三重県庁訪問 2001.11.21 |
【日 時】 2001.11.21(水) 午後13:30〜15:30 【目的地】 三重県庁 【メンバー】 カミサン、ご隠居(2名) 【内 容】 素人の中年夫婦に、何ができるだろうか? アポ無しで訪ねて、相手にしてくれるだろうか? 心配していても始まりません。 私たちが暮らす三重県での、クマたち野生生物の、森林の実態は、保護活動は・・・、 知りたいことばかりです。 まず一歩、自から踏み出すの心構えで出かけました。 (頼りない応援団、リキ丸も一緒です・笑) |
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三重県総合企画局・政策広聴広報課 県民の声相談室 主幹 中川 章 様 |
三重県庁1Fのロビー奥に、【県民の声相談室】の案内を見つけました。 『すみません。名張市で暮らすものですが・・・』 『いらっしゃいませ。どんな、ご用件でしょうか?』 目的を話し出すと、直ぐ小脇の部屋に案内していただきました。 『日本の山が針葉樹中心の人工林に変わってしまい、クマなどの大型野生動物の採食活動がままならず、やむをえず里に出て、果樹や畑で採食すると、害獣駆除の名のもとに殺害されています』 『日本の山々を人工林の森から、動物達の採食行動が可能な、実のなる広葉樹の森に変えて行こうという活動しています』 結果、動物達が里に下りてこなければ、絶滅の危機に瀕しているクマ達を守ることができます』 『和歌山県では、民間のボランティア団体が奥山を、本来の広葉樹を中心とした森に、動物達が安心して暮らせる森に変えて行こうと、クリ、ミズナラ、クヌギ、ブナ・・・などの苗を植樹したり、動物の餌となる、どんぐりを全国から集め、奥山に運んぶことなどをしています』 『私たち夫婦は三重県で暮らしていますが、三重県での野生動物の保護、森林の実態などは、どのようになっていますか?いま申しましたような活動は、されているのでしょうか?』 『自分たちが暮らす三重県で、そんな活動がありましたら、ぜひ参加させてください。 また、針葉樹の森が人手不足や収支・採算問題などで、手付かずになっている場所があり、ひょっとして地元のご理解が戴けるなら、熊森と一緒に広葉樹の苗を植えるボランティア活動をさせて欲しいのですが・・・』 |
僕たち夫婦の話を聞いていただき、中川さんは、次のように仰いました。 『三重県には、関係する部署として、自然環境課と森林保全課がありますが、そこへご案内して、また始めから今のお話をして戴くよりも、私が行きまして内容を伝え関係者を連れてまいりますから、しばらく、ここでお待ちください。 内容から感じますに、動物愛護のことですから、自然環境課の自然・野生生物グループのメンバーをご紹介します。それで、宜しいでしょうか』 『はい、結構です。よろしくお願いします』 中川さんは、僕の返事を待って部屋を出ていかれ、しばらくして、お二人の方が来られました。 |
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三重県環境部・自然環境課 自然・野生生物グループ 副参事 長谷川 健一 様 技師 西村 和也 様 |
お二方から、三重県における、鳥獣保護法、種の保存法、自然公園法に基づく、野生生物の保護、調査、狩猟行政に関する業務を通じての、具体的な事例を、種々ご説明していただきました。 三重の環境 みえの自然楽校 関連ホームページです。 三重県のクマの実態は、正直、過去においては殺害のみでした。(現在では、基本的には、奥山放獣をしています) 結果、クマの個体数は数十頭(?)くらいに激減してしまったそうです。ただ、人に傷を負わせたりしたクマは、過去から殺害していますが、最近ではクマの出没事例が殆ど無いそうです。 また、三重県は人工林率が62〜3%に達する林業の盛んな地域で、クマ剥ぎの被害に対しての林業関係者の怒りも、いまだ、根強いものがあるそうです。 今年の7月上旬、宮川村でクマ出没したので、県は、地元に対して、クマの啓蒙活動をしようと動きかけましたが、地元から要請が無かった為、取りやめになったそうです。 クマの生態を地元の人々に理解してもらい、害獣駆除の申請の時に、やみくもに殺害するのではなく、クマを奥山に放してやるように働きかけるチャンスだったのですが・・・。このクマは、また山の中へ帰って行ったそうです。 今後も、クマが出没した時には、必ず、その地元に啓蒙活動を実施できる体制にしているそうです。 三重県のクマの体重は、せいぜい30Kg〜50Kgと、昔から、成獣でも小柄だそうです。(力は強く、爪が鋭いので、人の命を奪うこともある)地元の人々の恐怖心を取り除くことも必要です。(ヒグマのように、大型で、凶暴ではない) 十年ほど前に【サルの森造り】という活動をされたそうです。森林組合を中心に、宮川ダム上流の大杉谷で、コナラなどの、実のなる広葉樹を植えました。