アンパンマンに学ぶ    副教会長

 先日、漫画家のやなせたかしさんのインタビュー番組を見た。一度見ただけなので正確ではないかもしれないが、代表作「アンパンマン」に込めた思いを語っておられた。
 やなせさんご自身の戦争体験から、本当の正義とは?という思いで「アンパンマン」を描かれたそうだ。戦いでは立場や勝ち負けで正義の意味が変わってくる。それでは、すべての人に対して通じる正義とは何かと考えた時に、ひもじい人がいれば自分のものを分け与えて助けてあげることだと思われたそうだ。そこで誕生した正義の味方が「アンパンマン」。従来の正義の味方のように悪(といわれる者)を倒すのではなく、おなかすいた子どもたちに、自分の顔(アンパン)を分け与えていくヒーローなのである。

 「アンパンマン」の中には一応敵役として「バイキンマン」というキャラクターが出てくる。やなせさん曰く、この「バイキンマン」は人間の怠けたい心などを現わしたものだそうで、このお道でいう「我」のようなものなのだろうか。私は正義の味方「アンパンマン」と絶妙なバランスで存在しているように思った。
 そしてやなせさんは、大切なのは「アンパンマン」はなくならないということだとおっしゃっていた。どんなに困った人に自分を分け与えても、「バイキンマン」にやられても、一時的には弱くなったと思えるが、またしっかりと新しい顔を作ってもらって、復活させてもらえるということなのだ。人を助けたいという気持ち、正しくありたいという気持ちは、無尽蔵に次々とあふれ出てくるものだということだと思った。

 このインタビュー番組を見て、「アンパンマン」に込められた思いの深さに感銘を受けるとともに、信心のお手本は意外と身近なところにあるのかもしれないと思った。
 常日ごろから自分の中にいる「バイキンマン」とせめぎあいながら、困っている人、助けを求めている人に、物的なものだけではなくて、何かを分け与えてあげることができるように稽古を積まないといけないなと思う。そして、やなせさんの理想のヒーローであるアンパンマンに少しでも近づいていけたらと思った。
 
                        

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