しっかり考えて  教会長

 以前、本誌でも取り上げた『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』という本の中で紹介されている『あたりまえ』という詩を題材に、私たちが当たり前やと思っていることが、実は奇跡の連続だという話を授業でしました。この本の作者、井村和清さんは、大阪の病院で内科医をしているとき、右足が骨肉腫に冒され、切断手術を受けられます。その後、医療現場に復帰されるも、半年あまりで両肺にがんが転移。自らの余命を半年と悟る中、妻と残された一歳半の娘、そして妻のお腹に宿った、自分が生きている間に会えない、まだ見ぬわが子のために、その命を精一杯生きられ、「人間は『あたりまえ』だと思っていることを、なにより喜ばなければならないんだよ」という思いを詩に託した二十日後、三十歳の生涯を終えられました。

 一方、金光大阪高校の第4期卒業生、奥記代子さんは、ミュージカルスターを夢見る高校三年生の夏、左足に筋肉腫を発症します。彼女は医師から「足を切断すれば5年以上生きられる。しかし、切断しなければ半年の命」と宣告されます。医師や両親から切断手術を強く勧められる中、彼女は「自分は舞台で踊ることが夢。足を切って踊れないなら死んだ方がまし。夢を叶えたい」と、切断をせずに、きつい抗がん剤治療と闘いながら、舞台で踊る夢を実現します。しかし、夢を実現した後の十九歳の夏、彼女は生涯を閉じます。

 高校2年生の生徒たちに「井村さんと記代子さん。どちらがいのちを大切にした生き方をしたかな?正解はないけど、それぞれの中で考えて見てほしい」と問いかけ、少しだけ私の見解を述べて授業を終わりました。
 十代の今だからこそ、しっかりといのちの大切さを考えてほしい。切なる私の願いです。


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