「好き」と「ありがとう」     近藤佐枝子      

先日、「崖の上のポニョ」という映画を見た。見終わって、ただこの映画好きだと思った。
 かわいくて純粋なところに心惹かれた。「好き」と「ありがとう」というまっすぐな台詞がとても印象に残っている。そんな感想だけなのだが、逆に難しいことを全く考えずに、そんな感想だけが残る作品に出会えたことに、とても感謝している。

 この映画では、「好き」だから大切に思い、「好き」だから頑張れる。「好き」だから感情が揺れ動き、「好き」だからどんな困難にもたえられる。そんな五歳の男の子の様子が描かれ、そして、最後は「ありがとう」なのである。
 人間にとって、好きだと思う対象があるということは、どんなに幸せなことであるか、それをありがたいと思える自分でありたいと思った。そして、好きだとあり続けることも、好きってことが習慣になってくることも、幸せなことだと感謝できるような自分でありたいとも思った。
 
 あるインターネット上で日記を書いていた人の話である。その人はどちらかといえば否定的な日記を書く人で、無意識のうちにそれが習慣になっていたらしい。ある日、自分の日記を読み返したときに、イヤなことばかり書いてあることに愕然としたそうだ。だから、否定的なことを書くことをやめようと思ったら、書くことがなくなってしまったというのである。

 「嫌い」とか「嫌だ」ということが習慣化されてしまうと、「好き」だとか「楽しい」とか思う方法を忘れてしまうのだ。
 だからこそ、この映画の男の子達のように「好き」「ありがとう」を心がけて習慣になるような自分でありたいと思う。そしてそれが、人間の生き方の根底にある物だと思う。




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