4連敗はしたものの

 芥川賞作家で、大の阪神タイガースファンとしても知られ、一昨年ベストセラーとなった「博士の愛した数式」の著者である小川洋子さんが、「デイリースポーツ」紙面に『阪神物語』というショートコラムを連載されている。10月27日のコラムに、次のようなことを書いておられた。

 
26日、今日だけは勝たせてくださいと神様にお願いしたけれど、聞いてはもらえなかった。
「ああ、2005年の日本シリーズ、屈辱的な負けを喫したことには、こんな意味があったのか。
今日のこの日のために、あの4連敗があったのか」
 そう思える時がきっと来る。
 今のタイガースは、負けてただしょんぼりするだけのチームではない。
もっと高いところを求めて上昇してゆくチームだ。
だからこそ、ファンが弱気になる必要などない。
 ましてや短気を起こしてはいけない。
私たちファンは、待つこと、耐えることには慣れているはずだ。
今年の日本シリーズがどんな結果で終わろうとも、
今シーズン、タイガースの選手たちが見せてくれた無数の素晴らしいプレーが、
消えてなくなるわけではない。
 私たちは何度、アニキのホームランに狂喜しただろうか。
今岡のバットに救われただろうか。
藤川の速球に見とれ、下柳の闘志に心揺さぶられ、赤星の怪我を心配し、
中村豊の活躍に驚き、濱中の復活に涙した。
 タイガースからもらった多くの喜びは決して色あせない。
だからやはり最後は、感謝で締めくくろう。

    「ありがとう」

 もしファンが(選手たちに)プレゼントできるものがあるとしたら、この一言だけだ


 小川洋子さんは岡山県生まれ、金光教の信仰に深いかかわりの中で育たれた。私はこのコラムに登場する「神様」がどんな神様を指すのか、が手に取るようにわかり、とても清々しく思うとともに、この方がやはり神様とともに生活されているんだなあ、ということを感じて嬉しく思った。

 私たちはさまざまな場面で神様にご都合、お繰り合わせをいただけますようにとお願いをする。この「ご都合・お繰り合わせ」が「自分だけに都合のいいように」と願う方向を間違えていないだろうか。個々の人間にとって、そうそう都合のよいことばかり続くということは考えにくい。むしろ、都合の悪いことが続く場合の方が多いのではないか。その時こそお繰り合わせを頂くチャンスであり、自分に取って都合の悪いことが続いたことが、後の成功につながった時、大きな喜びを生み出すことになるのである。

 わが愛する阪神タイガース。なによりもセントラル・リーグの覇者ではないか。今年もたくさんの選手が私たちに感動をくれた。この選手たちに「ありがとう」の感謝の言葉を述べずにはおれない。春先からこの間まで、楽しませてくれた選手・そしてチームに「ありがとう」。

 阪神タイガースは1987年〜2001年までは、一部の年を除き暗黒の時期を過ごした。今や世界一のファンを擁する、日本を代表するチームになった。今年のシリーズ4連敗の屈辱を忘れることなく、悲願の日本一をつかみ取って欲しいと、小川さんと同様、私も念願している。

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