ただ、非常に急斜面であったことと、鹿などの被害にあってしまい、2〜3年で中止したそうです。 サルに関しては、電波発信器を取り付け追跡・監視をし、サルが里に来る前に、被害が出る前に、銃音などで追い返すことをしている。 以下のHPで、もう少し詳しい情報が載っています。 http://www.eco.pref.mie.jp/forum/land/q-a/shizen/saru/index.htm サルは何でも(杉の実でも)食べるので、現状の山でも十分に生きて行けると考えているそうです。 少しでも栄養が付くと、毎年繁殖(自然界では、3年に一度)をするので、なんとか、人間の食べ物を、覚えさせないようにしなければならない。ハイカーや登山者、観光客などが、安易に、人間の食べ物を与えてはいけない。 台湾ザルは、駆除することに決定しました。サルの場合は、日本ザルと台湾ザルの混血種が出来るので、生態系に及ぼす影響を考えると、台湾ザルは、殺害せざるをえない。 ペットとして飼われていたものを、安易に放してしまった人間の責任は大きい。 クマは種間の交わりはしないので、いつまでも純粋であるから、サルのような問題はありません。その意味でも、日本のクマという貴重な種を絶滅させてはならない。 三重県でのシカの生息数が1Kuあたり11頭(1〜2頭が望ましいそうです)を数えるからだとか。 また、オス鹿のみでなく、メス鹿も狩猟しなければ、数は減らないと言われました。 三重県も、自然観察指導員講習会等を通じての人材育成に取り組んでおられます。今年は、50名の定員に対して、90名の応募があり、抽選に外れた人のために、来年も予算を取って、実施する計画です。 三重県では、森林ボランティアの活動があるそうです。里山を中心に、間伐や下草刈りなどを行い、緑の森を守っていこうという主旨だそうです。広葉樹、実のなる木の植樹は行なっていません。 長谷川さん自身、森林専門の方で、獣害総合研究所の芦生研修会などにも参加された経験を、お持ちだそうです。京都では蜂蜜などを運んで、クマの調査などもされたそうです。 三重県も、地元の人々は、恐怖心が先に立ってしまい、出れば、殺せ!の声ばかりで、サルでも、クマでも、保護などという話は、まず無いそうです。 サルやクマを保護して、逆に増えすぎたらどうしてくれるのや。保護ばかり言う都会へ、野生のサルやクマを送ってやろうか!などと言う人も、居るそうです。 なんとか、自然を、動物の実態を理解する人材を育て、地元の人々の中から、一人でも、二人でも、動物保護の活動に理解を持ってくれるようにして行きたいと、仰っていました。 さらに、ひょっとして、私どもの活動に通じるかも知れない情報も教えていただきました。三重県でも、人工林を伐採した後、広葉樹の苗を植樹している林業関係者も居られるそうです。 ただ、林業はもう生きるか死ぬかの瀬戸際にありますから、お金をかけることが非常に難しい状況です。針葉樹を伐採したあと、そのまま何も植えなくても、自然林に戻って行く場合もあります。林業関係者には、そういう意見を持っている人も居られるそうです。 また、針葉樹を植えても、表土の流出は押さえられる。上手いこと、森林をリサイクルすることが出来れば、計画的に間伐して太陽光を届けてやれば、下草(広葉樹やアオキなど)が育ち、動物の採食活動が叶うことも考えられます。なにも、広葉樹を植えなくても、それで良いと言う人もいるそうです。 三重県には森林保全課があって、水源保護、災害防止などの行政指導を行なっている部署もあります。 大型の野生動物が、安心して棲める森を造って行こう、我々の子や孫にクマなどの動物を、自然と共に残し伝えようと活動しておられることは、とても大切なことです。 三重県としても、今後、各市町村に対して、何かの機会に話をして、野生生物保護の森造りへ食い込んで行きたいと、長谷川さん、西村さんは仰ってくれました。 私たちの活動を受け入れて戴けるような情報があったときは、ご一報をくださるようにお願いしました。 |
突然お邪魔したにもかかわらず、長時間にわたって、三重県の野生生物に関する取り組みの、ご説明をして戴き、ありがとうございました。 長谷川さん、西村さんのお話を伺って、野生動物や、自然を守るのは、行政に携わる皆さんと、専門家の方々と、わたしたち一般市民の・・・、動物を愛する心をもつ全ての人々が、力を合わせて行かなければならないの感を、ますます強くしました。 危機的な四国での、一昨日(2001.11.19)のクマ目撃ニュースなどを聞きまして、、三重県の場合の人工林率が62〜3%にある現状を考えますと、早晩、紀伊半島のクマが絶滅してしまうかも知れないと、危機感を新たにしました。 なんとか、そのような事態を避ける為にも、三重県の山を針葉樹の森から、クマの採食活動が叶う、ミズナラ、ブナ、クリ、クルミ・・・などの、広葉樹の森を増やさなければならないと思います。 ただ声高に、駆除だけを、保護だけを言うのではなく、人間と野生生物が共存共栄できる道を歩んで行かねばならない、そう思います。 |