中途半端やなあ  〜三重県って何地方?〜

  近、「秘密のケンミンショー」という番組をよく見ます。何ヶ月か前、『辞令は突然に』というコーナーで、三重県に転勤したサラリーマン夫婦のことを取り上げていました。また別の日、「おにぎりに巻く海苔は、『味付け海苔』か『焼き海苔』か?その境目はどこか?」という話題で、三重県がクローズアップされていました。日本の真ん中へんにあり、人口も47都道府県中、ちょうど真ん中あたり。田舎なのか、都会なのか?
 ところで、三重県って「日本の地方」の中で、「近畿地方」「中部地方」「東海地方」のどれになるかご存知ですか?

 
正解は…


どれを選んでも正解です…ほんま、中途半端やなぁ(こんなギャグを言っていた、“ちゃらんぽらん”な漫才コンビも、今は解散してしまいましたね)。

 
地方区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中四国・九州沖縄)に分けると、近畿地方に分類されます。中学校社会地理的分野の教科書では、三重県は近畿地方と学習します。
 しかし、9地方区分(北海道・東北・関東甲信越・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州沖縄)では、東海地方に分類され、東海と北陸を併せて「中部地方」という区分になるため、「中部地方」とも言えるのです。このように、地方区分があいまいな県は、全国で山梨県と三重県だけだそうです(山梨は関東か中部かあいまい)。

 中でも三重県は県域によって、生活や経済文化圏がずいぶん異なります。
 三重県の大部分を占める、北勢・中勢および南勢・志摩(桑名・いなべ・四日市・鈴鹿・津・亀山・松阪・伊勢・鳥羽・志摩の各市域と東紀州の尾鷲市以北)は、交通の関係から名古屋とのつながりが強く、新聞は中部本社版発行、テレビは中京圏の放送局を視聴しています。

 それに対し、伊賀地方は大阪圏とのつながりが極めて強く、新聞は大阪本社版発行、テレビは…これが本題なので、後に記述します。ちなみに東紀州南部(熊野市周辺)は、和歌山南部との結びつきが強く、新聞は読売新聞を除き、大阪本社版が発行されます(毎日新聞の地方面は、「いが・くまの版」となっています)。

 
て、テレビの放送エリアというのは、総務省が定めた圏域(県域)の、規定のテレビ局の電波を受信して視聴するきまりになっています。その中で、近畿2府4県は「近畿広域放送圏」に含まれ、生駒山上から発射されるNHK総合大阪、毎日、朝日、関西、読売の各放送を視聴する決まりになっているのです。その他、それぞれの府県にある独立UHFローカル局(テレビ大阪、KBS京都、サンテレビなど)は、当該府県のみ、視聴してもいいことになっています。逆に言うと、大阪の人が兵庫の県域放送である「サンテレビ」を見ることは、問題なのだそうです。とはいえ、電波は県域など関係なしに飛んできますので、標高1000メートル近くの摩耶山上にあるサンテレビ送信塔から発射される電波は、大阪府全域はもちろん、なんと島根や岡山西部、高知や徳島、福井や石川県の一部まで飛んでいるそうです。私が住む名張市も、ケーブルテレビの再送信を通して、サンテレビを視聴することができるのです(当該区域外へ電波が飛びすぎることを、の専門用語で「スピルオーバー」といい、地上デジタル波になると、これが抑えられるそうです)。

 
述の通り、関西との結びつきがとても強い伊賀地方は、テレビ放送開始当初より、生駒から送信される近畿圏のテレビを視聴してきました。ところが、元の郵政省(現・総務省)が「伊賀は三重県なので『中京広域放送圏』のテレビを見なさい。ニュース取材は、名古屋から向かいます。」との指導があり、昭和40年に、名張市と奈良県山添村の境目の山上に、名古屋方面のテレビの中継塔が立ち、NHK名古屋・中日・名古屋・東海・中京・三重の各テレビが送信されるようになりました。これにより、伊賀は日本国内でも珍しい、二つの広域放送が視聴できる“電波銀座”とよばれる地域になったのです。書店へ行くと、テレビガイドは「関西版」と「中部版」が並べて販売されています。同じように「関西ウォーカー」「東海ウォーカー」も並んで売ってます。

 しかし昨今、毎日のようにテレビが報じている「来年7月でアナログ放送が終了し、地上デジタル放送に完全移行します。」により、名張市では困った事態になってきたのです。というのは、地上デジタルの電波は性質上、アナログ波のように広域のエリアに届かないのです。つまり、生駒山からの大阪デジタルの電波は、地形の関係もあり、名張市内の多くの地域へ届かなくなったのです。(ちなみにお隣の伊賀上野市街地は、生駒からの電波を遮断するものがない地理的状況から、大阪民放デジタルの電波も今までどおり届いています)。実際、地デジアンテナで、大阪民放の電波を拾うことは、市内のほとんどで困難なのです。今まで視聴できたテレビが視聴不可能になる。デジタルに進化することで、不便を被る…。名張市民にとって、完全地デジ化など無用このうえないものなのです。

 
ちろん名古屋方面のテレビでも、主要な番組の視聴には問題ありません。とはいえ、名古屋市栄のお店や、豊橋市のパチンコ店や、岐阜県中津川市のスーパーのCMを毎日見せられても、名張市民には何の効果も意味もありません。つまり伊賀市や名張市は、国が定めたテレビの放送エリアと、実際の生活エリアが著しく異なる、特殊な地域なのです。

 地元住民や、名張市のケーブルテレビ局「アドバンスコープ」はここ数年、総務省や三重県、名古屋と大阪のすべての放送局に、近畿広域放送圏の「地上デジタル区域外再送信」を認可してもらえるよう、陳情と話し合いを繰り返してきました。そして、上記の「名張市は、規定の圏域放送エリア(中京広域放送圏)と、実生活エリアの著しく異なる地域である。市民の多くが大阪方面へ通勤通学し、大阪方面とのつながりが極めて強い。」ということが認められ、この8月1日、ついにその「区域外再送信認可」が下り、ケーブルテレビ加入者については、大阪各局のテレビ放送も「地上デジタル」で視聴できるようになったのです。これは大変な朗報であり、同じような局面の国内の他地域にも、大きな影響を与えそうなのです。

 
かし、完全地上デジタル化により、今までアナログ波で認められてきたKBS京都とサンテレビの再送信が、来年7月で打ち切られてしまうのです。「おっサンテレビ!」のスポットCMが、来夏で見られなくなってしまう…。近鉄電車は、神戸まで直通したのに、神戸からの電波が切られるとは、なんと皮肉な…。阪神ファンが特に多い、名張市民の多くは、サンテレビの視聴のためにケーブルテレビに加入している人も多いらしく、このことには私も落胆しています。
 
〔おまけ〕 サンテレビの社名の由来って、「サン(SUN)」は、兵庫の瀬戸内海側(S)と日本海側(N)を放送でつなぐ(UNIT)の(U)の組み合わせなんだそうです。

 ま、いずれにしろ「中途半端」もいいことがあるってことで。



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