父の初盆によせて   副教会長

  先日、買い物帰りにふと思い立ち本屋に行った。道をまがった先に走っている車が偶然友人の車だったのに気づき後ろをいくと、やはり行先が同じだった。
久しぶりに会ったことを喜び、店内にある喫茶コーナーで色々話をした。その友人は読書家で、会えばよくお互いに読んでいる本の話をするような間柄だった。
その時も友人は本を探しに来たようでそんな話になったが、私は最近全く本を読んでおらず何も答えられなかった。そんな話の中、なにか本を読みたい気分に
させられたし、なんとなく焦りのようなものも感じた。

 数日後、本に対する熱も冷めていないうちに教会長から図書カードをもらった。早速書店に行きとりあえず自分の好きな作家の新刊本を一冊買った。
 その本を読んでいるとふと父のことを思い出した。父は読書と歴史が本当に好きで、たぶん私もその影響をうけてその両方を好きになったのだと思う。中学1年
生の夏休みに学校から初めて新書本の注文を持ち帰った時、父は私が欲しがった本を全部買ってくれたこともあった。そして父が美旗に住んでいたころは、私が
読み終わった本を2階の押し入れに入れてもらっていると、その本を出してきて読んでいたという話も聞いていた。父は読んだ本の話をよくしてくれた。
 そんなことを思い返しているうちに、ふと残った図書カードで私が思う父の好みそうな本を買って初盆の時に持って行こうと思った。できたらお供えしてもらいたい
けれども、それができなくても私のかばんの中に入れて拝ませてもらう。そしてその後、その本を読み始めようと思った。

 あの時友人に会わなければ父と本について思うこともなかっただろうし、教会長に図書カードをもらわなければ思いつかなかったと思う。そんな数々のお繰り合わ
せをいただいたことを喜びながら、私なりに父を偲ばせていただけたらと思う。そしてまた読書を始めようと思った。

 
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