すべてがおかげ    近藤佐枝子

 年明けに、学生時代の友人と久しぶりに会った。私には、色々考えていることがあって、聞いてもらおうと勇んで会いに行ったのだが、私が話せなくなるほどの体験を一人の友達がしていて、それでもとても前向きで、逆に元気をもらって帰ってきた。
 彼女は去年離婚した。それまでに不妊で悩み、不妊治療をうけていたのだが、それをやめ、夫婦二人で生きていくのも悪くないと言っていたのに…。原因は色々あるだろうし、他人のわたしが言うつもりはないが、とにかく彼女は家を出た。離婚が成立するまでに半年かかった。彼女は私と同じ、甲状腺機能低下症という病気なのだが、家を出たため、転院しなくてはいけなくなり、そこで再検査を受けると、甲状腺にがんが見つかった。手術をうけるということまで話を聞いた。それに加え、身内にも問題を抱えていた。
 ざっと彼女の上に、一年間に起こった事を書いてみた。すごい一年だっただろうに、彼女は誰を責めるのでもなく、すごく前向きだった。がんになったのも、「体を休めなさいってことだろうし、2〜3ヶ月ゆっくりするわ。だから私に相談があったら、今のうちやで」なんて言っていた。彼女の持論は、ひとつひとつの積み重ねの上に今があるから、今あるのは過去のおかげ。だから後悔しないということ。今辛くても、これは未来のため。すごいなと思った。
 私はその頃、幼稚園の用事と教会の両立で悩んでいた。他の人との用事に対する温度差でも悩んでいた。幼稚園の役を受けなければよかったと後悔していた。でも、彼女の話を聞いて、悩んでいる自分が恥ずかしくなった。こんなに悩んでいるのだったら、なんらかの形でおかげを頂きたいと本当に思った。でも事態は全くいい方には進まず、色々なことを抱えながら卒園となった。
今思えば、人間には難儀な面が必ずあるということ、だからこそ、神様を離しては、たちゆかないということがわかったし、何があっても他人を責めないということ、自分が黙り、そのエネルギーを祈りに変えていくことの大切さを実感できた。これこそおかげかなと思う。
先日、彼女から退院したというメールがきた。本当、おかげを頂いた


 
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