェイトを宥めつつ、クリフはこれはこれで美味しいかもと思っていた。
勿論口には出さないが。
「・・・何ニヤけてんだよ、クリフ・・・」
「えっ!?いや、ニヤけてなんかねぇよ!!!」
「・・・(疑いの眼差し)・・・はぁ、まあいいや。それよりクリフ」
盛大に溜め息を吐き、フェイトはクリフを見上げた。
「レベル低いお前に頼むのは嫌だけど、この際仕方ないよな。僕が男に戻れる薬作ってきて。今日中に」
「はぁ!?何で俺が・・・!」
「だって動けるのお前だけだろ。僕は今日風邪だもん。じゃあ、宜しく!」
そう笑顔で言って、フェイトはクリフを部屋から追い出した。
丁寧に鍵も掛けて入れないようにする。
外でクリフが何やら叫んでドンドンとドアを叩く音は聞こえないことにした。


「あ、クリフー。お昼は何か買って帰って来てねー。僕餓死しちゃうからー」












そしてクリフはファクトリーで。
「レベル低い俺がどうやって薬なんか作れるっつーんだよ・・・!」
ほおづえついて、一つ溜め息。
















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うーん、女になってもメゲないフェイト。ストップ・ザ・メゲメゲ!
これ次のお題【秘密】に続きます。
だってほら、男に戻らなくちゃ、ね?
これ「ほおづえついて」って題なのにほおづえつかすの忘れてアップしちゃいました。
ごめんなさい。
最後の最後のやつ入れるの忘れてたー(阿呆・・・