祈ることと求めること     近藤佐枝子

 ダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントをご存じだろうか。何人かのグループで、真っ暗闇を探検し、体験するというものだそうである。一口に真っ暗闇といっても、普段私たちが体験するような、目が慣れてくるとある程度見えてくるようなものではなく、暗黒?漆黒?といったかんじの、まったく目が慣れないような闇の中なんだそうである。私は、このことを又聞きの又聞きの又聞きぐらいで聞いたので、まったく知識がないのでHPで調べてみた。視覚以外で物を見るといった趣旨のことが書いてあった。そしてグループを先導して下さるのが視覚障がい者の方であり、その過程のなかで、視覚以外の感覚の可能性や心地よさ、そしてコミュニケーションの大切さ、人のあたたかさを感じるものなんだそうである。

HPには体験された方の感想が書かれてあり、「体験した後、光が不快に感じた」というものがあったのには驚いた。ざっと感想を読んで感じたことは、私たちの目を通して入ってくる情報があまりにも多いということ、そしてそのことで、色々な先入観や差別意識などが生まれてくるんだということ。目が見えないという状態になると、他の感覚が研ぎ澄まされ、匂い、音、触覚などで見ることができるということがわかった。神様ってすごいと思った。そういうお働きまでも与えて下ってるのだから。

そして、ここからは、私の想像でしかないが、こういう状態に置かれたとき人間は、他に求めるのではなく、助け合うんだろうなと思った。お互いがお互いを助ける。そこに人のあたたかさを感じるんだろう。だからこそ、このイベントで感じられるものが、人のあたたかさなんだろうなと思った。

そんなことを考えている中、ふと思ったことがある。私たちは、求めることと祈ることを混同していないかということを。相手の助かりを祈る中で、自分の思う理想を相手に押し付けていないかということを…。

先日、「トンマッコルへようこそ」という映画を観た。朝鮮戦争のさなか、世の中とかかけ離れた秘境中の秘境の村を中心にしたストーリーである。その中にこんなセリフがあった。自分たちの生活を一変させた(いわば乱した)人たちに対する会話である。

「おれの目にはみんなイイ人に見える」

「兄貴は人を見る目がないね」

「ああだから俺の話は軽く聞き流せばいい」

私はストーリーもさることながら、この会話に惹かれてこの部分を何度も観た。

求めることと祈ること。ここにその意味が隠されているような気がするのだがどうだろうか。

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