星野SD騒動に思う

 

 それにしても、降って湧いたような「阪神・星野SD読売監督騒動」。いったいなんなんやろか。
ことの始まりは、8月半ばのスポーツ新聞見出しだったように思う。その日以来、全国5大スポーツ紙が、我先にとばかりに星野さんの読売行きか否か、を書き立て始めた。まず感じたことは、「シーズン中に節操のないことやるなあ。」と思ったが、ことは読売のことである。約一ヶ月前、読売はすでにセ・リーグの覇権争いから完全脱落していた。東京ドームに目立つ空席、読売戦テレビ視聴率の低迷=球界の低迷、と受け取られるようであるが、関西ではまったくその気配はない。甲子園は連日の満員、阪神戦中継視聴率は、安定して15〜20%を確保。「読売は自分たちがだめになれば、他の話で気をひいて新聞やテレビで常に球界の中心になりたがる。なんてやつらや。」 なんて思っていたが、なんのことはない。これは2001年暮れまでのわが愛する阪神タイガースの姿と同じではないか、と思い直した。
 関西の雄たる阪神、関東の雄たる読売。やはりこの2チームが強くなくては、そして覇権争いをしなくては、プロ野球の人気完全回復にはなりえないのではないだろうか。
 今年は中日が強い。少し差が開いたとはいえ、まだまだ油断は禁物。と思っている。と同時に気になることがある。優勝争いを一年通してきた阪神、甲子園球場はチケット入手がかなり困難で、もちろん対戦相手がどこであろうが連日の超満員。それはビジター球場の阪神戦にもいえることで、今後の日程にくまれている長崎、東京、名古屋、広島、倉敷、神宮のチケットもほぼ完売らしい。それに比べ、ナゴヤドームのチケットは阪神戦をのぞき、余裕で余っており、テレビ中継を見ても、阪神戦以外のスタンドには空席が目立つ。なぜ優勝争いに加わっているチームのフランチャイズスタジアムが、こんなに空席が…。阪神では考えられへんなあ。

 さて、本題に戻って、星野騒動。私は9月5日にABCテレビで放送された深夜の阪神応援番組、「虎バン」で生出演していた星野SDを見て、「読売行きは150%ない」と確信していた。いろんなところで話題になるが、その都度、「星野さんは絶対読売には行かへん」と、念仏のようにみんなに言いまくっていた。心のどこかで「万一、行きはったらどないしょ」なんて思いながらも、変に自信があった。
 生放送でこの番組に出演した星野SDは、放送中、騒動について全く触れていない。阪神の戦いぶりと優勝の可能性について、熱く熱く語っておられた。その表情・口ぶりからは「ああ、やはりこの方は阪神タイガースの一員なんや。わがチームとして考えてくれてはるんや」と受け取れ、誰がなんと言おうとも読売にだけは行きはるはずがないと。10日の記者会見でそれが明らかになったが、同時に、この一ヶ月余りの間に騒いでいた新聞各紙や、マスコミのええかげんさ、それに翻弄される大衆社会の構造に改めて怖さを感じた。
 私たちは、洪水のようにあふれる情報社会の中に、溺れそうになっている。でも決して溺れるようなことがあってはならない。数多あふれる情報の中から、真実を見いだす判断力を身につけねばならない。あれだけたくさんの星野SDに関する報道のほとんどが「虚言」だったわけであるから。
「見ること見ること、自分を見ること。聞くこと聞くこと、本当を聞くこと。(高橋正雄のことば)」