神様がおった

  平成18年も、昨年に続き阪神が快調なシーズンを走っている。読売との首位争奪シーズンは、なんと30年ぶりのことらしい。そんな中、5月28日には、ついに首位に躍り出た。まだまだ予断は許されない状況であるが、やはり首位にいるってことは心地よいものである。
 
 さて、阪神における今年の春の話題は、何と言っても金本知憲選手の「連続試合フルイニング出場世界新記録樹立」であった。904試合、フルイニングで出続けるという前人未到の大記録、言葉では言い表されないくらいの感動と、元気を与えてもらったような気がする。
 この時、大阪ドームのセレモニーで金本選手は、「自分に野球を与えてくれた神様に、そして強い体に産んで育ててくれた両親に感謝します」と述べている。金本選手のいう「神様」が、彼にとってどんな神様であり、どのような存在なのか、気になりつつも素晴らしいコメントだなあ、とますます彼に対して尊敬の念を抱くようになった。こんなに素晴らしい選手がいるチームでプレーできる阪神タイガースナイン、そのチームを応援できる阪神タイガースファンは本当に幸せである。

 その金本選手が語る「神様」がどんな神様なのか、がわかる日がやってきた。5月20日(土)、甲子園球場で行われたセ・パ交流戦、「阪神対オリックス」1回戦である。阪神の先発は福原、オリックスの先発は川越、緊迫した投手戦は、7回まで1−0で阪神がリード。しかし7回表、オリックスの主砲、中村紀洋が逆転ツーランホームランを放ち、阪神は一気に劣勢ムードに。オリックスは勝ちパターンの投手リレーをかけてくる。9回裏2−1で阪神は後がない。オリックスは抑えの切り札、大久保の熱投が阪神の息の根を止めようとしていた。阪神の攻撃も2アウトランナーなし。打者は金本。先の読売戦で痛めた、右手薬指突き指の跡が痛々しい。ファウルで粘るなど、6球目まででカウント2−3。大久保が投じた7球目の変化球を金本は空振り……。ラジオ実況のアナウンサーも「空振り三振…いやいや、ファウルチップファウルチップ。キャッチャーミットからボールがこぼれています」と絶叫。その時、金本選手は心の中でこう感じ、そしてつぶやいたらしい。

             『神様がおった…』

 大久保が投じた8球目。右手指の痛みをこらえながらも金本選手は渾身の力を込めて、バットを振った。打球はタイガースファンで埋め尽くされたライトスタンドめがけて一直線。割れんばかりの歓声がマンモス甲子園に響き渡った。「起死回生」とはまさにこのことであろう。

 延長戦に突入し、迎えた10回裏。シーツ選手がサヨナラスリーランホームランを放つ。劇的なタイガースの勝利に私は、ただの一勝であるにもかかわらず、優勝の瞬間に似たような感動を覚えた。
 この日、テレビ解説をしておられた阪神OB・真弓明信氏は、深夜の「虎バン」という番組で、金本選手の「神様がおった」について、「あの言葉は、努力しつくしているからこそ、出てくる言葉ですよね」とコメントされていた。それに対し、ABCテレビの清水次郎アナウンサーは、「そうですよね。神様は努力を怠らない人に味方をしてくれるんですね」と答えておられた。

 神様は努力を怠らない、そして「神様」の存在を信じている人に対して、ものすごい力を与えてくださる。この日の金本選手が、改めて神様のように思えた。どんなことがあってもあきらめず、努力を怠らない人間として成長していきたいと、思いを新たにさせられる出来事であった。

6月13日現在、金本選手は955試合連続フルイニング出場。毎日が世界新記録ってすばらしい。

(敬称略。本文内の記録・資料はABCテレビ『虎バン』の視聴を参考にしました)

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